FAO(国際連合食糧農業機関)のデータによると、ペルーのクルミ(胡桃)生産量は1980年代に一時的な安定成長を見せたものの、1990年代後半から劇的に減少しました。特に1999年以降では年平均で300トンを下回る状態が続いており、2023年の生産量はさらに低下して230トンとなっています。この長期的な減少傾向が指摘される中、気候変動や農業技術の更新不足が生産に影響を及ぼしている可能性があります。
ペルーのクルミ(胡桃)生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 230 |
-5.63% ↓
|
2022年 | 244 |
-5.31% ↓
|
2021年 | 258 |
-8.99% ↓
|
2020年 | 283 |
-11.84% ↓
|
2019年 | 321 |
7.36% ↑
|
2018年 | 299 |
-0.33% ↓
|
2017年 | 300 |
2.09% ↑
|
2016年 | 294 |
-9.58% ↓
|
2015年 | 325 |
-2.4% ↓
|
2014年 | 333 |
-6.85% ↓
|
2013年 | 357 |
3.02% ↑
|
2012年 | 347 |
14.52% ↑
|
2011年 | 303 |
25.73% ↑
|
2010年 | 241 |
10.55% ↑
|
2009年 | 218 |
-24.04% ↓
|
2008年 | 287 |
21.1% ↑
|
2007年 | 237 |
-21.26% ↓
|
2006年 | 301 |
9.85% ↑
|
2005年 | 274 |
34.98% ↑
|
2004年 | 203 |
13.41% ↑
|
2003年 | 179 |
-30.35% ↓
|
2002年 | 257 |
8.44% ↑
|
2001年 | 237 |
-29.04% ↓
|
2000年 | 334 |
-2.05% ↓
|
1999年 | 341 |
-77.27% ↓
|
1998年 | 1,500 |
-50% ↓
|
1997年 | 3,000 |
42.86% ↑
|
1996年 | 2,100 |
16.67% ↑
|
1995年 | 1,800 |
12.5% ↑
|
1994年 | 1,600 |
15.77% ↑
|
1993年 | 1,382 |
7.21% ↑
|
1992年 | 1,289 |
-0.85% ↓
|
1991年 | 1,300 |
-27.78% ↓
|
1990年 | 1,800 |
-10% ↓
|
1989年 | 2,000 |
53.85% ↑
|
1988年 | 1,300 |
-27.78% ↓
|
1987年 | 1,800 |
-25% ↓
|
1986年 | 2,400 |
14.29% ↑
|
1985年 | 2,100 |
5% ↑
|
1984年 | 2,000 |
11.11% ↑
|
1983年 | 1,800 |
20% ↑
|
1982年 | 1,500 |
87.5% ↑
|
1981年 | 800 |
-55.56% ↓
|
1980年 | 1,800 | - |
ペルーのクルミ生産量の推移データからは、いくつかの重要な傾向を読み取ることができます。まず、1980年代には生産量が1,800~2,100トンの範囲でおおむね安定して推移しており、この時期には地域ごとの気候条件や農業支援体制が比較的整っていたと考えられます。ただし、1987年から生産量が低下し始め、1988年には1,300トンと急減しました。その後も2000年を境として大幅な縮小を見せ、現代に至るまで回復の兆候はほとんど見られていません。
1999年にピークを下回る341トンと著しい減少を記録し、以降、クルミの生産は一貫した低水準に留まっています。この減少は複数の要因による影響と考えられます。まず、気候変動が農業生産に与える影響が年々大きくなっていることが挙げられます。ペルーのアンドス山岳地帯やその他の栽培地域では、降水量の不安定化や気温上昇が顕著であり、これが農作物の成長に悪影響を及ぼしている可能性があります。
また、技術革新と農業支援の不足も一因と見られます。他国、特にアメリカや中国のような主要生産国では、機械化・効率化された農業技術や品質管理が普及しており、それが輸出市場での競争力強化につながっています。一方で、ペルーではこれらの取り組みが浸透しておらず、結果的に国際市場での競争力が低下していると考えられます。
さらに、貧困やインフラの整備不足といった地域的な制約も課題として挙げるべきでしょう。特に農村地域ではインフラが不十分で、農家が市場にアクセスするためのコストが高いことや物流が非効率的であることが生産の減少に拍車をかけています。また、新型コロナウイルス感染症の流行は農業従事者を中心とした労働力不足を引き起こし、生産活動をより困難にしました。
将来的な対策として、いくつかの具体的な行動を挙げることができます。まず、農業技術向上のための支援が不可欠です。それには、気候変動に強いクルミの品種開発や、灌漑システムの改善が含まれます。さらに、農業従事者を対象とした技術研修を通じて、効率的な農法や収穫後の加工技術を提供する仕組みも重要です。
また、地方農家を支援するための政策も必要です。例えば、生産者協同組合の設立を支援し、小規模農家が資金調達や物流の共同利用を行えるような仕組みを設けることを検討すべきです。これにより、輸出市場へのアクセスが改善され、海外への供給が安定する可能性があります。
最後に、地政学的な視点から見ると、資源争奪や地域衝突、そして気候変動が今後さらに深刻化する未来予測を踏まえた長期的な対策が求められます。そのためには、国際的な技術協力の枠組みを活用し、ペルー農業の持続可能性を高める取り組みが効果を発揮するでしょう。
データはペルーのクルミ生産が長期的に低迷している厳しい現状を浮き彫りにしていますが、適切な対策と支援が実施されれば、地域経済および農業セクターの再活性化につながる可能性があります。ペルー政府や国際機関が連携し、具体的な戦略を実行に移すことが今求められているといえます。