国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ケニアのココナッツ生産量は2023年に81,667トンでした。これまでのデータを振り返ると、生産量は1960年代から安定していたものの、1980年代に急激に減少し、その後も変動を繰り返してきました。特に2010年代には増加傾向が見られましたが、2020年代に入って再び下降傾向が現れています。
ケニアのココナッツ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 81,667 |
20.1% ↑
|
2022年 | 68,000 |
-21.44% ↓
|
2021年 | 86,554 |
-21.32% ↓
|
2020年 | 110,013 |
0.11% ↑
|
2019年 | 109,889 |
4.3% ↑
|
2018年 | 105,362 |
14.14% ↑
|
2017年 | 92,313 |
-19.89% ↓
|
2016年 | 115,228 |
15.99% ↑
|
2015年 | 99,341 |
55.32% ↑
|
2014年 | 63,958 |
-0.19% ↓
|
2013年 | 64,079 |
-46.63% ↓
|
2012年 | 120,068 |
37.23% ↑
|
2011年 | 87,497 |
17.27% ↑
|
2010年 | 74,613 |
21.92% ↑
|
2009年 | 61,198 |
2.51% ↑
|
2008年 | 59,697 |
-3.52% ↓
|
2007年 | 61,874 |
1.24% ↑
|
2006年 | 61,117 |
-2.99% ↓
|
2005年 | 63,000 |
1.61% ↑
|
2004年 | 62,000 |
3.33% ↑
|
2003年 | 60,000 |
-0.1% ↓
|
2002年 | 60,060 |
-1.89% ↓
|
2001年 | 61,220 |
-2.83% ↓
|
2000年 | 63,000 |
-1.07% ↓
|
1999年 | 63,681 |
1.46% ↑
|
1998年 | 62,762 |
-12.39% ↓
|
1997年 | 71,638 |
64.12% ↑
|
1996年 | 43,649 |
-12.7% ↓
|
1995年 | 50,000 |
-9.09% ↓
|
1994年 | 55,000 |
22.22% ↑
|
1993年 | 45,000 |
7.14% ↑
|
1992年 | 42,000 |
-0.51% ↓
|
1991年 | 42,217 |
1.05% ↑
|
1990年 | 41,777 |
1.9% ↑
|
1989年 | 41,000 |
2.5% ↑
|
1988年 | 40,000 |
5.26% ↑
|
1987年 | 38,000 |
-5% ↓
|
1986年 | 40,000 | - |
1985年 | 40,000 |
-4.76% ↓
|
1984年 | 42,000 |
-6.67% ↓
|
1983年 | 45,000 |
31.57% ↑
|
1982年 | 34,203 |
-43% ↓
|
1981年 | 60,000 |
-14.29% ↓
|
1980年 | 70,000 |
-6.67% ↓
|
1979年 | 75,000 |
-3.85% ↓
|
1978年 | 78,000 |
4% ↑
|
1977年 | 75,000 |
15.38% ↑
|
1976年 | 65,000 |
1.56% ↑
|
1975年 | 64,000 |
-8.57% ↓
|
1974年 | 70,000 |
-12.5% ↓
|
1973年 | 80,000 | - |
1972年 | 80,000 |
6.67% ↑
|
1971年 | 75,000 |
-6.25% ↓
|
1970年 | 80,000 |
6.67% ↑
|
1969年 | 75,000 | - |
1968年 | 75,000 |
15.38% ↑
|
1967年 | 65,000 | - |
1966年 | 65,000 | - |
1965年 | 65,000 | - |
1964年 | 65,000 | - |
1963年 | 65,000 | - |
1962年 | 65,000 | - |
1961年 | 65,000 | - |
ケニアのココナッツ生産量の動向は、いくつかの歴史的・地政学的要因や地元の産業構造の変化に影響を受けてきました。1960年代から1970年代のデータを見ると、この期間は概ね65,000~80,000トンの範囲で推移しており、この時代は比較的安定した生産期だったと言えます。しかし、1980年代初頭に急激な減少が見られ、生産量が1981年の60,000トンから1982年には34,203トンに達するまで落ち込みました。この大幅な減少の背景には、政治的不安定や農業政策の混乱、また、自然災害や干ばつの影響が考えられます。
1990年代中頃から2000年代にかけては、生産量が40,000~60,000トンの間で変動しており、この時期は産業インフラ整備が進んだことで一定の生産が維持されました。その後、2010年代に入ると、生産量の拡大が見られ、2012年には120,068トンというピークに達しました。この増加は、政府や地域コミュニティによる農業支援プログラムなどの結果と推測されます。しかし、生産量はそれ以降また変動を見せ、2022年には68,000トンと急激に低下しました。2023年においても、81,667トンという水準で低空飛行を続けています。
ケニアのココナッツ生産は、同国の農業経済において重要な位置を占めていますが、この生産量の変動にはいくつかの課題が存在しています。まず、ココナッツ栽培地域は主に沿岸部に限定されており、この地域は気候変動の影響を受けやすいです。特に干ばつや台風の影響は生産量に大きく影響を与え、一貫した生産の確保を妨げる要因になっています。また、農業技術の普及が不十分であり、伝統的な栽培方法に依存している地域が多いことも、持続可能な生産の妨げになっています。
さらに、市場の不安定性、流通インフラの不足、そして収益性の低下も問題です。特に国際市場では、インドやインドネシア、フィリピンなどの主要ココナッツ生産国と競争する必要があり、それらの国と比較するとケニアのココナッツ産業は規模や効率の面で劣るところがあります。例えば、2015年のインドネシアの生産量は1,800万トンを超えており、同国は途方もない規模での生産を実現しています。
今後、ケニアのココナッツ生産量を安定させ、さらに向上させるためには、いくつかの具体的な対策が必要です。まず、農業技術の改良を進めるために、政府と国際機関が協力して農家への技術支援や教育プログラムを強化することが求められます。また、気候変動への適応能力を高めるため、干ばつ耐性のあるココナッツ品種の導入や灌漑設備の整備が急務です。さらに、市場の拡大と安定化を図るため、地域間協力や輸出戦略の見直しも必要です。たとえば、地域的に経済共同体を活用し、隣国への輸出を増やす取り組みは効率的な解決策となる可能性があります。
結論として、ケニアのココナッツ生産は長期に渡り変動を続けていますが、その背景には、気候変動、農業技術の遅れ、インフラ不足など複合的な要因があると考えられます。この状況を打開するためには、国内政策だけでなく、国際的な協力や包括的な支援が不可欠です。農業技術の改善、市場の多角化、環境適応策を推進することで、今後の持続可能な生産拡大につながるでしょう。