国際連合食糧農業機関(FAO)が公開した最新データによると、ケニアにおける牛の飼養数は1961年から緩やかに増加しつつも、一部減少や停滞の時期を経て、2022年には約2,350万頭に達しています。1970年代から1980年代にかけて大きな増加傾向が見られた一方、一時的な減少も散見されます。特に、2020年には大幅な増加が確認され、これが近年の注目すべきポイントとなっています。
ケニアの牛飼養数推移(1961年~2023年)
年度 | 飼養数(頭) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 21,882,008 |
-6.89% ↓
|
2022年 | 23,500,549 |
2.83% ↑
|
2021年 | 22,853,225 |
-14.62% ↓
|
2020年 | 26,765,935 |
28.17% ↑
|
2019年 | 20,882,488 |
6.35% ↑
|
2018年 | 19,635,142 |
7.07% ↑
|
2017年 | 18,338,810 |
-10.67% ↓
|
2016年 | 20,529,190 |
9.62% ↑
|
2015年 | 18,728,076 |
2.63% ↑
|
2014年 | 18,247,632 |
0.6% ↑
|
2013年 | 18,138,500 |
-5.18% ↓
|
2012年 | 19,129,800 |
5.26% ↑
|
2011年 | 18,173,500 |
1.74% ↑
|
2010年 | 17,862,852 |
2.26% ↑
|
2009年 | 17,467,774 |
-4.98% ↓
|
2008年 | 18,383,184 |
4.82% ↑
|
2007年 | 17,537,332 |
41.24% ↑
|
2006年 | 12,416,271 |
-4.63% ↓
|
2005年 | 13,019,049 |
-0.03% ↓
|
2004年 | 13,022,412 |
3.92% ↑
|
2003年 | 12,531,324 |
4.95% ↑
|
2002年 | 11,939,977 |
4.04% ↑
|
2001年 | 11,475,861 |
0.27% ↑
|
2000年 | 11,444,800 |
-10.5% ↓
|
1999年 | 12,787,700 |
9.42% ↑
|
1998年 | 11,687,000 |
2.44% ↑
|
1997年 | 11,408,500 |
-0.9% ↓
|
1996年 | 11,511,700 |
-9.92% ↓
|
1995年 | 12,779,000 |
-1.7% ↓
|
1994年 | 13,000,000 | - |
1993年 | 13,000,000 | - |
1992年 | 13,000,000 |
-0.57% ↓
|
1991年 | 13,074,800 |
-5.21% ↓
|
1990年 | 13,793,000 |
2.5% ↑
|
1989年 | 13,457,000 |
3.12% ↑
|
1988年 | 13,050,000 |
3.2% ↑
|
1987年 | 12,645,000 |
0.36% ↑
|
1986年 | 12,600,000 |
0.8% ↑
|
1985年 | 12,500,000 |
-4.45% ↓
|
1984年 | 13,082,000 |
4.66% ↑
|
1983年 | 12,500,000 |
13.64% ↑
|
1982年 | 11,000,000 |
12.24% ↑
|
1981年 | 9,800,000 |
-2% ↓
|
1980年 | 10,000,000 |
-12.69% ↓
|
1979年 | 11,453,400 |
12.29% ↑
|
1978年 | 10,200,000 |
8.51% ↑
|
1977年 | 9,400,000 |
-1.05% ↓
|
1976年 | 9,500,000 |
-2.18% ↓
|
1975年 | 9,712,000 |
1% ↑
|
1974年 | 9,616,000 |
2.51% ↑
|
1973年 | 9,381,000 |
1.97% ↑
|
1972年 | 9,200,000 |
3.37% ↑
|
1971年 | 8,900,000 |
3.49% ↑
|
1970年 | 8,600,000 |
10.26% ↑
|
1969年 | 7,800,000 |
0.65% ↑
|
1968年 | 7,750,000 |
0.26% ↑
|
1967年 | 7,730,000 |
-0.13% ↓
|
1966年 | 7,740,000 |
3.2% ↑
|
1965年 | 7,500,000 |
1.38% ↑
|
1964年 | 7,398,000 |
8.79% ↑
|
1963年 | 6,800,000 |
-7.68% ↓
|
1962年 | 7,366,000 |
2.31% ↑
|
1961年 | 7,200,000 | - |
ケニアの牛飼養数推移は、農業や畜産を主な産業とするこの国の経済や社会動態を反映する重要な指標とされています。このデータは、環境変化、社会経済的要素、さらには国際的な市場需要や政策の影響を反映したものです。
1961年に約720万頭であった牛の飼養数は、その後の10年間で徐々に増加し、1970年には約860万頭に達しました。この増加は、当時のケニア政府が農地拡張政策を推進し、畜産業の効率向上に取り組んだことに起因すると考えられます。しかし、1980年代初頭には1000万頭を超えたものの、気候不順や干ばつの影響により増減を繰り返しました。それでも1980年代中盤から1990年にかけては再び増加を見せ、1300万頭を突破しました。
1990年代以降、ケニアでは他の環境的・経済的要因が飼養数に影響を与えるようになりました。特に、干ばつや土地の過放牧による草原の劣化、政策の不整合などが要因となり、1996年には約1151万頭にまで減少しました。しかし、この期間も過ぎると徐々に回復し、2010年代には再び増加基調に。2020年には2676万頭という急激な増加が見られましたが、これは統計上の方法改定や、新たな畜産技術の普及、また家族経営から商業的畜産への移行などが複合的に関与していると推測されます。
ケニア国内の牛飼養数の急増は一見喜ばしい成果に思えますが、いくつかの潜在的な課題も考慮する必要があります。まず、急激な増加は牧草地や水資源のさらなる圧迫を招く恐れがあります。特に、ケニアは年々深刻化する干ばつの影響を受けやすい国であり、牛の飼育に必要な資源の確保は、持続可能性を考慮する場合、課題となるでしょう。また、過放牧による土壌劣化は、一度発生すると長期的に土地の回復が困難になるため、事態を悪化させない環境保全策が求められます。
さらに、地域紛争や地政学的リスクも無視することはできません。ケニアでは、牧畜業を巡る土地や水の争奪戦が一部の地域で過去に報告されています。牛飼養数が増える一方でその管理が行き届かない場合、これらの天然資源を巡る地域間対立や暴力はエスカレートする可能性があります。また、世界的な経済不安や物流課題がケニアの畜産物輸出に影響を与えることを考慮しなくてはなりません。
未来に向けた具体的な対策として、以下の提案が考えられます。一つ目は、乾燥地農業や牧草地の回復を主体とした資源管理の強化です。特に、干ばつに強い飼料作物の研究開発や、地域ごとに適切な放牧量を設定する計画が重要です。二つ目は、牧畜業者に対する技術支援を強化し、効率的な牛飼育を促進することです。例えば、適切な栄養管理や病気予防策を導入することで、少ない頭数でも収益性を確保する取り組みが必要です。最後に、近隣諸国や国際機関との連携を活用し、国際市場だけでなく地域市場へのアクセスを拡大させる政策が推奨されます。
結論として、ケニアにおける牛の飼養数は、過去数十年で増加傾向を見せつつ、社会的・環境的な要因による変動も経験してきました。この増加はケニア経済の成長を支える一方、持続可能な資源管理や社会的安定への対応が求められる課題も浮き彫りにしています。今後、政府や国際組織が協力して、環境負荷を軽減しながら畜産業の収益性を高める取り組みを推進することが不可欠です。