国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ケニアの大麦生産量は1960年代の約1万トン台から2023年には32,876トンに推移しています。この期間に見られる特徴として、生産量が大きく増減を繰り返している点が挙げられます。特に1979年、2001年、そして近年の2018年から2020年にかけて顕著な変動が観察されます。一方で、2020年以降は継続して生産量が落ち込んでおり、2022年には20,000トンと低水準を記録しています。
ケニアの大麦生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 32,876 |
64.38% ↑
|
2022年 | 20,000 |
-39.61% ↓
|
2021年 | 33,117 |
-5.25% ↓
|
2020年 | 34,953 |
-59.25% ↓
|
2019年 | 85,781 |
9.6% ↑
|
2018年 | 78,267 |
1.65% ↑
|
2017年 | 77,000 |
24.19% ↑
|
2016年 | 62,000 |
20.63% ↑
|
2015年 | 51,396 |
-21.42% ↓
|
2014年 | 65,402 |
13.41% ↑
|
2013年 | 57,671 |
-20.7% ↓
|
2012年 | 72,726 |
11.48% ↑
|
2011年 | 65,235 |
1.58% ↑
|
2010年 | 64,219 |
52.37% ↑
|
2009年 | 42,147 |
-5.49% ↓
|
2008年 | 44,597 |
-0.9% ↓
|
2007年 | 45,000 |
-44.5% ↓
|
2006年 | 81,085 |
96.77% ↑
|
2005年 | 41,208 |
5.15% ↑
|
2004年 | 39,188 |
47.07% ↑
|
2003年 | 26,645 |
-71.33% ↓
|
2002年 | 92,926 |
-17.53% ↓
|
2001年 | 112,679 |
149.78% ↑
|
2000年 | 45,111 |
5.1% ↑
|
1999年 | 42,922 |
85.98% ↑
|
1998年 | 23,079 |
-54.83% ↓
|
1997年 | 51,090 |
37.75% ↑
|
1996年 | 37,088 |
-0.12% ↓
|
1995年 | 37,133 |
-4.29% ↓
|
1994年 | 38,799 |
-1.05% ↓
|
1993年 | 39,210 |
-12.87% ↓
|
1992年 | 45,000 |
3.52% ↑
|
1991年 | 43,470 |
3.16% ↑
|
1990年 | 42,138 |
-4.6% ↓
|
1989年 | 44,172 |
76.69% ↑
|
1988年 | 25,000 |
25% ↑
|
1987年 | 20,000 |
33.33% ↑
|
1986年 | 15,000 |
25% ↑
|
1985年 | 12,000 | - |
1984年 | 12,000 |
-74.98% ↓
|
1983年 | 47,966 |
-24.47% ↓
|
1982年 | 63,508 |
11.79% ↑
|
1981年 | 56,812 |
-5.31% ↓
|
1980年 | 60,000 |
-20% ↓
|
1979年 | 75,000 |
117.05% ↑
|
1978年 | 34,554 |
-25.19% ↓
|
1977年 | 46,191 |
27.42% ↑
|
1976年 | 36,250 |
11.93% ↑
|
1975年 | 32,385 |
4.47% ↑
|
1974年 | 31,000 |
-1.42% ↓
|
1973年 | 31,448 |
89.74% ↑
|
1972年 | 16,574 |
-9.92% ↓
|
1971年 | 18,400 |
13.02% ↑
|
1970年 | 16,280 |
44.4% ↑
|
1969年 | 11,274 |
-4.54% ↓
|
1968年 | 11,810 |
84.96% ↑
|
1967年 | 6,385 |
-55.75% ↓
|
1966年 | 14,428 |
10.08% ↑
|
1965年 | 13,107 |
-32.81% ↓
|
1964年 | 19,508 |
-2.46% ↓
|
1963年 | 20,000 |
100% ↑
|
1962年 | 10,000 |
-26% ↓
|
1961年 | 13,513 | - |
ケニアの大麦生産量は長期間にわたり不安定な推移を示しており、この度のデータからも際立った波を描いていることが確認できます。まず、1961年の生産量は13,513トンで、その後数年間で一時的な増減を繰り返しました。1979年には75,000トンに達し、過去最高を記録しましたが、その後は再び大きな変動が続きました。2001年には112,679トンと再び大幅な増加が見られましたが、以降は総じて中低水準で推移続ける局面にあります。2018年から2019年は特筆すべき再上昇期(78,267トン、85,781トン)を見せていますが、それも長くは続かず、2020年以降で再び急激な落ち込みが表れ、2022年には20,000トンと急激に低下しました。
これらの変動には、多くの要因が影響しています。一つは、ケニアの気候的特性に関連する干ばつや不規則な降雨パターンが挙げられます。大麦は比較的耐乾性が高い作物ではありますが、それでも適切な栽培条件を欠けば生産量は大幅に影響を受けます。また、地元農業従事者の技術的制約や、インフラの未成熟も大きな障害となっています。さらに、近年のパンデミックや国内外の社会的不安定性が、農業資材の供給や市場価格の乱れに拍車をかけた可能性も考えられます。
ケニアの大麦生産は地政学的にも重要です。大麦はビールの製造などの産業用途での需要が高く、特にアフリカ地域では重要な経済作物とされています。近隣諸国への輸出や、地元産業への供給はケニア経済において一定の役割を果たしますが、生産の不安定さがこれらの側面を制約しています。これは、国内外のビール製造業者が原料調達を海外輸入に依存する割合を高め、ケニア経済の収益機会を損失させる要因となっている可能性があります。
こうした課題を受け、いくつかの具体的な対策が必要となります。一つ目は、気候変動下での耐性の高い大麦品種の導入や開発です。これは国際的な農業研究機関やアフリカ連合(AU)の協力のもと、ケニア国内の研究施設で推進されるべき課題といえます。次に、灌漑システムや雨水の管理を強化するためのインフラ整備が求められます。さらに、農業従事者への技術支援プログラムやファイナンスの提供を通じて、生産効率を向上させる取り組みが効果的です。また、政府や国際機関を通じた市場安定化策、保険制度の導入により、農業産業基盤を安定させる努力も重要となります。
結論として、ケニアの大麦生産は多くの可能性を秘めていますが、その安定的な成長には多角的な視点からの政策と支援が不可欠です。大麦の生産量の不安定さは、地域経済や食糧・産業の連鎖に深刻な影響を与える可能性があるため、問題の早期解消が求められます。政府、地域共同体、国際社会の連携のもとで、持続可能な農業基盤を構築していくことがケニアの課題解決への鍵となるでしょう。