国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に発表したデータによると、スペインのヨーグルト生産量は2019年から2021年にかけて以下の推移を見せました。2019年は241,810トン、2020年には255,860トンと増加しましたが、2021年には235,390トンに減少しています。この変化には国内外の複数の要因が影響を与えていると考えられます。
スペインのヨーグルト生産量推移(1961年~2021年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2021年 | 235,390 |
-8% ↓
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2020年 | 255,860 |
5.81% ↑
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2019年 | 241,810 | - |
FAOのデータによれば、スペインにおけるヨーグルト生産量は2019年から2021年の3年間で一時的な増加を見せた後、減少しています。2019年には241,810トンという生産量が記録され、2020年には255,860トンへと約5.8%の増加を達成しました。この増加の背景には、健康志向の高まりや乳製品を手軽に摂取できるヨーグルトの人気が影響したと考えられます。また、新型コロナウイルス感染症が広がる中で家庭内消費量が増えたことも、生産量を押し上げた可能性があります。しかし翌年の2021年には生産量が235,390トンと2020年比で約8%減少し、2019年の水準を下回る結果となりました。この変化の背景を探ることが必要です。
2021年の生産量減少は、いくつかの要因が複合的に絡み合っていると推測されます。一つは、パンデミック終息後の外食ニーズの回復や、新たな健康食品トレンドへのシフトです。人々が課外活動を再開したことで家庭内でのヨーグルト需要がやや鈍化した可能性があります。また、地政学的背景としては、ヨーロッパ全体で問題視されているエネルギー価格の上昇が、乳製品生産にかかる輸送や冷却コストを増加させていることが影響している可能性もあります。
さらに、気候変動による乳牛の飼育環境への影響も見逃せません。スペインのような地中海地域では近年、熱波や干ばつが頻繁化しており、農作物の収量低下だけでなく、乳製品の供給に影響を及ぼす側面も懸念されています。また、消費者の間では代替製品(例えば植物性ヨーグルト)の認知も広がっており、これが従来のヨーグルト需要を部分的に代替している可能性もあります。
これらのデータから見えてくる主な課題は、乳製品の生産コスト増加への対応と、消費者の多様化するニーズに応じた市場戦略の構築です。例えば生産コストを削減するためにはエネルギー効率の高い設備投資が必要となる一方、人々がヨーグルトを選ぶ理由を深堀りし、健康志向や環境配慮型のマーケティング戦略を展開していくことが求められます。他国と比較しても、乳製品の一人当たり消費量が多いフランスやドイツ、他方で乳製品生産拠点を多く持つアメリカに対抗するには、スペインならではの独自性を製品に活かしていくことが重要です。
具体的な施策としては、まず国内農業支援を強化し、乳牛飼育における資源管理の効率化を図るべきです。また、輸出市場の拡大を目指し、スペイン産ヨーグルトの品質や地域性をPRする取り組みが有効です。さらに、植物性食品の流行や多様化する味覚への対応として、新しい製品ラインアップの導入も考えられます。
今後のスペインのヨーグルト産業の成長には、短期的な課題への対応だけでなく、長期的な視野に立った持続可能な生産体制の構築が必要です。環境面に配慮した乳製品の生産、さらには観光資源との連携で地域全体に活気をもたらすような取り組みが、競争力を高めるための鍵となるでしょう。