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スペインの大麦生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が2024年7月に更新したデータによると、スペインの大麦生産量は1961年以降、大きな変動を見せています。特に1980年代以降、生産量は年間600万から1,200万トンの幅広い範囲で推移していますが、直近の2023年には約375万トンと、過去最低水準に近い数値に達しました。これには気候変動や農業技術、経済的要因が複合的に影響していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 3,757,570
-46.55% ↓
2022年 7,029,720
-24.22% ↓
2021年 9,275,920
-19.1% ↓
2020年 11,465,350
48.05% ↑
2019年 7,744,150
-18.94% ↓
2018年 9,554,160
65.13% ↑
2017年 5,785,944
-36.95% ↓
2016年 9,176,159
36.85% ↑
2015年 6,705,106
-3.98% ↓
2014年 6,983,109
-30.2% ↓
2013年 10,005,000
67.97% ↑
2012年 5,956,300
-28.13% ↓
2011年 8,287,073
1.63% ↑
2010年 8,154,392
11.77% ↑
2009年 7,295,934
-35.21% ↓
2008年 11,261,100
-5.73% ↓
2007年 11,945,319
46.81% ↑
2006年 8,136,389
75.88% ↑
2005年 4,626,059
-56.52% ↓
2004年 10,639,817
22.32% ↑
2003年 8,698,400
4.02% ↑
2002年 8,362,328
33.82% ↑
2001年 6,249,139
-43.51% ↓
2000年 11,063,008
48.81% ↑
1999年 7,434,300
-31.77% ↓
1998年 10,895,300
27.44% ↑
1997年 8,549,540
-20.08% ↓
1996年 10,697,000
111.96% ↑
1995年 5,046,600
-31.95% ↓
1994年 7,415,500
-23.56% ↓
1993年 9,700,797
58.9% ↑
1992年 6,105,000
-34.09% ↓
1991年 9,262,486
-1.27% ↓
1990年 9,382,100
-0.13% ↓
1989年 9,393,900
-22.17% ↓
1988年 12,070,000
22.71% ↑
1987年 9,836,230
32.37% ↑
1986年 7,431,014
-30.54% ↓
1985年 10,698,287
-0.84% ↓
1984年 10,789,100
61.95% ↑
1983年 6,662,000
26.42% ↑
1982年 5,269,800
10.77% ↑
1981年 4,757,600
-45.35% ↓
1980年 8,705,000
39.24% ↑
1979年 6,251,700
-22.52% ↓
1978年 8,068,307
19.25% ↑
1977年 6,766,000
23.63% ↑
1976年 5,472,900
-18.65% ↓
1975年 6,728,000
24.5% ↑
1974年 5,404,000
22.76% ↑
1973年 4,402,200
1.01% ↑
1972年 4,358,300
-8.91% ↓
1971年 4,784,700
54.19% ↑
1970年 3,103,200
-19.96% ↓
1969年 3,877,300
12.68% ↑
1968年 3,440,975
33.59% ↑
1967年 2,575,765
28.38% ↑
1966年 2,006,300
6.07% ↑
1965年 1,891,447
-1.84% ↓
1964年 1,926,900
-6.94% ↓
1963年 2,070,700
-4.22% ↓
1962年 2,161,952
23.99% ↑
1961年 1,743,700 -

スペインは欧州における主要な農業国の一つであり、大麦はその中でも重要な位置を占める作物です。大麦は主に家畜飼料として使用されるほか、ビールの醸造など食品産業にも欠かせない原料です。このため、大麦生産量の推移はスペイン国内の農業経済のみならず、食品産業や輸出にも密接に関連しています。

データを見ると、1960年代から1970年代初めにかけてスペインの大麦生産量は年間200万~600万トンの間で増加し、1970年代後半には800万トンを超える水準に到達しています。その後、1984年には過去最高となる約1,080万トンまで伸びています。これは、農業技術の向上や政策的な支援が生産性を高めたためと考えられます。しかし、それ以降のデータからは、生産量が大きく増減を繰り返していることが分かります。この不安定さは気候条件の変動を主な要因としており、特に干ばつに見舞われた年には生産量が急減しています。

直近の2023年には375万トンと、過去60年以上で最低に近い値となっています。これはスペイン国内だけでなく、地中海全域でも深刻化している気候変動が影響している可能性があります。特に降雨量の不足や極端な高温が、作物の生育を大きく阻害したと推測されます。この結果、大麦の国内供給が減少し、スペイン内外の食品業界や農業経済に波紋を広げています。また、2022年から2023年にかけての急激な減少は、スペインの農業政策再編成や輸出市場への影響も懸念されています。

他の主要生産国と比較すると、ドイツやフランスはスペインと同様に欧州市場での重要な供給源ですが、それぞれ気候変動に対する適応力が異なります。彼らは農業技術の革新や灌漑水の効率的な利用に積極的ですが、スペインはこの面でさらなる強化が求められます。他方、アメリカや中国の大麦生産量はやや安定しており、これは広大な土地と多様な気候条件を持つことで、悪天候への耐性を示している例といえます。

将来的にスペインは、以下のような課題に直面することが予測されます。第一に、温暖化に伴う気候リスクへの対応です。農業分野では、干ばつ tolerant(耐干ばつ)品種の開発や、持続可能な灌漑システムの導入が急務です。また、生産地を多角化することで、特定地域での収量低下が全体に与える影響を抑えることができます。第二に、生産コストと利益率のバランスです。農業従事者に対する明確な支援政策や、価格変動リスクに備えるための仕組み整備が必要です。例えば、気候変動に影響されにくい穀物種の栽培や、新たな保険制度の策定が挙げられます。

地政学的観点からも、スペインの大麦生産は戦略的重要性を持ちます。ウクライナ紛争による穀物供給の不安定化の中で、スペインを含む欧州諸国は自国内での穀物生産を維持・増加させる必要性が高まっています。これにはEU全体での協力や、他の国際機関とも連携した資源分配が関わってきます。

結論として、スペインの大麦生産の現状は、気候変動という大きな課題に直面している一方で、新しい技術や政策の導入によって、将来的な改善の余地を持っています。具体的には、農業技術革新や気候変動への適応策、さらには地域間の協調体制を進めることで、安定的な生産を実現する道が開かれるでしょう。スペイン政府やEUが中心となり、迅速かつ具体的な政策行動が求められます。