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スペインのイチゴ生産量推移(1961年~2023年)

国連食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、スペインのイチゴ生産量はここ数十年、大きな成長を遂げ、そのピークは1999年の377,527トンでした。2022年には325,880トンとやや低下していますが、それでも1961年と比較して約37倍という急激な増加がみられます。一方で、2000年代以降は変動が激しく、気候変動や地政学的影響、または市場需要に応じた課題が影響している可能性があります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 329,280
1.04% ↑
2022年 325,880
-9.62% ↓
2021年 360,570
32.29% ↑
2020年 272,550
-22.56% ↓
2019年 351,960
2.11% ↑
2018年 344,680
-4.37% ↓
2017年 360,416
-4.55% ↓
2016年 377,596
-4.98% ↓
2015年 397,369
36.15% ↑
2014年 291,870
-6.6% ↓
2013年 312,500
7.45% ↑
2012年 290,843
10.7% ↑
2011年 262,730
-4.58% ↓
2010年 275,355
3.22% ↑
2009年 266,772
-5.14% ↓
2008年 281,240
4.5% ↑
2007年 269,139
-18.56% ↓
2006年 330,485
3% ↑
2005年 320,853
-4.19% ↓
2004年 334,892
26.74% ↑
2003年 264,237
-5.44% ↓
2002年 279,441
-11.03% ↓
2001年 314,079
-8.93% ↓
2000年 344,865
-8.65% ↓
1999年 377,527
22.45% ↑
1998年 308,300
12.63% ↑
1997年 273,734
19.43% ↑
1996年 229,200
-19.72% ↓
1995年 285,500
1.17% ↑
1994年 282,200
7.96% ↑
1993年 261,400
19.8% ↑
1992年 218,200
20.49% ↑
1991年 181,100
-12.3% ↓
1990年 206,500
-19.3% ↓
1989年 255,900
13.08% ↑
1988年 226,300
-1.74% ↓
1987年 230,300
21.53% ↑
1986年 189,500
15.9% ↑
1985年 163,500
15.96% ↑
1984年 141,000
40.86% ↑
1983年 100,100
7.98% ↑
1982年 92,700
-4.43% ↓
1981年 97,000
-1.72% ↓
1980年 98,700
22% ↑
1979年 80,900
59.57% ↑
1978年 50,700
50% ↑
1977年 33,800
7.99% ↑
1976年 31,300
15.07% ↑
1975年 27,200
49.45% ↑
1974年 18,200
4.6% ↑
1973年 17,400
28.89% ↑
1972年 13,500
31.07% ↑
1971年 10,300
-1.9% ↓
1970年 10,500
14.33% ↑
1969年 9,184
1.97% ↑
1968年 9,007
7.61% ↑
1967年 8,370
19.57% ↑
1966年 7,000
15.99% ↑
1965年 6,035
-7.21% ↓
1964年 6,504
13.31% ↑
1963年 5,740
-2.89% ↓
1962年 5,911
-32.54% ↓
1961年 8,762 -

スペインのイチゴ生産量の推移データを見ると、1960年代から1990年代半ばにかけて生産量が急増していることが分かります。この急成長は、農業技術の進歩、栽培地域であるアンダルシア地方の気候条件の有利さ、そして輸出市場の拡大によるものと考えられます。特に1980年代以降の冷蔵・輸送技術の進展が、欧州市場への輸出量増加を後押ししました。例えば、1984年には141,000トンだった生産量が1987年には230,300トンに増え、1990年代後半には30万トンを超える安定期に入りました。

一方で、2000年代以降のデータでは、生産量の変動が目立つようになりました。2020年に272,550トンまで減少したように、一部の年では生産量が大幅に落ちる傾向があります。この背景には、干ばつによる水不足や気温の変動、さらには2020年の新型コロナウイルス感染症の影響も関係していると考えられます。パンデミックにより、労働者不足や物流の停滞が発生し、輸出を含むイチゴのサプライチェーンに影響を及ぼしました。

さらに、気候変動がスペインの農業に与える影響も無視できません。アンダルシア地方はイチゴの栽培において重要な地域であり、温暖な気候や日照量の高さが有利な条件でした。しかし、近年は気温の不安定化や降雨量の減少により、伝統的な栽培方法が適応しにくくなっています。このような環境変化に対応するため、耐乾性に優れた新種のイチゴの導入や水の効率的な利用が求められています。

また、地政学的なリスクも長期的な課題です。スペインはEU内最大のイチゴ輸出国の1つであり、輸出先としてイギリスやドイツが大きな割合を占めています。しかし、イギリスのEU離脱後の貿易条件や、ウクライナ危機による物流コストの上昇などが、輸出に影響を及ぼしつつあります。これらの地政学的要素を考慮した新市場の開拓が課題の一つです。

さらに、移民政策の変化も労働力に影響を与える要因となります。イチゴの収穫は多くが手作業で行われますが、近年の移民規制強化により労働力不足が深刻化しています。この問題に対しては、農業ロボットやAIによる栽培・収穫技術の導入が期待されます。

スペインのイチゴ生産量の安定と向上のためには、以下のような対策が有効と考えられます。まず、農業用水の効率化を一層進めることが急務です。滴下式灌漑など、限られた水資源を最大限活用する技術を地域全体で導入する必要があります。さらに、研究開発への投資を増やし、気候変動に強い作物の品種改良を進めることが重要です。また、EU内の物流網の効率化や、新市場としてアジアやアフリカ市場への輸出を強化することも、生産量と収益を確保するための鍵となるでしょう。

結論として、スペインのイチゴ生産は過去60年で大きな成長を遂げた成功事例ですが、環境変動や地政学的リスクといった新たな課題に直面しています。これらの課題を解決するためには、技術革新や政策的支援、そして国際市場での柔軟な対応が不可欠です。このような努力を通じて、スペインのイチゴ生産は今後も世界市場で競争力を持ち続けることが可能でしょう。