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スペインのテンサイ(甜菜)生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(FAO)が発表した2024年最新データによると、スペインのテンサイ(甜菜)生産量は1960年代から1970年代にかけて大幅に増加し、1976年には10,167,000トンの最高値を記録しました。しかし、その後は緩やかな減少傾向が続いており、2023年の生産量は2,890,250トンと、ピーク時のおよそ28%にまで縮小しました。この動向は、農業政策の変更、市場需要の変化、気候条件の影響など、複数の要因によるものと考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 2,890,250
44.44% ↑
2022年 2,001,040
-20.16% ↓
2021年 2,506,290
3.02% ↑
2020年 2,432,840
-11.62% ↓
2019年 2,752,710
-4.12% ↓
2018年 2,870,910
-12.81% ↓
2017年 3,292,750
9.24% ↑
2016年 3,014,358
-16.39% ↓
2015年 3,605,112
-3.17% ↓
2014年 3,723,309
50.82% ↑
2013年 2,468,700
-28.66% ↓
2012年 3,460,230
-17.39% ↓
2011年 4,188,535
18.5% ↑
2010年 3,534,517
-16.35% ↓
2009年 4,225,433
5.97% ↑
2008年 3,987,500
-18.79% ↓
2007年 4,909,958
-15.74% ↓
2006年 5,827,031
-20.08% ↓
2005年 7,291,092
1.62% ↑
2004年 7,174,942
12.72% ↑
2003年 6,365,142
-22.35% ↓
2002年 8,197,289
21.35% ↑
2001年 6,755,103
-14.81% ↓
2000年 7,929,700
-3.86% ↓
1999年 8,248,000
-6.97% ↓
1998年 8,866,220
3.94% ↑
1997年 8,530,211
3.57% ↑
1996年 8,236,000
10.73% ↑
1995年 7,438,212
-11.02% ↓
1994年 8,359,612
-9.44% ↓
1993年 9,230,528
27.61% ↑
1992年 7,233,600
8.3% ↑
1991年 6,679,000
-9.27% ↓
1990年 7,361,000
0.38% ↑
1989年 7,333,000
-17.85% ↓
1988年 8,926,000
12.46% ↑
1987年 7,937,000
2.47% ↑
1986年 7,746,000
17.03% ↑
1985年 6,619,000
-18.23% ↓
1984年 8,095,000
-15.84% ↓
1983年 9,619,000
5.88% ↑
1982年 9,085,000
14.41% ↑
1981年 7,941,000
14.94% ↑
1980年 6,909,000
34.84% ↑
1979年 5,124,000
-38.2% ↓
1978年 8,291,000
-0.19% ↓
1977年 8,307,000
-18.29% ↓
1976年 10,167,000
60.44% ↑
1975年 6,337,000
58.86% ↑
1974年 3,989,000
-27.49% ↓
1973年 5,501,000
5.54% ↑
1972年 5,212,000
-18.71% ↓
1971年 6,412,000
18.41% ↑
1970年 5,415,000
8.73% ↑
1969年 4,980,000
9.62% ↑
1968年 4,543,000
6.07% ↑
1967年 4,283,000
7.08% ↑
1966年 4,000,000
9.17% ↑
1965年 3,664,000
10.1% ↑
1964年 3,328,000
23.12% ↑
1963年 2,703,000
-22.9% ↓
1962年 3,506,000
-19.4% ↓
1961年 4,350,000 -

スペインにおけるテンサイの生産は、1960年代後半から1970年代中盤にかけて大幅な増加を見せました。この時期の増加は、ヨーロッパ全体での砂糖需要の高まりと農地の効率向上、さらには農業技術の進化によって支えられていました。特に1976年の10,167,000トンという生産量は記録的な水準でした。しかし、その後の減少傾向は顕著で、21世紀に入る頃からは年間生産量が安定せず、変動がみられるようになっています。

2023年の生産量は2,890,250トンと、1976年のピークから大きく減少しています。この減少の原因のひとつには、スペインの農業政策全体の変革があります。欧州連合(EU)加盟以降の農業補助金や栽培面積規制の変化は、砂糖業界全体に影響を与えました。特に2006年に導入されたEU砂糖市場改革は、国内のテンサイ栽培を厳しい状況に追い込む結果となりました。この改革では砂糖生産の効率化を目的とし、生産割り当ての削減や価格補助の縮小が実施されました。

さらに近年の気候変動も生産量の減少に大きく関係しています。スペイン特有の乾燥した気候に加え、近年の干ばつや異常気象は作物の収量と品質に大きな影響を及ぼしていると考えられます。特に2022年には生産量が2,001,040トンと、これまでで最も低い数値を記録しました。2023年にはやや回復しましたが、持続的な改善が必要です。

また、テンサイの栽培が直面する課題には、国際価格競争の激化も挙げられます。特にインドやブラジル、タイなどの大規模砂糖生産国は、低コストで砂糖を提供しており、スペインなどの相対的に生産コストが高い国々には厳しい条件となっています。同時にテンサイ栽培にかかる労働コストや肥料費の上昇も問題を深刻化させています。

さらなる課題として、スペイン国内でのテンサイおよび砂糖の需要減少も影響しています。健康志向の高まりにより砂糖摂取を控える消費者が増えたことで、砂糖全体の需要構造が変化しつつあります。このため、テンサイから砂糖を生産する国内産業の収益性も低下傾向にあります。

今後の課題を解決するためには、いくつかの具体的な対策が重要となります。まず、環境に適した持続可能な農業技術の導入が必要です。雨水の効果的な利用や干ばつ耐性の高い品種の開発・導入は、有効な手段として挙げられるでしょう。また、農民への技術支援や融資制度の強化も、長期的に生産量を回復させるために欠かせません。同時に、国際競争力を高めるための取り組みとして、周辺国やEU内の協力体制を強化し、輸出志向型の産業構造を築くことも重要です。

さらに、地政学的な視点では、エネルギー価格や肥料供給が国際的な政治不安定に揺れている中で、国際市場に依存しない仕組み作りが求められます。他国が影響を受ける中、エネルギー効率性を向上させた新しい生産方法への投資が鍵となるでしょう。

気候変動や市場構造、政策の変更といった複雑な要因が絡んでいる中、スペインのテンサイ生産量を回復させるためには、多方面に渡る努力と適切な政策が求められます。国際機関やEUとの連携を深めることで、より持続可能な解決策が見つかる可能性があります。