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スペインのヤギ飼養頭数推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、スペインのヤギ飼養頭数は1961年の3,299,632頭をピークに、その後減少傾向が続きましたが、1980年代後半から増加に転じ、一時的に1990年には3,780,000頭に達しました。しかし、2000年代初頭以降は減少と増加を繰り返しながら、2018年以降再び下降傾向を示し、2022年には2,463,450頭となっています。この長期的な変動はスペインの農業政策や社会的経済的要因に加え、環境変化の影響も反映していると考えられます。

年度 飼養頭数(頭)
2022年 2,463,450
2021年 2,589,760
2020年 2,651,040
2019年 2,659,110
2018年 2,764,790
2017年 3,059,731
2016年 3,088,035
2015年 3,009,582
2014年 2,704,250
2013年 2,609,990
2012年 2,637,340
2011年 2,692,898
2010年 2,903,779
2009年 2,933,782
2008年 2,959,300
2007年 2,891,574
2006年 2,956,729
2005年 2,904,690
2004年 2,833,221
2003年 3,163,804
2002年 3,046,716
2001年 2,875,659
2000年 2,627,000
1999年 2,779,000
1998年 3,007,000
1997年 2,935,000
1996年 2,605,000
1995年 3,157,000
1994年 2,947,000
1993年 2,837,000
1992年 2,972,000
1991年 3,663,000
1990年 3,780,000
1989年 3,649,000
1988年 2,888,000
1987年 2,850,000
1986年 2,925,000
1985年 2,635,000
1984年 2,573,000
1983年 2,595,000
1982年 2,526,000
1981年 2,170,000
1980年 2,100,000
1979年 2,091,000
1978年 2,174,000
1977年 2,231,300
1976年 2,339,462
1975年 2,392,291
1974年 2,207,306
1973年 2,463,682
1972年 2,514,286
1971年 2,636,000
1970年 2,570,422
1969年 2,761,576
1968年 2,626,000
1967年 2,649,000
1966年 2,309,000
1965年 2,383,000
1964年 2,336,325
1963年 2,599,443
1962年 2,950,000
1961年 3,299,632

スペインのヤギ飼養頭数は、過去60年以上にわたるデータを見ると、波のある変化を繰り返しています。1961年の初め、約3,300,000頭の規模を誇った飼養頭数は、1960年代半ばに急激に減少しましたが、1970年代から再び安定傾向を見せ、1980年を境に回復基調が見られました。特に1990年には最高値の3,780,000頭を記録しました。この要因として、スペインの農業がEU加盟(1986年)を契機に補助金政策の恩恵を受けたほか、畜産部門の近代化が進んだことが挙げられます。

しかし2000年代以降は、再び減少傾向が見られています。これには、スペイン国内および周辺地域の都市化の進行と過疎化による農村人口の減少、さらに気候変動による飼料供給への影響が影を落としていると推察されます。また、動物福祉規制の強化や輸出需要の不安定化も一定の影響を及ぼしたと考えることができます。さらに近年の新型コロナウイルス感染症の世界的パンデミックは、多くの国で需給バランスに混乱を引き起こし、畜産業の運営にも負荷を与えたことが背景にあります。

地域別に見ると、スペインではアンダルシア地方やエストレマドゥーラ地方など伝統的にヤギを生産してきた地域が主な飼育の中心地ですが、これらの地域でも人口減少や農業従事者の減少が問題視されています。他国と比較すると、例えばインドは大規模なヤギ飼育国であり、総頭数でははるかに多い一方、スペインのような高品質の乳製品生産という高付加価値分野ではヨーロッパ諸国の中で依然として競争力を有しています。

増加と減少とを繰り返すスペインのヤギ飼養頭数の推移には、いくつかの課題があります。まず、気候変動と環境保護の視点から持続可能なヤギ農業の推進が不可欠とされています。例えば、水資源を効率的に利用し、干ばつに耐えられるような持続可能な飼料生産システムへの転換が要件と言えるでしょう。また、農村地域での人口流出を防ぐためには、若年層に魅力的な職業として畜産業を再定義する政策が不可欠です。例えば、賃金の改善、新規就業者への助成金制度の拡充、さらに技術教育の強化などが有効と考えられます。

さらに、EU規制の枠組みに合わせた動物福祉基準の向上と、スペイン産のヤギ乳や肉の輸出促進を一体的に進めるべきです。特にアジア市場を含む新興国への販路拡大が重要となります。対外関係の不安定さがリスクにはなるものの、地域間の協力ネットワークを形成し、輸出機会の拡大を図ることは必要不可欠です。

結論として、スペインのヤギ飼養頭数は過去数十年間にわたり変動を繰り返してきましたが、長期的な減少傾向に歯止めをかけるためには、農業政策の見直し、生産性向上への技術投資、気候変動対策、そして地域振興といった多面的な取り組みが求められます。国際機関や地域経済協力の枠組みを活用することは、この課題に対応するための重要な手段となるでしょう。また、スペインの豊かな文化や食品産業と連携し、高付加価値の商品として世界市場での競争力を高めることも、ヤギ飼養の持続可能性を確保する道筋の一つとなるはずです。