Skip to main content

スペインの羊肉生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(Food and Agriculture Organization)が発表した2024年7月時点の最新データによると、スペインの羊肉生産量は長期にわたり変動しています。生産量は1961年の103,810トンから1990年代にかけて一貫して増加し、2002年に237,071トンでピークに達しました。しかしその後は減少傾向が顕著で、2023年には104,660トン、ピーク時の約44%減少となりました。特に2008年以降の急激な減少は注目に値します。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 104,660
-12.16% ↓
2022年 119,150
-1.03% ↓
2021年 120,390
4.58% ↑
2020年 115,120
-5.13% ↓
2019年 121,340
1.42% ↑
2018年 119,640
3.93% ↑
2017年 115,114
-1.66% ↓
2016年 117,054
1.03% ↑
2015年 115,864
1.44% ↑
2014年 114,220
-3.42% ↓
2013年 118,261
-3.07% ↓
2012年 122,003
-6.57% ↓
2011年 130,587
-0.49% ↓
2010年 131,236
5.47% ↑
2009年 124,424
-20.74% ↓
2008年 156,985
-22.78% ↓
2007年 203,290
-5.08% ↓
2006年 214,179
-4.44% ↓
2005年 224,126
-3.17% ↓
2004年 231,463
-1.99% ↓
2003年 236,155
-0.39% ↓
2002年 237,071
0.54% ↑
2001年 235,807
1.5% ↑
2000年 232,331
4.97% ↑
1999年 221,327
-5.14% ↓
1998年 233,313
1.82% ↑
1997年 229,151
2.62% ↑
1996年 223,296
-1.69% ↓
1995年 227,126
0.97% ↑
1994年 224,944
0.36% ↑
1993年 224,143
3.68% ↑
1992年 216,178
-5.01% ↓
1991年 227,569
4.68% ↑
1990年 217,396
6.52% ↑
1989年 204,083
-3.49% ↓
1988年 211,470
2.26% ↑
1987年 206,788
6.75% ↑
1986年 193,710
0.67% ↑
1985年 192,427
1.89% ↑
1984年 188,851
0.97% ↑
1983年 187,042
4.62% ↑
1982年 178,779
6.67% ↑
1981年 167,593
-0.47% ↓
1980年 168,389
39.05% ↑
1979年 121,100
-6.52% ↓
1978年 129,550
-1.18% ↓
1977年 131,100
-2.24% ↓
1976年 134,100
-1.47% ↓
1975年 136,100
-4.15% ↓
1974年 142,000
8.15% ↑
1973年 131,300
3.98% ↑
1972年 126,269
1.64% ↑
1971年 124,233
-2.25% ↓
1970年 127,093
8.78% ↑
1969年 116,834
-0.82% ↓
1968年 117,798
-3.1% ↓
1967年 121,571
0.33% ↑
1966年 121,174
-0.56% ↓
1965年 121,851
4.31% ↑
1964年 116,812
12.82% ↑
1963年 103,535
0.25% ↑
1962年 103,278
-0.51% ↓
1961年 103,810 -

スペインの羊肉生産量の歴史的推移を振り返ると、1960年代から1990年代にかけて一貫して増加してきたことが見えてきます。これは、スペイン国内での食肉需要の増加や農業技術の向上、そして輸出市場の拡大が追い風となったことが背景にあります。1970年代や1980年代に示された安定的な成長は、農産物の技術革新やEU(欧州連合)域内市場の活発化が主因といえるでしょう。1990年から2002年にかけて、羊肉生産量はほぼ毎年増加し、2002年に237,071トンというピークを迎えました。この数値は、スペインがヨーロッパの羊肉生産国の中でも中核的役割を果たしていたことを示しています。

しかし、2008年を契機に生産量の急激な減少が見られます。この減少の背景には、いくつかの深刻な要因が隠れています。まず、2008年の世界経済危機の影響はスペインの農業セクターにも及び、大規模な市場収縮と農業投資の減少が発生しました。また、労働コストの上昇や家畜の飼育コストの増加が、生産の持続可能性を阻む要因となったと言われています。さらに、新型コロナウイルスの影響下での市場混乱も加わり、近年の生産量回復の兆しが見られる一方で、2023年には再び104,660トンにまで低下しました。

地域的課題としては、スペインの乾燥地域での農業水資源の不足が大きな制約として挙げられます。羊の飼料確保や飼育環境維持において、この水資源の乏しさが直接的な生産コスト増加を引き起こしています。さらに、地方経済の労働人口減少(都市部への人口流出)も、牧畜業の維持に影響を与えています。一方、政治的な側面では、EU共通農業政策(CAP)の影響を受け、助成金の制度変更や規制強化が地域農業に新たな挑戦をもたらしています。

スペインにおいて、生産量の減少は地政学的にも重要な意味を持ちます。羊肉は一部の地中海地域やアフリカ北部への輸出品としても重要であり、国内生産量の減少が輸出機会の低下や輸入依存の増加を招く可能性があります。特に地中海地域では、羊肉需要は一部伝統的な宗教行事とも結びついて高いため、供給不足が影響を及ぼしやすいといえます。

今後の課題としては、まず持続可能な農業政策と地域農業の強化が挙げられます。たとえば、地域農業を支援するための水資源効率化技術の導入や、若年層への牧畜業の魅力を伝えるプログラムの展開が必要です。また、スペイン国内外の羊肉需要の変化を考慮し、輸出市場での競争力を高めるため、品質向上や差別化戦略を取り入れることも効果的です。

結論として、スペインの羊肉生産量は、長期的な減少傾向を示す一方で、今後の政策次第で回復の可能性を持っています。国際機関やEUの支援を活用しながら、効率的な農業運営と地域間協力を深化させることで、農業セクター全体の競争力が高まるでしょう。特に、労働力確保や環境問題への対応も同時に進めることが、将来の生産基盤を安定させる鍵となるでしょう。