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スペインのヤギ肉生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が公開した最新データによれば、スペインのヤギ肉生産量は、長期的には変動的な傾向が見られます。1960年代から1980年代にかけての生産量は緩やかに増加傾向を示しましたが、1990年代後半から減少に転じおり、直近である2023年には約9,540トンという低めの数値に達しています。特に2000年代から顕著な減少が続いており、2022年の一時的な回復以外では一貫して減少傾向が見られます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 9,540
-13.82% ↓
2022年 11,070
9.28% ↑
2021年 10,130
-0.2% ↓
2020年 10,150
-2.59% ↓
2019年 10,420
-5.01% ↓
2018年 10,970
2.4% ↑
2017年 10,713
8.17% ↑
2016年 9,904
8.6% ↑
2015年 9,120
5.78% ↑
2014年 8,622
-3.56% ↓
2013年 8,940
-7.8% ↓
2012年 9,696
-12.98% ↓
2011年 11,142
4.94% ↑
2010年 10,618
20.25% ↑
2009年 8,830
-4.57% ↓
2008年 9,253
-11.42% ↓
2007年 10,446
-10.64% ↓
2006年 11,690
-14.18% ↓
2005年 13,622
1.86% ↑
2004年 13,373
-6.09% ↓
2003年 14,240
-5.52% ↓
2002年 15,072
-1.93% ↓
2001年 15,369
-6.79% ↓
2000年 16,488
-2.39% ↓
1999年 16,891
2.92% ↑
1998年 16,411
3.13% ↑
1997年 15,913
9.98% ↑
1996年 14,469
-3.09% ↓
1995年 14,931
-8.78% ↓
1994年 16,368
-0.37% ↓
1993年 16,429
-2.12% ↓
1992年 16,785
4.68% ↑
1991年 16,034
-2.33% ↓
1990年 16,417
-6.25% ↓
1989年 17,512
-11.52% ↓
1988年 19,792
8.72% ↑
1987年 18,205
2.66% ↑
1986年 17,734
2.23% ↑
1985年 17,348
-1.88% ↓
1984年 17,681
17.59% ↑
1983年 15,036
9.08% ↑
1982年 13,784
6.56% ↑
1981年 12,936
-5.45% ↓
1980年 13,682
27.87% ↑
1979年 10,700
-14.4% ↓
1978年 12,500
-4.58% ↓
1977年 13,100
11.97% ↑
1976年 11,700
-3.31% ↓
1975年 12,100
-7.8% ↓
1974年 13,124
4.54% ↑
1973年 12,554
14.65% ↑
1972年 10,950
-9.97% ↓
1971年 12,163
-4.15% ↓
1970年 12,689
-0.48% ↓
1969年 12,750
-3.86% ↓
1968年 13,262
10.45% ↑
1967年 12,007
3.59% ↑
1966年 11,591
-1.89% ↓
1965年 11,814
1.7% ↑
1964年 11,617
9.31% ↑
1963年 10,628
-3.47% ↓
1962年 11,010
-1.6% ↓
1961年 11,189 -

スペインのヤギ肉生産量のデータを振り返ると、1960年代から1980年代までの間、全般的に増加の兆しが観察されました。1980年代終盤には18,000トン以上を記録した年もあり、比較的安定した増加を確認できます。しかし、その後、1990年代以降には徐々に減少に転じ、2008年には初めて10,000トンを下回りました。この減少傾向が続き、2023年には9,540トンと低い水準に達しています。

このような生産量の変化には、いくつかの背景が考えられます。まず、地中海地域特有の農業構造や食習慣の変化が生産量に影響を与えている可能性が挙げられます。スペインでは近年、食生活の多様化や健康志向の高まりにより、肉類全般の消費傾向に変化が表れています。とりわけ、ヤギ肉のような比較的伝統的な食材に対する需要は他の肉類(例えば豚肉や鶏肉)に押されやすい環境にあります。

さらに、農業従事者の高齢化や農村から都市への人口移動も見逃せない要因です。このような人口動態の変化により、ヤギの飼育や肉生産に従事する人々の減少が進み、結果として生産量の減少に繋がったと考えられます。加えて、2008年以降の世界的な経済危機の影響も、ヤギ肉産業の生産効率や収益性に悪影響を及ぼした可能性があります。

地域的に見れば、スペインは他のヨーロッパ諸国、例えばフランスやイタリアと比較しても、伝統的なヤギ肉生産の基盤を持つ国の一つです。しかし、これらの近隣諸国でも、類似した減少傾向が観察されています。一方で、アジア(特に中国やインド)の市場ではヤギ肉の需要が着実に拡大しており、スペインが産業輸出の競争力を強化するために積極的な取り組みを講じる可能性も存在します。

新型コロナウイルスの発生以降、スペインの農業や畜産業も世界的な物流網の混乱や地元市場の需要変動に影響を受けました。特に輸出産業において、これらの変化は大きな試練となっています。2022年には一時的に生産量が増加しましたが、これは需要の回復や政策的な支援策が影響したためと推測されます。しかし、2023年の再減少はこれらの影響が一過性だったことを示しており、構造的課題の解決が急務であることを物語っています。

今後の展望として、まず第一に、ヤギ肉生産者への支援措置の強化が必要です。例えば、生産効率を向上させるための最新の畜産技術の導入や、小規模生産者への助成金の提供が挙げられます。次に、国内外での需要拡大を目指し、ヤギ肉の栄養価や文化的価値をアピールするキャンペーンを展開することで、新たな市場の開拓を促進すべきです。また、地政学的リスクへの対応として、輸出市場の多角化が不可欠です。現状では、EU市場以外への展開が遅れている点が目立つため、アジア市場や中東市場での売り込みが重要になります。

結論として、スペインのヤギ肉生産量の推移には、経済的な変動や消費者行動の変化、地政学的要因が複雑に絡み合っています。この産業が持続可能な競争力を持つためには、農業政策や市場戦略の見直しが求められる時期に来ています。特に、地方の農業コミュニティを支える施策を通じて生産基盤を強化し、国内外での需要拡大を目指すことが喫緊の課題です。国際連合食糧農業機関(FAO)のデータが示す現在の状況を踏まえ、これらの取り組みを進める必要があります。