インドのパイナップル生産量推移（1961年～2023年）

国際連合食糧農業機関（FAO）が発表した最新データによると、インドのパイナップル生産量は、1961年の76,000トンから2023年の1,828,000トンへと大幅に増加しています。特に、1990年代以降、生産量が急増しており、2023年時点では過去最高水準の約1,800,000トン台を維持しています。一方で、1970年代後半や1986年、1996年、2017年以降の一部の年には減少が観測されており、要因の分析と持続的向上のための対策が求められています。

インドのパイナップル生産は、過去60年以上にわたり着実な増加傾向を示してきました。1960年代初頭には主に国内消費を目的とした小規模な生産でしたが、急速な経済発展と農業政策の拡充に伴い、1970年代から次第に成長軌道に乗りました。特に1993年に初めて年間生産量が1,000,000トンを超え、その後2000年代からは1,200,000～1,300,000トンの安定した水準で推移するようになりました。この成長は、高収量を目指した栽培技術の改善や農業支援政策の効果によるものと考えられます。

2000年代中期からはさらなる増加が見られ、2015年に約1,984,000トンと過去最高を記録しました。この背景には、主に国内市場の需要増加、輸出の増加、加工品市場の拡大が挙げられます。しかし、それ以降の生産量はわずかながら変動を見せ、特に2018年には1,706,000トンと大幅な下落が見られました。このような減少には、気候変動による不安定な天候や農地の灌漑能力の不足、さらには作物病害の発生が影響している可能性が指摘されています。幸い、2021年以降は再び増加傾向が顕著で、2023年には1,828,000トンと高い水準を回復しています。

インドのパイナップル農業は、主に熱帯地域での集約的な栽培に依存しています。特に南部から東部の州で生産が盛んであり、ケララ州やアッサム州は国内最大の生産地として知られています。他国と比較すると、2023年時点のインドの生産量はブラジルやフィリピンと並び、世界トップクラスの生産国の一つと見なされていますが、輸出量では依然としてタイやフィリピンに遅れをとっています。この現状は、インフラ不足や品質管理の課題に起因しており、競争力向上のための課題といえます。

現地の農業生産をとりまく課題として、自然災害や気象変動の影響が重要な要素となっています。例えば、台風や集中豪雨、干ばつが生産量に直接的な影響を与えるほか、突発的な害虫の発生や作物病害も脅威です。また、インド農業全般に関わる雇用問題や農業労働者の待遇も、持続可能な生産システムを維持するためには改善が求められます。

今後、インドのパイナップル生産をさらに安定させ、成長させるためには、いくつかの対策が考えられます。第一に、農業従事者への気候変動対応の研修や灌漑設備の強化が挙げられます。特に、持続可能な水資源管理と土壌改良の技術が普及することで、生産量の変動を最小限に抑えることが期待されます。第二に、輸出促進のための品質管理基準や流通インフラの整備が重要です。これにより、国際市場における競争力向上が見込まれます。第三に、パイナップルの加工品産業を強化することで、地方経済の活性化と収益の多様化にも寄与するでしょう。

結論として、インドのパイナップル生産は過去数十年にわたり着実に成長してきましたが、安定的な成長を維持するためには、気候変動やインフラ整備といった多様な課題に対応する必要があります。政府や地元自治体、国際的な農業支援機関が一体となり、長期的な視野に立った計画を実施することで、インドは世界のパイナップル生産のリーダーとなる可能性を高めていけるでしょう。