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インドの小麦生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによると、インドの小麦生産量は長期的に大幅に増加しています。1961年には約1,099万トンであった生産量が、2021年には約1億960万トンに達し、2020年代に入っても安定して高い水準を維持しています。この間、収穫量の急激な増加は特に1960年代後半から1970年代前半にかけての「緑の革命」による技術革新と政策の影響が大きいと考えられます。ただし、近年では天候変動や災害などの課題も現れており、安定した生産の持続に向けた対策が議論されています。

年度 生産量(トン)
2022年 107,742,070
2021年 109,586,500
2020年 107,860,510
2019年 103,596,230
2018年 99,869,520
2017年 98,510,220
2016年 92,290,000
2015年 86,530,000
2014年 95,850,000
2013年 93,510,000
2012年 94,880,000
2011年 86,874,000
2010年 80,803,600
2009年 80,679,400
2008年 78,570,200
2007年 75,806,704
2006年 69,354,496
2005年 68,636,896
2004年 72,156,200
2003年 65,760,800
2002年 72,766,304
2001年 69,680,896
2000年 76,368,896
1999年 71,287,504
1998年 66,345,000
1997年 69,350,200
1996年 62,097,400
1995年 65,767,400
1994年 59,840,000
1993年 57,210,100
1992年 55,689,504
1991年 55,134,496
1990年 49,849,504
1989年 54,110,208
1988年 46,169,408
1987年 44,322,896
1986年 47,051,808
1985年 44,068,800
1984年 45,476,000
1983年 42,793,904
1982年 37,451,808
1981年 36,312,608
1980年 31,830,000
1979年 35,507,808
1978年 31,749,200
1977年 29,009,904
1976年 28,846,304
1975年 24,104,400
1974年 21,778,000
1973年 24,734,608
1972年 26,409,904
1971年 23,832,496
1970年 20,093,296
1969年 18,651,600
1968年 16,540,100
1967年 11,393,000
1966年 10,394,000
1965年 12,257,000
1964年 9,853,000
1963年 10,776,000
1962年 12,072,000
1961年 10,997,000

インドの小麦生産量の長期的な推移を見ると、1961年の約1,099万トンから2021年の約1億956,500万トンに増加しており、ほぼ10倍に拡大しています。この成長の中核には、1960年代後半から1970年代初頭にかけての「緑の革命」が位置しています。この運動により、化学肥料、灌漑技術、高収量品種(HYV)などが導入され、インドにおける農業生産に劇的な進展がもたらされました。1971年には約2,383万トンへと急成長し、その後も1970年代末には年間の小麦生産量が3,550万トンを突破しています。

2000年代以降も生産量は増加を続け、2018年以降輸出可能な余剰小麦を生産できる水準に達しています。2018年の約9,986万トン、2019年の約1億359万トン、2020年には1億786万トンを記録し、2021年にはさらに増え、1億955万トンを超えるなどの成果を見せています。しかし、2022年には若干減少し約1億774万トンとなり、気候変動による異常気象が主な原因と指摘されています。

一方、課題も顕在化しています。小麦は、特に気候条件に左右される作物であり、近年のインドでは不安定な降水量や異常高温が影響しています。気候変動がもたらすカレンダー外れの雨やヒートウェーブは、小麦の収穫時期に直接影響を及ぼしており、2022年の生産量減少に象徴されています。また、資源の浪費や土壌劣化、肥料の過剰使用といった環境負荷も将来に向けた懸念材料です。

これに対し、いくつかの対策が検討されています。まず、耐気候変動性を持つ小麦の品種改良を加速させる必要があります。既存の研究では、高温条件や水不足に強い品種の開発が進められていますが、こうした研究成果を農家全体に行き渡らせるため、政府の農業支援政策の強化が求められます。加えて、灌漑システムのさらに効率的な改良が改善のカギとなります。既にインドの主要生産エリアでは灌漑が進んでいますが、最新のドローン技術やリモートモニタリング技術を応用することで水資源の使用効率の向上が期待できます。

さらに、気候変動適応策として、小麦輸出がインド経済に与える影響を最適化する枠組みも重要です。他国、特に中国、アメリカ、EU諸国との連携を強化して、国際的な価格変動に備えるとともに長期的な食料安全保障を確立することが求められます。また、新型コロナウイルスやその他の疫病によるサプライチェーンへの影響を軽減するため、輸送インフラや在庫管理のデジタル化も必要となります。

結論として、インドの小麦生産量は世界の主要な食料供給源とされ、特に南アジアやアフリカ諸国への輸出につながっています。ただし、その背景には気候問題や環境負荷、政策的な改善点も未解決のまま残されています。今後、インドおよび国際社会が協力して技術革新、気候変動対策、輸出効率化に取り組むことで、この成長をさらに持続可能なものにする可能性を秘めています。