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インドの羊飼養数推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによると、インドの羊飼養数は1961年の約4,022万匹から2022年の約7,534万匹に増加しました。特に2000年以降は増減を繰り返しながらも、上昇傾向にあります。1960年代から1990年代半ばまでの緩やかな増加に対し、2000年代以降は急速な成長が見られますが、2011年以降には一時的な減少期を挟むなど変動が大きくなっています。

年度 飼養数(匹) 増減率
2023年 77,423,974
2.76% ↑
2022年 75,345,847
0.67% ↑
2021年 74,842,262
-1.18% ↓
2020年 75,735,575
1.99% ↑
2019年 74,260,615
2.1% ↑
2018年 72,733,401
2.14% ↑
2017年 71,207,460
2.51% ↑
2016年 69,463,590
4.15% ↑
2015年 66,694,432
5.86% ↑
2014年 63,000,000
-1.25% ↓
2013年 63,800,000
-1.95% ↓
2012年 65,069,189
-2.18% ↓
2011年 66,518,000
-1.81% ↓
2010年 67,744,000
-1.81% ↓
2009年 68,993,000
-1.81% ↓
2008年 70,265,000
-1.81% ↓
2007年 71,558,000
3.88% ↑
2006年 68,885,000
3.87% ↑
2005年 66,319,000
3.87% ↑
2004年 63,848,000
3.87% ↑
2003年 61,469,000
1.12% ↑
2002年 60,787,000
1.12% ↑
2001年 60,113,000
1.12% ↑
2000年 59,447,000
1.12% ↑
1999年 58,789,000
1.12% ↑
1998年 58,137,000
1.12% ↑
1997年 57,494,000
2.48% ↑
1996年 56,100,000
2.56% ↑
1995年 54,700,000
2.43% ↑
1994年 53,400,000
2.5% ↑
1993年 52,100,000
2.59% ↑
1992年 50,783,000
2.09% ↑
1991年 49,743,000
2.14% ↑
1990年 48,700,000
2.14% ↑
1989年 47,680,000
2.14% ↑
1988年 46,681,000
2.14% ↑
1987年 45,704,000
-1.35% ↓
1986年 46,330,000
-1.28% ↓
1985年 46,930,000
-1.2% ↓
1984年 47,500,000
-1.45% ↓
1983年 48,200,000
-1.16% ↓
1982年 48,764,000
5.05% ↑
1981年 46,420,000
3.22% ↑
1980年 44,970,000
3.21% ↑
1979年 43,570,000
3.22% ↑
1978年 42,210,000
3.19% ↑
1977年 40,907,008
0.46% ↑
1976年 40,720,000
0.44% ↑
1975年 40,540,000
0.35% ↑
1974年 40,400,000
0.5% ↑
1973年 40,200,000
0.52% ↑
1972年 39,993,008
-0.27% ↓
1971年 40,100,000
-1.37% ↓
1970年 40,656,000
-0.82% ↓
1969年 40,991,000
-0.82% ↓
1968年 41,330,000
-0.82% ↓
1967年 41,671,000
-0.82% ↓
1966年 42,015,008
0.88% ↑
1965年 41,650,000
0.87% ↑
1964年 41,290,000
0.86% ↑
1963年 40,937,000
0.88% ↑
1962年 40,580,000
0.89% ↑
1961年 40,223,008 -

インドの羊飼養動態は、国の農村経済や食糧供給において重要な要素を形成しています。FAOのデータによれば、1961年から2022年の間で羊の飼養数は約1.87倍に増加しました。この増加は、主に人口増加や家畜製品の需要拡大、そして農畜産業の発展が要因と推定されます。特に1990年代半ば以降の急激な増加は、インドの経済成長と密接に関連しており、地域経済や輸出需要の拡大がこれを後押しした可能性があります。

しかし、詳しく推移を見てみると、一部で減少の時期が繰り返し見られます。例えば1967年から1973年、あるいは2008年から2014年は減少が目立つ期間でした。このような減少は、干ばつや洪水による飼料の不足、農村地帯での土地利用の変化、あるいは羊の疾病の蔓延といった要因による可能性が考えられます。また、地政学的な要因や局地的な紛争がこの動態に影響した例も無視できません。例えば、農耕地の拡大が放牧地を圧迫し、羊の生産環境を不安定にした可能性があります。

ここ数年では、2022年に約7,534万匹に達しており、過去最高水準を記録しました。この背後には、羊肉や羊毛の国内外需要の増加によるものと推察されます。インドは現在、主要な羊肉および羊毛の輸出国として位置付けられていますが、それに伴う国内生産の環境負荷も課題となっています。特に農村部や半乾燥地帯では、過放牧が生態系に負担を与えているケースもあるため、持続可能な飼育モデルの確立が急務です。

さらに、疫病や気候変動の影響も今後の課題として挙げられます。例えば、2011年から2014年に減少期が見られた背景には、気候変動による極端な降水状況や羊の感染症が影響を及ぼしたのではないかと考えられます。新型コロナウイルスのパンデミックによる物流の停滞や経済の萎縮も、2021年から2022年の増加速度の鈍化に影響を与えた可能性があります。

このような課題に対して、幾つかの具体的な対策が求められます。まず、地域ごとの気候変動適応戦略の策定が挙げられます。乾燥地帯向けには耐旱性の牧草を増やす、水資源の効率的な管理を推進するなどの施策が必要です。また、羊の疾病対策としては、ワクチン普及の徹底や防疫体制の強化が重要です。さらに、農民がより効率的かつ持続可能な牧畜を行えるよう、研修プログラムや技術支援を拡充することが求められます。

国際協力の枠組みを活用した研究も効果的です。例えば、インド独自の羊品種の改良と生産性向上に向けたプロジェクトを国際機関と共同で実施することで、より高い環境適応力を持つ羊の育成が期待されます。また、地域間協力の強化も重要で、特にインドと近隣諸国との間での牧草地や水源の共有管理に取り組むことで、地政学的リスクを緩和することができるでしょう。

結論として、インドの羊飼養数は着実に増加しており、これは国や地域の経済発展、食料安全保障に貢献しています。ただし、持続可能性や環境負荷、気候変動への対応が重要な課題であり、これらを克服するための政策と投資が今後の鍵となります。インド政府や国際社会が協力し、現状の課題に対して具体的な解決策を講じることができれば、インドの羊生産は今後さらに発展し続ける可能性を秘めています。