FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、インドの豚飼育数は1961年の5,176,000頭から、2022年には8,529,366頭まで増加しながらも、途中幾つかの増減が見られました。1960年代後半から1990年代にかけては一貫した増加傾向を示し、1995年から2003年にかけて安定した数値を保っていましたが、2004年以降は減少傾向にあります。この減少は特に2020年代に入り顕著に表れています。
インドの豚飼育数推移(1961-2022)
年度 | 飼育数(頭) |
---|---|
2022年 | 8,529,366 |
2021年 | 8,713,911 |
2020年 | 8,838,792 |
2019年 | 9,055,488 |
2018年 | 9,272,935 |
2017年 | 9,489,664 |
2016年 | 9,686,420 |
2015年 | 9,851,102 |
2014年 | 10,000,000 |
2013年 | 10,130,000 |
2012年 | 10,293,695 |
2011年 | 10,481,000 |
2010年 | 10,640,000 |
2009年 | 10,802,000 |
2008年 | 10,967,000 |
2007年 | 11,134,000 |
2006年 | 11,686,000 |
2005年 | 12,268,000 |
2004年 | 12,878,000 |
2003年 | 13,519,000 |
2002年 | 13,478,000 |
2001年 | 13,440,000 |
2000年 | 13,403,000 |
1999年 | 13,366,000 |
1998年 | 13,328,000 |
1997年 | 13,291,000 |
1996年 | 13,200,000 |
1995年 | 13,100,000 |
1994年 | 13,000,000 |
1993年 | 12,900,000 |
1992年 | 12,788,000 |
1991年 | 12,300,000 |
1990年 | 11,900,000 |
1989年 | 11,400,000 |
1988年 | 11,000,000 |
1987年 | 10,606,000 |
1986年 | 10,500,000 |
1985年 | 10,400,000 |
1984年 | 10,300,000 |
1983年 | 10,200,000 |
1982年 | 10,072,000 |
1981年 | 9,600,000 |
1980年 | 9,000,000 |
1979年 | 8,600,000 |
1978年 | 8,100,000 |
1977年 | 7,647,000 |
1976年 | 7,400,000 |
1975年 | 7,300,000 |
1974年 | 7,100,000 |
1973年 | 6,900,000 |
1972年 | 6,896,000 |
1971年 | 6,533,000 |
1970年 | 6,000,000 |
1969年 | 5,700,000 |
1968年 | 5,588,000 |
1967年 | 5,304,000 |
1966年 | 4,975,000 |
1965年 | 5,010,000 |
1964年 | 5,050,000 |
1963年 | 5,090,000 |
1962年 | 5,135,000 |
1961年 | 5,176,000 |
インドの豚飼育数データを分析すると、1960年代は飼育頭数がほぼ横ばいで推移しましたが、1967年以降は増加に転じ、1980年代には年々約40~50万頭のペースで増加していることがわかります。この増加は、おそらく農村地帯の家畜需要の高まりと養豚業の普及、農業政策の一部として豚が重視されたことが影響していると考えられます。特に、1970年代から90年代にかけて、豚肉の需要拡大や地域社会への補助金制度が増加を後押ししたと推測されます。
しかし、2004年以降、飼育数が減少に転じています。この減少にはいくつかの要因が考えられます。まず、疫病の発生が養豚業への影響を及ぼしていることが挙げられます。例えば、アフリカ豚熱(ASF)のような豚に特有の疫病が、飼育効率を低下させ、その結果農家が飼育を減少させた可能性があります。また、都市化の進展により農村部が縮小し、豚の飼育スペースが制限されたことも一因です。さらに、インドでは豚肉消費が限定的であり、これが飼育数の減少の長期要因となっているとも考えられます。ヒンドゥー教徒が多数を占めるインドでは豚肉よりも牛肉や羊肉、鶏肉の需要が高いことが、養豚業発展の妨げになっている面もあります。
また、近年では地政学的なリスクや環境変動も影響を及ぼしている可能性があります。例えば、2020年以降の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による物流の停滞や市場縮小が飼育業者を直撃しました。市場動向の予測が困難な時期には、リスク回避のために飼育を抑える傾向が見られることもあります。さらに、気候変動による農村地域での餌資源の不足が、間接的に豚飼育への影響を与えていると考えられます。
今後の課題としては、養豚業の生産性向上のための近代的な飼育技術の導入や、支援政策の拡充が挙げられます。例えば、疫病予防のためのワクチン普及率の向上や、飼料生産における効率化が急務です。さらに、豚肉の消費促進に向けた文化的理解の醸成とともに、輸出産業化の可能性を模索することも重要です。特にアジア諸国では豚肉の需要が高いため、インドは近隣諸国への輸出拡大を視野に入れることで新しい市場を開拓できる可能性があります。
また、地域間の協力を通じて疫病対策や技術移転を推進する枠組みを構築することが推奨されます。たとえば、中国やベトナムなど豚肉生産大国との情報共有や技術交換が、インドの養豚業に有益な示唆を与えるでしょう。これにより、安定した豚飼育数を維持するとともに、より持続可能な養豚業の発展が可能になると考えられます。
結論として、インドの豚飼育数は長期的には増加してきましたが、近年は減少傾向が進んでいます。この現象は、疫病、都市化、環境変動、社会的要因が絡み合った結果として説明されます。将来的には、飼育技術の改善、農家への補助制度の強化、そして市場拡大に向けた具体的な施策が必要不可欠です。国内の需要に見合った生産拡充と同時に、輸出戦略も積極的に推進することで、豚飼育数を回復軌道に乗せることができるでしょう。