国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、インドの鶏飼養数は長期的に一貫して増加傾向にあります。1961年には約1億7600万羽であった飼養数が、2022年には約8億5232万羽に達しました。この増加は、インドの人口増加、消費者ニーズの多様化、および家禽産業の発展によるものであると考えられます。特に2000年代以降、急激な成長が見られ、工業的な家禽生産システムの導入が推進力となっています。
インドの鶏飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(羽) |
---|---|
2022年 | 852,324.00 |
2021年 | 836,898.00 |
2020年 | 824,722.00 |
2019年 | 807,894.00 |
2018年 | 790,877.00 |
2017年 | 774,010.00 |
2016年 | 757,404.00 |
2015年 | 741,105.00 |
2014年 | 725,000.00 |
2013年 | 709,000.00 |
2012年 | 692,646.00 |
2011年 | 679,000.00 |
2010年 | 663,300.00 |
2009年 | 647,740.00 |
2008年 | 632,560.00 |
2007年 | 617,734.00 |
2006年 | 572,996.00 |
2005年 | 531,536.00 |
2004年 | 493,076.00 |
2003年 | 457,399.00 |
2002年 | 419,000.00 |
2001年 | 396,000.00 |
2000年 | 374,000.00 |
1999年 | 353,000.00 |
1998年 | 334,000.00 |
1997年 | 315,428.00 |
1996年 | 314,000.00 |
1995年 | 306,000.00 |
1994年 | 298,000.00 |
1993年 | 291,000.00 |
1992年 | 284,025.00 |
1991年 | 274,000.00 |
1990年 | 268,000.00 |
1989年 | 262,000.00 |
1988年 | 256,500.00 |
1987年 | 251,000.00 |
1986年 | 260,200.00 |
1985年 | 246,000.00 |
1984年 | 232,500.00 |
1983年 | 219,800.00 |
1982年 | 180,500.00 |
1981年 | 197,000.00 |
1980年 | 186,800.00 |
1979年 | 177,100.00 |
1978年 | 167,900.00 |
1977年 | 149,300.00 |
1976年 | 142,000.00 |
1975年 | 141,000.00 |
1974年 | 140,000.00 |
1973年 | 139,000.00 |
1972年 | 129,500.00 |
1971年 | 132,000.00 |
1970年 | 127,000.00 |
1969年 | 123,000.00 |
1968年 | 120,000.00 |
1967年 | 117,000.00 |
1966年 | 105,700.00 |
1965年 | 106,100.00 |
1964年 | 106,500.00 |
1963年 | 106,800.00 |
1962年 | 107,200.00 |
1961年 | 107,600.00 |
インドの鶏飼養数の推移を見てみると、1961年から2022年までの間に飼養数が約8倍に増加していることがわかります。この増加は幾つかの要因に起因しています。まず、インドの人口増加が挙げられます。インドは現在、約14億人を抱える世界第2位の人口大国であり、食肉および鶏卵を含む動物性タンパク質の需要が年々高まっています。鶏肉は赤肉に比べ安価であり、宗教的制約の少ないことから幅広い層に利用されています。
次に、1970年代以降、農業部門の現代化や技術革新が鶏の生産効率を大幅に向上させました。特に2000年代における急増は、近代的な養鶏設備や生産技術の導入、ならびに民間投資の増加が大きな要因です。この際、工場型施設の増設やより効率的な飼料供給システムの採用が、飼養数の伸びを支えました。また、生産地から消費地までの流通インフラの整備も、需要と供給のバランスを保つ重要な役割を果たしています。
しかしながら、このような急速な成長には課題も伴っています。第一に、家禽業の急拡大により、環境への影響が懸念されています。家禽飼養には多量の水や飼料が必要であり、飼料用作物の生産を目的とした土地利用の増加が、自然環境に負担をかける可能性があります。また、集約的な飼養環境は疾病リスクを高める傾向があります。新型コロナウイルスの発生と併せ、2019年から2020年にかけて一部地域で鳥インフルエンザが確認され、鶏肉の輸出入や国内供給に影響が出たことは、リスク管理の重要性を示しています。
さらに、地政学的な背景も無視できません。隣国との貿易関係の変動や、地域紛争などの要因が、鶏肉や飼料作物の国際的な供給チェーンに影響を与える恐れがあります。こうしたリスクを低減するためには、国際的な協力および国内での飼料生産の自給自足体制の構築が重要です。
未来に向けての具体的な対策としては、まず、環境への負荷を軽減するための持続可能な養鶏方法の導入が必要です。飼料生産過程の効率化や、鶏舎のエネルギー消費削減など、環境へ配慮した技術が求められます。また、疫病対策としては、効率的なワクチン接種や定期検査体制を強化し、特に感染拡大地域での即時対応策を確立することが大切です。さらに、地政学的リスクへの対応として、隣国や国際機関との連携を強化し、不安定な状況でも安定した供給体制を構築することが求められます。
結論として、インドの鶏飼養数の増加は、経済や食事パターンの変化を反映したものであり、今後もその傾向が続くと予想されます。一方で、環境問題や疾病リスクなどの課題を克服するためには、新しいテクノロジーや政策的措置を採用し、地球や国民の健康を守りながら持続可能な発展を目指す必要があります。