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インドのナシ生産量推移(1961年~2023年)

国連食糧農業機関(FAO)が公開した最新データによると、インドのナシ生産量は1961年の33,000トンから2023年の271,000トンまで拡大しました。この62年間で全体的な増加基調が見られたものの、直近の十年間には減少傾向が鮮明になっています。2010年から2017年にかけて成長がピークに達し、346,000トンに届いたものの、2023年にはその規模から約22%の縮小となっています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 271,000
-12.3% ↓
2022年 309,000
11.96% ↑
2021年 276,000
-4.83% ↓
2020年 290,000
-3.33% ↓
2019年 300,000
-5.66% ↓
2018年 318,000
-8.09% ↓
2017年 346,000
7.12% ↑
2016年 323,000
6.6% ↑
2015年 303,000
-4.33% ↓
2014年 316,700
-2.55% ↓
2013年 325,000
-4.41% ↓
2012年 340,000
1.49% ↑
2011年 335,000
-0.3% ↓
2010年 336,000
4.85% ↑
2009年 320,464
2.78% ↑
2008年 311,806
3.4% ↑
2007年 301,548
8.21% ↑
2006年 278,673
5.67% ↑
2005年 263,718
7.25% ↑
2004年 245,887
6.5% ↑
2003年 230,869
6.78% ↑
2002年 216,203
8.1% ↑
2001年 200,000
6.38% ↑
2000年 188,000
5.62% ↑
1999年 178,000
12.66% ↑
1998年 158,000
3.27% ↑
1997年 153,000
2% ↑
1996年 150,000
7.14% ↑
1995年 140,000
3.29% ↑
1994年 135,538
4.26% ↑
1993年 130,000
8.33% ↑
1992年 120,000
4.35% ↑
1991年 115,000
-27.21% ↓
1990年 157,987
33.14% ↑
1989年 118,658
44.44% ↑
1988年 82,151
13.04% ↑
1987年 72,676
-11.37% ↓
1986年 82,000
-3.53% ↓
1985年 85,000
6.25% ↑
1984年 80,000
14.29% ↑
1983年 70,000
7.69% ↑
1982年 65,000 -
1981年 65,000
1.56% ↑
1980年 64,000
3.23% ↑
1979年 62,000 -
1978年 62,000
3.33% ↑
1977年 60,000
3.45% ↑
1976年 58,000
3.57% ↑
1975年 56,000
3.7% ↑
1974年 54,000 -
1973年 54,000
3.85% ↑
1972年 52,000
-3.7% ↓
1971年 54,000
3.85% ↑
1970年 52,000
4% ↑
1969年 50,000
2.04% ↑
1968年 49,000
2.08% ↑
1967年 48,000
2.13% ↑
1966年 47,000
4.44% ↑
1965年 45,000
-2.17% ↓
1964年 46,000
15% ↑
1963年 40,000
8.11% ↑
1962年 37,000
12.12% ↑
1961年 33,000 -

インドのナシ生産量推移のデータを詳しく見ると、1961年から1980年代初頭まで年間数千トンずつ増加し、安定した成長を維持してきました。この段階での増加には、農業技術の改良や灌漑システムの導入が大きな役割を果たしていると考えられます。特に1980年代以降は急激な伸びが見られ、1990年には初めて150,000トンを突破しました。この急上昇期を支えた背景には、農業政策における果樹栽培支援の強化、農家への補助金提供、そして国内需要の増大が挙げられます。

しかしながら、2020年代に入ると状況が変化し、2023年には271,000トンと直近のピークから大幅に縮小しています。この減少には、いくつかの要因が絡んでいます。まず気象条件の変動による影響が顕著です。特にモンスーンの不安定化が収穫量に打撃を与えています。また、農業における労働力や若年層の減少、並びに農業従事者の都市流入も生産効率の低下を招いた可能性があります。さらに、ナシ栽培における競争作物の増加が栽培面積の縮小に繋がっています。

他国と比較すると、インドのナシ生産量は世界的には小規模ですが、地域的な栽培条件や需要に合った生産体制が評価されています。例えば中国はインドの10倍以上のナシを生産し、世界市場を圧倒していますが、その一方でインドの生産には特有の地方需要や経済性があります。一方、近年ではアメリカのように農業技術を更に自動化・最適化している国に比べ、インドはインフラ整備や技術導入の遅れによる競争力の欠如が課題となっています。

地政学的リスクや災害もこの減少傾向に影響を及ぼしています。例えば、インドでは近年、熱波や大雨などの異常気象が農業全般に影響を及ぼしており、ナシもその被害から免れられません。同時に、国際的な経済情勢の影響で農業用肥料や資材のコストが高騰しており、中小農家は経済的負担に直面しています。

これらの課題を解決するためには、いくつかの具体的な対策が必要です。第一に、持続可能な農業技術の導入を支援することです。これは気候変動に対応できる品種の開発や、新技術による収穫率向上を指します。第二に、農業セクターへの投資を強化することで、灌漑システムや倉庫施設の整備を促進する必要があります。第三に、政府および民間セクターの協力で農業従事者への教育や訓練プログラムを充実させるべきです。さらに、輸出促進政策を進め、インド産ナシの販路を国内外へ拡大する施策も重要と言えるでしょう。

結論として、インドのナシ生産量は全体的に増加してきたものの、近年の減少傾向は将来的な農業生産基盤の持続性に懸念を投げかけています。この現状を改善し、ナシ産業の将来を確保するためには、上記のような持続可能な政策や技術導入が不可欠です。国際社会との協力や先進国の事例から学び、インド特有の条件に適応した解決策を導入することで、安定的な生産と経済的成長の両立を図ることが可能になるでしょう。