国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによると、インドにおけるさくらんぼの生産量は1961年の3,000トンから安定的、または変動的に増加し、2000年代以降は明確な上昇傾向を示していました。しかし、2020年代に入ると増加ペースが鈍化し、2023年には10,683トンの生産量となり、2019年以降やや減少傾向にあります。
インドのさくらんぼ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 10,683 |
-2.3% ↓
|
2022年 | 10,934 |
-0.72% ↓
|
2021年 | 11,014 |
0.88% ↑
|
2020年 | 10,918 |
0.43% ↑
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2019年 | 10,871 |
7.01% ↑
|
2018年 | 10,159 |
-1.27% ↓
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2017年 | 10,289 |
-1.98% ↓
|
2016年 | 10,497 |
-4.1% ↓
|
2015年 | 10,945 |
3.4% ↑
|
2014年 | 10,586 |
6.28% ↑
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2013年 | 9,960 |
0.63% ↑
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2012年 | 9,898 |
1.69% ↑
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2011年 | 9,733 |
1.88% ↑
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2010年 | 9,554 |
1.91% ↑
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2009年 | 9,374 |
1.22% ↑
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2008年 | 9,261 |
1.61% ↑
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2007年 | 9,114 |
2.21% ↑
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2006年 | 8,917 |
1.67% ↑
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2005年 | 8,771 |
2.7% ↑
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2004年 | 8,540 |
2.88% ↑
|
2003年 | 8,301 |
3.06% ↑
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2002年 | 8,054 |
0.68% ↑
|
2001年 | 8,000 |
2.56% ↑
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2000年 | 7,800 |
5.41% ↑
|
1999年 | 7,400 |
45.1% ↑
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1998年 | 5,100 |
4.08% ↑
|
1997年 | 4,900 |
2.08% ↑
|
1996年 | 4,800 |
9.09% ↑
|
1995年 | 4,400 |
4.76% ↑
|
1994年 | 4,200 |
5% ↑
|
1993年 | 4,000 |
5.26% ↑
|
1992年 | 3,800 |
2.7% ↑
|
1991年 | 3,700 |
15.63% ↑
|
1990年 | 3,200 |
-8.57% ↓
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1989年 | 3,500 |
75% ↑
|
1988年 | 2,000 |
97.43% ↑
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1987年 | 1,013 |
-7.91% ↓
|
1986年 | 1,100 |
-63.33% ↓
|
1985年 | 3,000 | - |
1984年 | 3,000 | - |
1983年 | 3,000 |
50% ↑
|
1982年 | 2,000 | - |
1981年 | 2,000 | - |
1980年 | 2,000 |
-33.33% ↓
|
1979年 | 3,000 | - |
1978年 | 3,000 |
-25% ↓
|
1977年 | 4,000 | - |
1976年 | 4,000 | - |
1975年 | 4,000 | - |
1974年 | 4,000 | - |
1973年 | 4,000 | - |
1972年 | 4,000 | - |
1971年 | 4,000 |
2.56% ↑
|
1970年 | 3,900 |
2.63% ↑
|
1969年 | 3,800 |
2.7% ↑
|
1968年 | 3,700 |
2.78% ↑
|
1967年 | 3,600 |
2.86% ↑
|
1966年 | 3,500 |
2.94% ↑
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1965年 | 3,400 |
3.03% ↑
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1964年 | 3,300 |
3.13% ↑
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1963年 | 3,200 |
3.23% ↑
|
1962年 | 3,100 |
3.33% ↑
|
1961年 | 3,000 | - |
FAOによる最新のデータでは、インドのさくらんぼ生産量の歴史的推移が示されています。1960年代から1970年代初頭にかけてインドのさくらんぼ生産量は緩やかに増加し、1971年から1977年までおおよそ4,000トンで安定していました。しかし、1978年以降の供給量には大幅な変動が見られ、特に1980年代半ばには1,100トンにまで減少しています。この時期の生産減少は、主に気候変動や農地や技術の制約が原因であると考えられます。
1980年代後半から1990年代初頭にかけては、再び回復傾向を見せ、1999年に7,400トン、2000年には7,800トンへと大幅に増加しました。その後、2000年代に入ると、インドのさくらんぼ生産に長期にわたる成長トレンドが現れ、特に2014年には10,586トンを記録しました。この増加傾向は、農業技術の進歩、地域的支援政策、気候順応型品種の導入などが生産拡大に貢献したと考えられます。
一方、2020年代に入ると、収量の伸びが停滞し始め、2017年の10,289トンからわずかな低下を示しています。2020年以降のデータでは増減が繰り返され、2022年には10,934トンとやや増加しましたが、最新の2023年では10,683トンと減少傾向に戻りました。この変動には、世界的な気候変動の影響、新型コロナウイルス感染症によるサプライチェーンの混乱、農地利用の競争などが関わっている可能性があります。
インド特有の課題として、さくらんぼ生産が特定の山岳地帯や気候条件に大きく依存しているため、気象異変に敏感であることが挙げられます。他国のさくらんぼ生産状況と比較すると、中国は世界最大のさくらんぼ生産国であり、安定した大規模生産を実現しています。一方、インドの生産規模は比較的限定的であり、国内需要を満たす上で輸入品に依存している部分も少なくありません。
未来への課題として、インドではさくらんぼ生産を増加させるための持続可能な方法を確立することが急務です。特に、小規模農家への支援を拡充し、耐干ばつ性や高収量特性を持つ新品種の導入が求められます。また、灌漑インフラの整備や、気候変動に対応した農業プランの導入は今後の安定的な収穫に重要な役割を果たすでしょう。
さらに、地域間協力の強化も有効な対策です。例えば、農業技術や研修をインド国内外で相互交換する機会を増やすことで、さくらんぼ生産のノウハウが地域間でシェアされ、全体的な生産性向上につながる可能性があります。政府支援に加えて、国際農業支援機関や非政府組織との連携を通じて、環境と経済の両立を目指した生産体制の確立が課題となります。
結論として、インドのさくらんぼ生産は50年以上にわたり全般的には増加傾向を示していますが、不定期に生じる減少や生産の停滞も無視できません。持続可能な方法や効率的な技術導入を含む政策対応が今後の成長の鍵となるでしょう。特に長期的な視点での気候変動対策と農業支援プログラムが、生産量の安定とさらなる発展をもたらすと期待されます。