国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、インドのヤギ飼養頭数は、1961年の約6,086万頭から年々増加し、2022年には約1億4,999万頭に達しました。この期間の主な特徴として、1970年代から1990年代までは非常に緩やかな増加ペースでしたが、2000年代以降は飼養頭数の成長が加速し、近年では2020年以降おおむね1億5,000万頭近くまで推移しています。一方で、2010年代の中盤頃には一時的な減少傾向が見られるなど、細かな動きも見られます。
インドのヤギ飼養頭数推移(1961-2022)
年度 | 飼養頭数(頭) |
---|---|
2022年 | 149,994,093 |
2021年 | 149,173,523 |
2020年 | 150,884,193 |
2019年 | 148,884,786 |
2018年 | 146,755,288 |
2017年 | 144,705,338 |
2016年 | 142,335,143 |
2015年 | 138,391,040 |
2014年 | 133,000,000 |
2013年 | 134,000,000 |
2012年 | 135,173,093 |
2011年 | 136,248,000 |
2010年 | 137,320,992 |
2009年 | 138,394,000 |
2008年 | 139,467,008 |
2007年 | 140,540,000 |
2006年 | 136,286,000 |
2005年 | 132,188,000 |
2004年 | 128,213,000 |
2003年 | 124,358,000 |
2002年 | 124,077,000 |
2001年 | 123,805,000 |
2000年 | 123,533,000 |
1999年 | 123,262,000 |
1998年 | 122,991,000 |
1997年 | 122,721,000 |
1996年 | 121,200,000 |
1995年 | 119,700,000 |
1994年 | 118,200,000 |
1993年 | 116,700,000 |
1992年 | 115,279,000 |
1991年 | 114,200,000 |
1990年 | 113,200,000 |
1989年 | 112,200,000 |
1988年 | 111,200,000 |
1987年 | 110,207,000 |
1986年 | 102,870,000 |
1985年 | 99,490,000 |
1984年 | 99,430,000 |
1983年 | 98,300,000 |
1982年 | 95,253,008 |
1981年 | 91,000,000 |
1980年 | 86,900,000 |
1979年 | 83,000,000 |
1978年 | 79,200,000 |
1977年 | 75,620,000 |
1976年 | 74,000,000 |
1975年 | 72,500,000 |
1974年 | 71,000,000 |
1973年 | 69,000,000 |
1972年 | 67,518,000 |
1971年 | 67,026,000 |
1970年 | 66,526,000 |
1969年 | 66,036,000 |
1968年 | 65,549,000 |
1967年 | 65,066,000 |
1966年 | 64,589,008 |
1965年 | 63,800,000 |
1964年 | 63,070,000 |
1963年 | 62,334,000 |
1962年 | 61,600,000 |
1961年 | 60,864,000 |
インドのヤギ飼養頭数は、半世紀以上にわたるデータからその成長傾向が一目瞭然です。1961年には約6,086万頭にとどまっていた頭数は、2022年には約2.5倍となる約1億4,999万頭にまで拡大しました。この増加は、インド国内での農業用家畜の需要、ヤギを供給源とする食肉や乳製品の消費拡大が背景にあると考えられます。
1950年代から1980年代にかけては、インドの食糧安全保障を重視した政策の一環として、ヤギ生産は農村部の経済活動を支える重要な役割を果たしましたが、その増加は比較的緩やかなものでした。しかし、2000年代以降は、都市化の進展とともに食肉消費が増加したこと、そして中産階級の拡大により乳製品需要が伸びたことが飼養頭数の加速的な増加を促したと分析できます。
一方で、2008年以降のデータを注意深く見ると、約1億4,000万頭を超えた後、2010年代中盤には減少傾向が見られる点も興味深いです。この減少期には、気候変動や干ばつといった自然災害がヤギ飼養に影響を及ぼし、例えば飼料の供給不足や水資源の枯渇が引き金になった可能性があります。ただし、2015年以降は再び頭数が増加しており、インド政府による農家への助成金や畜産振興政策が功を奏したと考えられます。
インド国内のヤギ飼養動態を世界的な視点で見た場合、インドが持つ農産物市場における競争力を理解することも重要です。例えば、インドのヤギ頭数は中国やアフリカ諸国といった多くのヤギ飼養国と比較しても圧倒的に多く、これは外部市場への食肉・乳製品輸出の可能性を高める一因となっています。ただし、飼養頭数の増加とともに、過放牧や土地の劣化、自然環境への負荷といった課題も顕在化している点が懸念されます。
さらに、地政学的影響を考慮すると、地域紛争や気候変動が家畜生産全般に与えるリスクも無視できません。例えば、気候変動による極端な気象現象や地域間の水資源争奪が今後ヤギの飼養効率に影響を与える可能性があります。特に、これらの要因が中小規模農家の経済的安定を脅かす形で作用すれば、国内生産のみならず、輸出能力にも悪影響を及ぼすでしょう。
将来的には、飼養頭数の適切な管理と地域環境の持続可能性を両立させる政策が求められるでしょう。例えば、飼料供給の強化や耐乾性に優れた品種の普及、農村部と都市市場を結ぶ輸送インフラの整備などが挙げられます。また、地域間協力の枠組みを設け、近隣諸国と共にヤギ生産や資源管理のノウハウを共有することも効果的だと考えられます。
結論として、インドは長年にわたり、ヤギ飼養において世界的に重要な地位を占める国として飛躍しています。一方、地球温暖化や人口増加がもたらす複合的な課題には慎重かつ積極的に対応する必要があります。地元農家や畜産業界、そして国際機関が協力することで、インドのヤギ生産がより持続可能かつ効率的になることが期待されます。このような枠組みの導入により、国内外における需要拡大に応えると同時に、将来の環境負荷を軽減する道筋を描くことが可能です。