国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新した最新データによれば、中国、台湾中国省のナシ生産量は1961年の963トンという小規模な生産量から始まり、その後急速な成長を遂げ1970年代には10万トンを突破しました。しかし、1980年代後半からは増減を繰り返し、21世紀に入って以降は横ばい、もしくはやや減少傾向が見られます。2023年のナシ生産量は102,200トンで、ピーク時の2009年(153,450トン)に比べ減少傾向が鮮明です。このような生産推移は、地域の農業政策、気候の変化、経済状況などの複雑な要因が絡み合った結果と考えられます。
中国、台湾 中国省のナシ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 102,200 |
0.69% ↑
|
2022年 | 101,500 |
-0.73% ↓
|
2021年 | 102,244 |
0.78% ↑
|
2020年 | 101,450 |
11.44% ↑
|
2019年 | 91,032 |
-23.28% ↓
|
2018年 | 118,649 |
0.81% ↑
|
2017年 | 117,694 |
5.63% ↑
|
2016年 | 111,424 |
-12.28% ↓
|
2015年 | 127,016 |
-5.6% ↓
|
2014年 | 134,549 |
23.32% ↑
|
2013年 | 109,105 |
-20.89% ↓
|
2012年 | 137,911 |
-8.07% ↓
|
2011年 | 150,013 |
-14.21% ↓
|
2010年 | 174,858 |
13.95% ↑
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2009年 | 153,450 |
10.89% ↑
|
2008年 | 138,381 |
-8.01% ↓
|
2007年 | 150,429 |
18.8% ↑
|
2006年 | 126,628 |
11.88% ↑
|
2005年 | 113,183 |
-9.36% ↓
|
2004年 | 124,873 |
2.24% ↑
|
2003年 | 122,138 |
-0.67% ↓
|
2002年 | 122,957 |
22.27% ↑
|
2001年 | 100,565 |
-11.45% ↓
|
2000年 | 113,568 |
-3.35% ↓
|
1999年 | 117,510 |
2.25% ↑
|
1998年 | 114,920 |
-4.9% ↓
|
1997年 | 120,837 |
-5.38% ↓
|
1996年 | 127,703 |
11.29% ↑
|
1995年 | 114,744 |
-1.09% ↓
|
1994年 | 116,014 |
8.73% ↑
|
1993年 | 106,704 |
9.36% ↑
|
1992年 | 97,574 |
-23.47% ↓
|
1991年 | 127,495 |
-1.97% ↓
|
1990年 | 130,056 |
-4.86% ↓
|
1989年 | 136,700 |
48.89% ↑
|
1988年 | 91,810 |
-27.3% ↓
|
1987年 | 126,292 |
14.09% ↑
|
1986年 | 110,691 |
-8.2% ↓
|
1985年 | 120,581 |
-1.26% ↓
|
1984年 | 122,124 |
10.88% ↑
|
1983年 | 110,141 |
4.16% ↑
|
1982年 | 105,744 |
-10.54% ↓
|
1981年 | 118,199 |
3.09% ↑
|
1980年 | 114,658 |
-3.6% ↓
|
1979年 | 118,942 |
19.17% ↑
|
1978年 | 99,807 |
6.44% ↑
|
1977年 | 93,770 |
1.26% ↑
|
1976年 | 92,605 |
22.79% ↑
|
1975年 | 75,418 |
-7.84% ↓
|
1974年 | 81,838 |
58.59% ↑
|
1973年 | 51,605 |
25.83% ↑
|
1972年 | 41,012 |
16.57% ↑
|
1971年 | 35,181 |
48.14% ↑
|
1970年 | 23,749 |
19.09% ↑
|
1969年 | 19,942 |
-3.97% ↓
|
1968年 | 20,767 |
112.1% ↑
|
1967年 | 9,791 |
161.72% ↑
|
1966年 | 3,741 |
13.5% ↑
|
1965年 | 3,296 |
37.85% ↑
|
1964年 | 2,391 |
117.17% ↑
|
1963年 | 1,101 |
18.13% ↑
|
1962年 | 932 |
-3.22% ↓
|
1961年 | 963 | - |
台湾中国省のナシ生産量は、1961年の963トンから1980年代半ばにかけて急速に拡大しました。この躍進は、中国全体で進められた農業改革、生産技術の改良、人口増加に伴う食料需要の拡大が背景にあります。特に1960年代後半から1970年代にかけては、農業技術の導入と土地利用の改善による生産効率向上が顕著であり、1967年以降、生産量は10年間で実に約10倍に達しました。ただし、1975年から1982年の間では生産量に小規模な変動が見られ、この間の気候条件の変化や輸出需要の影響が示唆されます。
1980年代後半になると生産量の増加率は鈍化し、1990年代からは緩やかな下降傾向を示しました。この変化の背景には、経済成長に伴う農村から都市部への人口移動があり、農地や農業労働力の減少が課題として浮上しました。また、気候変動が地方の農業生産に与える影響も見逃せません。洪水や干ばつなどの自然災害の頻発によって農作物の収穫量が著しく左右されることが、データからも窺えます。
21世紀に入り、2010年代の生産量はピークを迎えた後、減少傾向に転じました。この減少の一因として、農家の高齢化、農地面積の縮小、競争力の低下が挙げられます。さらに2020年以降、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが物流や国際貿易に大きな混乱をもたらし、それに伴う農産物市場への影響も生産量低迷に拍車をかけました。2023年も生産量は102,200トンと、ピーク時から大幅に減少しています。
現在の台湾中国省のナシ生産には、いくつかの課題が存在します。まず、気候変動による生産環境の劣化を挙げることができます。地球温暖化による気温上昇や降水量変動は、果物の品質や収穫量に直接影響を与えます。次に、農家の高齢化や農業労働力不足の問題も無視できません。人口構造の変化に伴い若年層の農業離れが進み、農業全体の持続可能性が懸念されています。また、国際市場での競争力確保にも課題があり、近隣諸国による低コストでの果物生産が輸出競争力を脅かしています。
これらを踏まえ、将来的な対策として、まず農業技術の再革新が必要です。たとえば、IoT(モノのインターネット)やAIを活用したスマート農業技術の導入が期待されます。これにより、収穫効率や品質管理が向上し、気候変動の影響を抑えることが可能になります。また、若年層の農業参入を促進するための施策も求められます。補助金や教育プログラムの充実を通じた若手農家支援が、将来的な労働力確保につながるでしょう。さらに、地域ブランド化を推進し、品質を重視したプレミアム市場への参入も一つの戦略です。
総じて、台湾中国省のナシ生産は、過去からの急速な成長を経て、現在では停滞期にあると言えます。しかし、テクノロジーの革新、農業政策の最適化、地域経済との連携が進めば、持続可能な生産体制の構築が可能です。FAOのデータが示す現状を基に、国家や地域が実効性の高い対策を講じることが求められます。これらの活動を国際的な協力体制の下で行うことで、今後の食料安全保障と経済発展に積極的に貢献していくことが可能だと考えられます。