国際連合食糧農業機関(FAO)が公開した最新のデータによれば、中国および台湾 中国省の桃(モモ)・ネクタリン生産量は、1961年から2023年にかけて大きな変動を示しています。初期の1960年代では2000トン台で推移していたものの、その後拡大を続け、1970年代半ばには著しい増加を記録しました。その後、1990年代以降は数万トン台で安定的に推移していましたが、2016年以降、生産量は減少傾向にありました。2023年時点では16,500トンと、過去数十年のピークと比較するとかなり低い水準にあります。
中国、台湾 中国省の桃(モモ)・ネクタリン生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 16,500 |
-3.33% ↓
|
2022年 | 17,068 |
3.24% ↑
|
2021年 | 16,533 |
2.67% ↑
|
2020年 | 16,103 |
-0.42% ↓
|
2019年 | 16,171 |
-28.15% ↓
|
2018年 | 22,506 |
-3.22% ↓
|
2017年 | 23,254 |
3.67% ↑
|
2016年 | 22,430 |
-20.89% ↓
|
2015年 | 28,354 |
-1.13% ↓
|
2014年 | 28,677 |
5.6% ↑
|
2013年 | 27,156 |
-6.78% ↓
|
2012年 | 29,130 |
-1.98% ↓
|
2011年 | 29,719 |
4.84% ↑
|
2010年 | 28,348 |
-1.7% ↓
|
2009年 | 28,838 |
-1.67% ↓
|
2008年 | 29,329 |
3.14% ↑
|
2007年 | 28,435 |
-0.26% ↓
|
2006年 | 28,508 |
11.94% ↑
|
2005年 | 25,468 |
-13.62% ↓
|
2004年 | 29,482 |
-5.7% ↓
|
2003年 | 31,265 |
6.47% ↑
|
2002年 | 29,366 |
21.01% ↑
|
2001年 | 24,267 |
-2.62% ↓
|
2000年 | 24,919 |
6.51% ↑
|
1999年 | 23,395 |
-14.04% ↓
|
1998年 | 27,215 |
-9.67% ↓
|
1997年 | 30,129 |
14.07% ↑
|
1996年 | 26,413 |
20.73% ↑
|
1995年 | 21,877 |
-41.82% ↓
|
1994年 | 37,605 |
31.62% ↑
|
1993年 | 28,571 |
5.55% ↑
|
1992年 | 27,069 |
-6.93% ↓
|
1991年 | 29,085 |
-0.19% ↓
|
1990年 | 29,140 |
4.53% ↑
|
1989年 | 27,877 |
33.28% ↑
|
1988年 | 20,916 |
-2.28% ↓
|
1987年 | 21,404 |
14.89% ↑
|
1986年 | 18,630 |
7.86% ↑
|
1985年 | 17,273 |
13.7% ↑
|
1984年 | 15,192 |
44.6% ↑
|
1983年 | 10,506 |
-17.21% ↓
|
1982年 | 12,690 |
-14.67% ↓
|
1981年 | 14,871 |
-2.15% ↓
|
1980年 | 15,198 |
-8.05% ↓
|
1979年 | 16,528 |
51.56% ↑
|
1978年 | 10,905 |
-21.99% ↓
|
1977年 | 13,979 |
15.84% ↑
|
1976年 | 12,067 |
77.56% ↑
|
1975年 | 6,796 |
3.28% ↑
|
1974年 | 6,580 |
1.14% ↑
|
1973年 | 6,506 |
0.31% ↑
|
1972年 | 6,486 |
23.9% ↑
|
1971年 | 5,235 |
40.12% ↑
|
1970年 | 3,736 |
-2.3% ↓
|
1969年 | 3,824 |
-7.03% ↓
|
1968年 | 4,113 |
23.14% ↑
|
1967年 | 3,340 |
11.89% ↑
|
1966年 | 2,985 |
-9.65% ↓
|
1965年 | 3,304 |
21.38% ↑
|
1964年 | 2,722 |
-7.13% ↓
|
1963年 | 2,931 |
24.94% ↑
|
1962年 | 2,346 |
-0.89% ↓
|
1961年 | 2,367 | - |
桃およびネクタリンの栽培は、中国の気候条件や農業技術の発展と密接に関連してきました。1960年代から1970年代にかけての増加は、農業生産性の向上、および農地拡大によるものと考えられます。特に1970年代後半は生産量が飛躍的に増加しており、これは当時の経済改革の影響と、農業部門への設備投資の増加が寄与したものと理解されます。このころ、中国では食料生産を基盤とした経済成長が重視されていたため、農作物全般での生産量が上昇していました。
しかし、1990年代半ば以降、一部の年で生産量が減少する傾向が見られます。気候条件の変動、あるいは農業以外の産業への労働力移行が影響している可能性があります。また、2016年以降の顕著な低下は、主に農業土地の都市開発への転用や気候変動による農産物収量の影響により説明できます。桃の栽培には比較的安定した気候条件が必要ですが、旱魃や集中豪雨など極端な気象現象が増加したことがこれを阻害したと考えられます。
さらに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックも近年の農業生産に間接的な影響を与えています。労働力の不足、物流の混乱、安全基準の変更などが連鎖的に農業生産を抑制しました。
また、中国国内の食生活の多様化や消費者ニーズの変化も見逃せない要因です。以前は広く消費されていた桃やネクタリンが、現在では他の生鮮果実や輸入品によって市場シェアを一部奪われているかもしれません。このため過剰供給を避ける目的で生産を抑える動きもあると推測されます。
一方、他国と比較すると、中国は依然として世界的な桃・ネクタリン生産の主要国とされています。アメリカやイタリアなどが主要輸出国として知られていますが、これらの国々でも様々な気候・環境要因から同様の課題に直面する可能性があります。
この現状に対処するには、いくつかの具体的な方策が考えられます。まず、気候変動に対する適応力を高めるための技術革新が必要です。例えば、桃に適した耐旱性が強い品種の開発や温室技術の応用が挙げられます。また、農業経済の持続可能性を確保するには、国内市場の需要拡大とともに、世界市場への輸出戦略を見直すことが求められます。これには、品質の向上、物流インフラの整備、中国産果実のブランド価値の強化が含まれます。
さらに、農家の所得確保を目的とした政策も不可欠です。補助金や価格安定策を通して農業従事者を支援し、都市部への労働力流出を緩和することが予防策の一つとなるでしょう。
結論として、中国および台湾 中国省の桃およびネクタリンの生産量推移は、農業現場だけでなく、広範な社会経済的要因に深く影響されています。減少傾向を逆転させるには、政策的支援、イノベーションの導入、さらには地域間や国際間での連携が重要です。これらの取り組みによって、果実生産の安定を図り、地域経済の強化と食料安全保障への貢献が期待されます。