スリランカのレモン・ライム生産量推移（1961年～2023年）

Food and Agriculture Organization（FAO）が発表した最新データによると、スリランカのレモン・ライム生産量は1960年代に安定した増加を見せましたが、1980年代後半から著しい減少が見られ、2000年代には大幅な低迷が続きました。しかし、2020年以降、特に2020年には大きな増加が観測され、その後再び減少傾向に転じつつも2023年には14,041トンとなっています。この変動には国内外の様々な要因が影響していると考えられます。

スリランカにおけるレモン・ライム生産量の推移を見ると、1960年代から1970年代半ばまでは年間20,000～55,000トンと比較的安定した成長を遂げていました。この時期は経済成長や農業技術の発展による増産が続き、特に1974年の54,612トンや1978年の55,209トンと、多くの年度で記録的な生産量が達成されています。しかし、1980年代後半から顕著な減少が始まり、1988年にはわずか17,586トンと1970年代のピーク時に比べて約3分の1に減少しました。この背景には、スリランカ国内の社会的不安や内戦の影響が少なからず関与していると考えられます。

2000年代に入ると、生産量はさらに低迷し、2003年から2015年の間はおよそ4,000～7,000トンという極めて低い水準で推移しました。この期間、特にレモン・ライム農家が直面した課題として、気候変動による降雨量の変動や長引く干ばつ、農業インフラの未整備が挙げられます。同時に、輸出用の作物や茶などの伝統的主要作物への依存度が高いため、柑橘類のような比較的小規模な特産品は政策上の優先順位が低かったことも影響している可能性があります。

2020年には生産量が19,558トンと急増し、その後2021年から2023年にかけて再び減少しつつも13,263～16,651トンの間で推移しています。2020年の増産の背景には、パンデミック時に国内消費向け農産物の需要増加があったと推測されます。特にレモン・ライムに含まれるビタミンCの効能が注目され、健康志向の高まりと結びついた可能性があります。しかしながらパンデミック後の経済回復が予想よりも緩やかであったことで、2022年には生産量がさらに減少しています。

スリランカの現状を見ると、農業基盤の強化が必要不可欠です。長引く低迷から脱却し、持続可能な生産を目指すには、まず農家への技術支援や研修プログラムを通じて、気候変動に強い作物栽培技術を普及させることが重要です。また、灌漑システムや肥料供給などのインフラ整備も急務です。さらに、国内需要の活性化に向けたマーケティング戦略の強化や、輸出市場向けに高品質な製品を提供する仕組みの確立も効果的です。

地政学的には、スリランカはインド洋という戦略的に重要な場所に位置しています。このため、グローバル市場へのアクセスは実質的に確保されていますが、紛争による物流網への影響や、国際的な貿易摩擦は引き続き注意が必要です。また、風土病や自然災害に対しても、農業コミュニティ全体のリスク管理能力を向上させる必要があります。

結論として、スリランカがこの産業を再活性化させたい場合、政府主導の政策支援に加えて地域社会との連携が不可欠です。国際市場における競争力を高めるための計画的な輸出促進や、持続可能な農業実践の推進が、今後の課題解決の糸口となるでしょう。長期的な視点に立った包括的なアプローチが求められます。