国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、スリランカにおけるヤギ飼養頭数の推移は、1960年代から小規模な波を描きながら増減を繰り返し、特に2000年代以降には大幅な減少傾向が見られます。1961年に491,810頭だった飼養頭数は、1978年で一時的に449,998頭に減少、その後1990年代にかけて回復しましたが、2002年に大幅減少(351,382頭)がありました。その後、2015年以降も低迷するものの、2021年と2022年にはやや回復が確認されています。最新データの2022年では365,790頭となり、盤石とはいえないながらも持続的な改善の兆しが見られます。
スリランカのヤギ飼養頭数推移(1961-2022)
年度 | 飼養頭数(頭) |
---|---|
2022年 | 365,790 |
2021年 | 361,740 |
2020年 | 334,430 |
2019年 | 313,640 |
2018年 | 314,800 |
2017年 | 287,190 |
2016年 | 266,750 |
2015年 | 309,160 |
2014年 | 299,050 |
2013年 | 331,150 |
2012年 | 383,450 |
2011年 | 375,275 |
2010年 | 373,465 |
2009年 | 377,460 |
2008年 | 376,800 |
2007年 | 388,600 |
2006年 | 381,550 |
2005年 | 394,960 |
2004年 | 405,390 |
2003年 | 414,900 |
2002年 | 351,382 |
2001年 | 492,600 |
2000年 | 495,200 |
1999年 | 514,400 |
1998年 | 519,300 |
1997年 | 520,700 |
1996年 | 535,200 |
1995年 | 591,100 |
1994年 | 587,800 |
1993年 | 582,600 |
1992年 | 502,455 |
1991年 | 460,000 |
1990年 | 521,700 |
1989年 | 518,300 |
1988年 | 510,200 |
1987年 | 502,500 |
1986年 | 583,600 |
1985年 | 539,600 |
1984年 | 535,000 |
1983年 | 519,300 |
1982年 | 511,600 |
1981年 | 512,200 |
1980年 | 492,600 |
1979年 | 461,000 |
1978年 | 449,998 |
1977年 | 545,118 |
1976年 | 562,190 |
1975年 | 546,651 |
1974年 | 547,306 |
1973年 | 549,347 |
1972年 | 561,782 |
1971年 | 546,277 |
1970年 | 556,362 |
1969年 | 542,587 |
1968年 | 584,432 |
1967年 | 579,896 |
1966年 | 589,843 |
1965年 | 600,016 |
1964年 | 567,431 |
1963年 | 538,076 |
1962年 | 453,812 |
1961年 | 491,810 |
スリランカのヤギ飼養頭数の推移を時系列で見ると、国内の農業および畜産業の動向や社会経済的要因が大きく反映されていることがわかります。1960年代から1970年代は比較的安定した増加傾向を示しており、1965年には600,016頭というピークを迎えます。しかし、1970年代後半から減少に転じ、1978年では449,998頭まで減少しました。この減少の背景には、農業政策の変更や紛争などの地政学的な要因が影響した可能性が高いと考えられます。特に1970年代後半の減少は、スリランカ内戦の勃発(1983年)を前に、地域的な緊張や社会不安が畜産業に間接的な影響を与え始めた結果と思われます。
1990年代には一時的に回復傾向がみられ、1995年には591,100頭と再び高い水準に達しています。しかし、その後、2002年の351,382頭への急減は注目に値します。この急減の理由としては、内戦下でのインフラ破壊や農村地域における生産活動の停滞が挙げられます。また、この時期は気候変動の影響やエルニーニョ現象による干ばつの発生が食糧供給と家畜管理に打撃を与えたとも推測されます。
2000年代後半から2015年までの期間では、飼養頭数の低迷が続き、2013年にはわずか331,150頭、2014年には299,050頭とさらに減少しました。この傾向は、都市化の進行や農産業の収益性低下、若年層の農村離れなどが一因と考えられます。近年の回復傾向は注目に値し、2021年には361,740頭、2022年には365,790頭となっています。この増加の背景には、政府と国際機関が協力して行った農業促進政策や畜産支援プログラムの効果がみられます。
地域別にみると、スリランカ北部や東部の農村地域が特に影響を受けていることが考えられます。これらの地域は長らく内戦の影響を受け、インフラが復興途上にあるため、畜産業の効率的な再活性化に課題が残っています。さらに、ヤギは災害や疫病への耐性が比較的高い動物ではありますが、近年の気候変動による異常気象や洪水が飼育環境に悪影響を及ぼしていると推測されます。
これらの課題を克服するためには、現地の畜産農家への技術支援が重要です。具体的には、ヤギの健康状態を維持するためのワクチン接種の推進や、適切な牧草地の整備を計画的に進める必要があります。また、小規模農家に対する金融支援や低金利の融資を提供し、飼育設備や餌の購入に充てられる環境を整備することが急務です。さらに、気候変動に対応した飼育技術や耐性の高いヤギの品種改良にも投資すべきです。
将来的には、地域内の協力体制を強化し、近隣諸国のインドやバングラデシュといった畜産業が発展している国々と技術交流を行うことで、スリランカ全体の畜産基盤を強化することが考えられます。また、国際市場への輸出を視野に入れるため、ヤギ肉や乳製品の加工技術を向上させることも重要です。こうした取り組みは、スリランカの農業経済の回復と持続可能な発展に寄与すると期待されます。
現状のデータは、スリランカにおけるヤギ飼養が数々の挑戦を抱えながらも、回復基調にあることを示しています。しかし、この回復を持続させ、長期的な安定成長に結びつけるためには、地政学的背景や自然環境のリスクに対処しつつ、戦略的な政策を実行していく必要があるでしょう。