FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、スリランカのヤギ肉生産量は1961年に2,500トンだったのに対し、2023年には2,750トンとなり、長期的に見るとわずかに増加しています。しかし、この62年間の間に大きな変動が見られ、とりわけ1990年代以降の生産量減少が顕著でした。その後、2010年代以降は緩やかに回復し、2020年代に再び大きな増加を示しています。この変動の背景には、内戦、経済危機、農業政策、気候変動などが影響を与えている可能性があります。
スリランカのヤギ肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 2,750 |
2.61% ↑
|
2022年 | 2,680 |
7.2% ↑
|
2021年 | 2,500 |
27.55% ↑
|
2020年 | 1,960 |
8.29% ↑
|
2019年 | 1,810 |
11.04% ↑
|
2018年 | 1,630 |
-6.32% ↓
|
2017年 | 1,740 |
24.29% ↑
|
2016年 | 1,400 |
3.7% ↑
|
2015年 | 1,350 |
20.54% ↑
|
2014年 | 1,120 |
-13.18% ↓
|
2013年 | 1,290 |
-11.64% ↓
|
2012年 | 1,460 |
6.18% ↑
|
2011年 | 1,375 |
0.36% ↑
|
2010年 | 1,370 |
9.6% ↑
|
2009年 | 1,250 |
7.76% ↑
|
2008年 | 1,160 |
-9.38% ↓
|
2007年 | 1,280 |
-13.51% ↓
|
2006年 | 1,480 |
-0.67% ↓
|
2005年 | 1,490 |
4.2% ↑
|
2004年 | 1,430 |
1.42% ↑
|
2003年 | 1,410 |
-12.42% ↓
|
2002年 | 1,610 |
1.9% ↑
|
2001年 | 1,580 |
-6.51% ↓
|
2000年 | 1,690 |
2.42% ↑
|
1999年 | 1,650 |
2.48% ↑
|
1998年 | 1,610 |
-15.71% ↓
|
1997年 | 1,910 |
-2.55% ↓
|
1996年 | 1,960 |
-14.45% ↓
|
1995年 | 2,291 |
-10.86% ↓
|
1994年 | 2,570 |
17.89% ↑
|
1993年 | 2,180 |
11.79% ↑
|
1992年 | 1,950 |
23.42% ↑
|
1991年 | 1,580 |
-3.66% ↓
|
1990年 | 1,640 |
-8.38% ↓
|
1989年 | 1,790 |
-13.53% ↓
|
1988年 | 2,070 |
-8% ↓
|
1987年 | 2,250 |
-7.02% ↓
|
1986年 | 2,420 |
-15.68% ↓
|
1985年 | 2,870 |
-4.65% ↓
|
1984年 | 3,010 |
12.31% ↑
|
1983年 | 2,680 |
-17.79% ↓
|
1982年 | 3,260 |
18.98% ↑
|
1981年 | 2,740 |
0.37% ↑
|
1980年 | 2,730 |
10.53% ↑
|
1979年 | 2,470 |
-2.37% ↓
|
1978年 | 2,530 |
-1.17% ↓
|
1977年 | 2,560 |
-3.76% ↓
|
1976年 | 2,660 |
-5.67% ↓
|
1975年 | 2,820 |
2.77% ↑
|
1974年 | 2,744 |
10.2% ↑
|
1973年 | 2,490 |
9.69% ↑
|
1972年 | 2,270 |
-7.35% ↓
|
1971年 | 2,450 |
-5.77% ↓
|
1970年 | 2,600 |
3.59% ↑
|
1969年 | 2,510 |
-14.04% ↓
|
1968年 | 2,920 |
-9.03% ↓
|
1967年 | 3,210 |
15.47% ↑
|
1966年 | 2,780 |
-0.71% ↓
|
1965年 | 2,800 |
8.53% ↑
|
1964年 | 2,580 |
6.61% ↑
|
1963年 | 2,420 |
-1.63% ↓
|
1962年 | 2,460 |
-1.6% ↓
|
1961年 | 2,500 | - |
スリランカのヤギ肉生産量の推移は、単に農業生産の事情を示すだけでなく、同国の経済、気候、社会的状況の影響を反映していると考えられます。特に注目すべきは、1970年代後半から1980年代末にかけての安定期の後、1990年代に入って生産量が急激に減少した点です。この期間は、スリランカ内戦が激化していた時期と一致します。内戦は農村地域を中心に経済活動に大きな混乱をもたらし、畜産業もその影響を強く受けたと推測されます。
1990年代後半から2000年代にかけても生産量は低調で推移しています。この時期、農村経済の再建や家畜管理の技術的支援が不足していた可能性が高いです。また、気候変動による干ばつや洪水などの影響も、生産低迷の要因として考えられます。このような環境的・経済的制約により、ヤギの飼育が困難になり、生産量に直接影響を及ぼしました。
一方で、2010年代以降には生産量がゆるやかに回復を見せ、2020年代には目覚ましい増加が見られます。特に、2020年以降の増加は顕著で、コロナ禍や経済低迷にもかかわらず、2023年には2,750トンと過去最高を記録しました。この背景には、国内での食料安全保障への関心の高まりや、政府や国際機関による家畜支援プロジェクトが貢献した可能性があります。さらに、ヤギ肉が健康的で環境負荷の少ない動物性タンパク源として注目される中、その需要が増加していることも影響していると思われます。
しかしながら、2023年現在でも生産量の変動幅は大きく、持続的な生産基盤が整っているとは言い難い状況です。今後の主要な課題として、まず気候変動の影響を軽減するための農家支援を挙げることができます。例えば、干ばつ耐性の高い品種の導入や効率的な水資源管理を進めることは、安定的な飼育環境の整備に寄与するでしょう。また、内戦後の農村部のインフラ整備や、飼育管理技術に関する教育プログラムの普及も改善に寄与する重要な要素と考えられます。
他国と比較すると、スリランカのヤギ肉生産量はアジア諸国全体の中では比較的小規模です。例えば、インドではヤギ肉生産量が何十万トン規模に達しており、ヤギ肉は多くの地域で食文化の重要な一部を担っています。これに対しスリランカでは、経済的要因や文化的側面から生産規模が制限されている可能性があります。これを踏まえ、地域間の連携を促進し、近隣諸国から技術と資源の輸入を図ることで、生産効率の向上を支えることが可能となるでしょう。
最後に、地政学的なリスクにも目を向ける必要があります。スリランカはその地理的な要因から、インド洋地域の物流や農産物貿易にとって重要な拠点でもあります。将来的には、これを活かした農業輸出の拡大を視野に入れ、ヤギ肉の国際市場での競争力を高めるべきです。そのためには品質管理の強化や国際基準への適合も重要となります。
まとめると、スリランカのヤギ肉生産量推移は歴史的背景、経済、気候変動、政策支援といった複合的な要因に影響を受けています。安定した生産量を実現するためには、気候変動対策、農村支援、技術革新、地域間協力の深化といった具体的な取り組みが必要です。国際社会との連携も加速することで、中長期的な生産の向上と自給自足の確立が期待されます。