国連食糧農業機関(FAO)の最新データによると、スリランカの羊飼養数は過去60年以上にわたり大きな減少を見せています。最も高い値を示した1961年の65,875匹から2022年の12,200匹まで約5分の1に縮小しました。一時的な増加の兆候はみられるものの、長期的には減少傾向が続いています。この推移には、地政学的リスク、気候変動の影響、農業における政策変更など、複数の要因が関係していると考えられます。
スリランカの羊飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(匹) |
---|---|
2022年 | 12,200 |
2021年 | 12,010 |
2020年 | 11,290 |
2019年 | 11,554 |
2018年 | 11,382 |
2017年 | 10,389 |
2016年 | 8,300 |
2015年 | 7,700 |
2014年 | 11,040 |
2013年 | 9,480 |
2012年 | 9,170 |
2011年 | 8,260 |
2010年 | 7,910 |
2009年 | 8,000 |
2008年 | 10,450 |
2007年 | 16,480 |
2006年 | 13,620 |
2005年 | 10,290 |
2004年 | 11,480 |
2003年 | 8,900 |
2002年 | 9,000 |
2001年 | 11,700 |
2000年 | 11,200 |
1999年 | 12,100 |
1998年 | 11,800 |
1997年 | 10,600 |
1996年 | 11,400 |
1995年 | 19,000 |
1994年 | 20,200 |
1993年 | 19,500 |
1992年 | 17,069 |
1991年 | 20,300 |
1990年 | 26,000 |
1989年 | 29,800 |
1988年 | 28,000 |
1987年 | 27,500 |
1986年 | 29,100 |
1985年 | 26,600 |
1984年 | 28,800 |
1983年 | 28,600 |
1982年 | 28,000 |
1981年 | 29,500 |
1980年 | 28,000 |
1979年 | 24,400 |
1978年 | 22,541 |
1977年 | 27,378 |
1976年 | 29,669 |
1975年 | 27,654 |
1974年 | 29,985 |
1973年 | 27,343 |
1972年 | 28,813 |
1971年 | 28,737 |
1970年 | 26,297 |
1969年 | 28,260 |
1968年 | 24,819 |
1967年 | 24,593 |
1966年 | 25,930 |
1965年 | 34,586 |
1964年 | 36,509 |
1963年 | 32,867 |
1962年 | 49,363 |
1961年 | 65,875 |
スリランカにおける羊飼養数の歴史的な動向を見ると、そのピークは1961年に記録された65,875匹でありました。それ以降、急激な減少が起こり、1970年代には3万匹前後で安定するようになりました。しかしながら、1980年代に入ってもその減少傾向は続き、1990年代には2万匹を下回る年が散見されるようになり、2000年代にはさらに減少が加速し、1万匹前後まで落ち込みました。近年、2022年には12,200匹を記録し、わずかながら回復の兆候が見られるものの、長期的な減少トレンドを覆すには至っていません。
この減少傾向には、いくつかの大きな課題が関係していると考えられます。まず、地政学的な背景が影響を及ぼしたといえるでしょう。スリランカでは30年以上続いた内戦(1983年から2009年)が農牧業全体に大きな壊滅的影響をもたらし、特に紛争地域では家畜の放牧が制限されるなどの問題が発生しました。また、気候変動による干ばつや洪水などの自然災害も羊飼養に適した環境に悪影響を与え、牧草や水源の不足を引き起こしています。
さらに、農業政策がこの動向に大きく関与していることも見逃せません。スリランカの農業は、米や茶といった主要農産物に重点が置かれており、羊などの家畜の牧畜は政策の優先順位が低い傾向にあります。その結果、家畜の飼養に必要な資源や技術の投入が減少し、効率的な飼養が難しくなってきました。また、家畜病の発生や、高齢化する農村コミュニティで後継者不足が進むことも、羊の飼養数減少の一因とされています。
スリランカの羊飼養数が将来的に回復するには、いくつかの具体的な対策を講じる必要があります。まずは、小規模農家が収益性を向上させるための支援プログラムを導入することが急務です。例えば、家畜を効率的に管理するための教育や技術提供、飼料や水資源の安定的な供給を目指す農業インフラ整備などが重要です。また、気候変動への対応策として、干ばつ対策や災害時の家畜保護計画を策定することも考えられます。
さらに、羊肉や羊毛といった製品の需要を国内外で拡大するマーケティング政策の策定も欠かせません。そのためには、隣接するインド市場への輸出強化、持続可能な観光農場の展開を通じたブランド化など、経済的な視点からのアプローチが有益です。これらの施策を国際機関と連携しながら推進することで、長期的な減少傾向を食い止めることが可能となるでしょう。
地政学的な安定性を確保し、農村経済の活性化を目指すことは、単に羊の数を増やすだけでなく、スリランカの農業全般の持続可能な発展にも寄与します。新たな牧畜技術の導入を含め、具体的な支援策が実現すれば、将来的にこの問題を解決する道筋を見出すことができるはずです。国際社会や地域間の協力も含め、今後の一層の取り組みに期待がかかります。