Food and Agriculture Organization(FAO)が提供する最新データ(2024年7月更新)によると、スリランカの馬飼養数は1961年の3,000頭をピークとして以降減少傾向にあります。1973年から約40年間1,500頭で推移した後、2011年以降再び減少が始まり、2022年には1,223頭となっています。この大幅な減少傾向は、畜産業および農業の変化、地政学的要因、人々の生活様式の変化など、さまざまな要因に起因している可能性があります。
スリランカの馬飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 1,223 |
2021年 | 1,244 |
2020年 | 1,265 |
2019年 | 1,288 |
2018年 | 1,331 |
2017年 | 1,344 |
2016年 | 1,356 |
2015年 | 1,368 |
2014年 | 1,380 |
2013年 | 1,390 |
2012年 | 1,400 |
2011年 | 1,450 |
2010年 | 1,500 |
2009年 | 1,500 |
2008年 | 1,500 |
2007年 | 1,500 |
2006年 | 1,500 |
2005年 | 1,500 |
2004年 | 1,500 |
2003年 | 1,500 |
2002年 | 1,500 |
2001年 | 1,500 |
2000年 | 1,500 |
1999年 | 1,500 |
1998年 | 1,500 |
1997年 | 1,500 |
1996年 | 1,500 |
1995年 | 1,500 |
1994年 | 1,500 |
1993年 | 1,500 |
1992年 | 1,500 |
1991年 | 1,500 |
1990年 | 1,500 |
1989年 | 1,500 |
1988年 | 1,500 |
1987年 | 1,500 |
1986年 | 1,500 |
1985年 | 1,500 |
1984年 | 1,500 |
1983年 | 1,500 |
1982年 | 1,500 |
1981年 | 1,500 |
1980年 | 1,500 |
1979年 | 1,500 |
1978年 | 1,500 |
1977年 | 1,500 |
1976年 | 1,500 |
1975年 | 1,500 |
1974年 | 1,500 |
1973年 | 1,500 |
1972年 | 1,500 |
1971年 | 1,600 |
1970年 | 1,800 |
1969年 | 1,900 |
1968年 | 2,100 |
1967年 | 2,200 |
1966年 | 2,300 |
1965年 | 2,400 |
1964年 | 2,700 |
1963年 | 2,900 |
1962年 | 3,000 |
1961年 | 3,000 |
スリランカにおける馬飼養数の変動は、国の農業形態および経済発展と密接に関連しています。1961年から1970年代初頭までの急激な減少は、馬が農業や輸送手段として重要だった時期から、機械や新たな輸送手段の導入が進んだ時期として位置づけられます。これに伴い、馬の必要性は大幅に低下し数を減らす結果となりました。そして、1973年から2010年まで約40年間にわたり飼養数が1,500頭で安定していたことから、この時期に一定の馬飼養の需要があったことが考えられます。
2011年以降のさらなる減少は、農業構造の変化だけでなく、都市化、土地利用の変遷、そして馬の維持コストや所得水準の影響を受けている可能性があります。また、スリランカは長年にわたる内戦を経験してきた地域であり、このような地政学的要因も馬飼養活動に直接あるいは間接的に影響を与えていると考えられます。特に内戦による農村部の荒廃や社会不安は、動物飼養の維持に困難をもたらした可能性があります。
また、2020年以降は、新型コロナウイルスの世界的な流行が農業、畜産、観光産業などに多大な影響を与えました。スリランカではパンデミックによる経済的困難が個人及び家庭の維持費にも影響し、大型動物の飼養に対する需要やリソースがさらに減少した可能性があります。
スリランカと比較して、日本やイギリスのような先進国では、馬の飼養は一部の娯楽産業(乗馬や競馬)としての側面が強く、農業用途としてはほとんど行われていません。一方で、インドや中国では一部地域で馬が未だ農業や輸送手段として活用されていますが、それらの数も機械化の進展により減少しています。この点、スリランカも類似の傾向をたどっていますが、他国と比較すると減少速度が緩やかと言えるかもしれません。
将来に向けて、まず課題として挙げられるのは、馬の飼養が減少するこれらの背景が、農村の文化や観光産業などにどのような影響を及ぼすかを慎重に考える必要があることです。観光資源としての馬の使用(例えば伝統行事や農村ツアーの一環での活用)なども今後の一つの可能性として検討できます。また、持続可能な形での馬飼養支援策や、畜産業の再編に向けた政策も必要でしょう。
さらに、地域社会の経済活性化に向け、馬を伝統文化や地域観光の一部として改めて位置づけることが提案されます。具体的には、地域間協力を通じて市場を活性化させる枠組みの検討が課題となります。このような取り組みが、馬の価値を再発見するとともに、農村部の貧困解消や持続的な発展に寄与する可能性があります。地政学的リスクや疫病の影響が馬飼養に与えるリスクも把握しながら、国際協力の枠組みも活用して対応することが重要です。
結論として、スリランカの馬飼養数の推移は農業、経済、文化の変遷を反映しています。今後はその現象をただ受け入れるのではなく、地域のニーズと新たな価値を見出す方向での施策が求められます。国際機関や周辺地域との協力による持続可能な畜産政策の構築と、それを観光や文化の振興に活かす仕組み作りが未来への鍵となるでしょう。