国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、モザンビークのカシューナッツ生産量は2023年に157,496トンに達し、過去数十年間で大きな変動を経て近年持続可能な成長を見せています。最盛期である1973年の240,000トンに比べれば依然として低いものの、1980年代の深刻な低迷から脱却し、2000年代以降回復傾向が続いています。この回復は政府の政策支援や国際需要の増加を背景に進行しています。
モザンビークのカシューナッツ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 157,496 |
8.75% ↑
|
2022年 | 144,823 |
0.99% ↑
|
2021年 | 143,398 |
0.28% ↑
|
2020年 | 143,000 |
2.14% ↑
|
2019年 | 140,000 |
7.69% ↑
|
2018年 | 130,000 |
-6.53% ↓
|
2017年 | 139,088 |
33.51% ↑
|
2016年 | 104,179 |
28.24% ↑
|
2015年 | 81,240 |
28.79% ↑
|
2014年 | 63,080 |
-24% ↓
|
2013年 | 83,000 |
28.22% ↑
|
2012年 | 64,731 |
-42.61% ↓
|
2011年 | 112,796 |
16.82% ↑
|
2010年 | 96,558 |
50.87% ↑
|
2009年 | 64,000 |
-24.71% ↓
|
2008年 | 85,000 |
14.25% ↑
|
2007年 | 74,395 |
18.42% ↑
|
2006年 | 62,821 |
-39.79% ↓
|
2005年 | 104,337 |
142.71% ↑
|
2004年 | 42,988 |
-32.64% ↓
|
2003年 | 63,818 |
27.19% ↑
|
2002年 | 50,177 |
-13.49% ↓
|
2001年 | 58,000 |
0.18% ↑
|
2000年 | 57,894 |
-1.41% ↓
|
1999年 | 58,720 |
13.58% ↑
|
1998年 | 51,700 |
19.33% ↑
|
1997年 | 43,325 |
-34.86% ↓
|
1996年 | 66,510 |
98.99% ↑
|
1995年 | 33,423 |
45.32% ↑
|
1994年 | 23,000 |
-3.91% ↓
|
1993年 | 23,935 |
-55.85% ↓
|
1992年 | 54,217 |
74.14% ↑
|
1991年 | 31,134 |
38.23% ↑
|
1990年 | 22,524 |
-55.15% ↓
|
1989年 | 50,225 |
11.61% ↑
|
1988年 | 45,000 |
28.57% ↑
|
1987年 | 35,000 |
16.67% ↑
|
1986年 | 30,000 |
20% ↑
|
1985年 | 25,000 |
23.15% ↑
|
1984年 | 20,300 |
-42.98% ↓
|
1983年 | 35,600 |
-41.64% ↓
|
1982年 | 61,000 |
-14.21% ↓
|
1981年 | 71,100 | - |
1980年 | 71,100 |
7.73% ↑
|
1979年 | 66,000 |
8.2% ↑
|
1978年 | 61,000 |
-33.33% ↓
|
1977年 | 91,500 |
-25% ↓
|
1976年 | 122,000 |
-35.11% ↓
|
1975年 | 188,000 |
-11.9% ↓
|
1974年 | 213,400 |
-11.08% ↓
|
1973年 | 240,000 |
20% ↑
|
1972年 | 200,000 |
-0.99% ↓
|
1971年 | 202,000 |
9.78% ↑
|
1970年 | 184,000 |
19.33% ↑
|
1969年 | 154,200 |
-17.05% ↓
|
1968年 | 185,900 |
84.06% ↑
|
1967年 | 101,000 |
-15.13% ↓
|
1966年 | 119,000 |
-12.5% ↓
|
1965年 | 136,000 |
-12.82% ↓
|
1964年 | 156,000 |
4.7% ↑
|
1963年 | 149,000 |
37.96% ↑
|
1962年 | 108,000 |
0.93% ↑
|
1961年 | 107,000 | - |
モザンビークはカシューナッツの生産において伝統的に重要な国の一つです。この国の経済や農業における役割を見ても、過去数十年間の生産量の変動が際立っています。木質作物であるカシューナッツは、同国の農業における重要な輸出製品であり、特に農村部で多くの雇用を生み出す要素でもあります。1960年代から1970年代初頭にかけての生産の増加期には、カシューナッツ生産量が年間20万トンを超えるなど、モザンビークは世界的な生産拠点としての地位を確立しました。1973年には240,000トンというピークに達しましたが、その後は1970年代半ばから1980年代にかけて深刻な生産低下を経験しました。
この長期的な低迷の背景には、独立後の政治的混乱や内戦といった要因が挙げられます。とりわけ1977年から1992年にかけて続いた内戦は、生産基盤に壊滅的な打撃を与えました。カシューナッツ農園の荒廃、インフラの損壊、熟練労働者の不足などが相まって、生産量が1984年にはわずか20,300トンにまで減少しました。また、1980年代後半に始まった自由市場政策も、短期的には農家の負担増加をもたらし、生産回復への障壁となっていました。
しかしながら、2000年代以降、政府の政策転換と国際援助を背景に、生産は徐々に復活を遂げました。例えば、モザンビーク政府はカシューナッツ産業復活計画を採用し、農家への技術指導や市場インフラの整備、外資の誘致などを行いました。また、世界的な健康志向の高まりにより、カシューナッツの国際需要が増加したことも、モザンビークにとって追い風となりました。その結果、過去20年で大きな回復が見られ、2023年には157,496トンに達しました。
ただし、カシューナッツ産業には課題も残されています。第一に、農家レベルでの生産効率の低さが指摘されており、特に肥料や農薬への十分なアクセスが不足している点が挙げられます。また、気候変動も新たなリスク要因であり、特に干ばつが収穫量に与える影響が懸念されています。さらに、国際市場での競争力は他の生産国、特にインドやベトナムに押されており、価格破壊への対応が課題です。
これらの課題に対する具体的な解決策として、まず農家の技能向上と支援の強化が挙げられます。具体的には、農業技術のトレーニングプログラムや、品質管理の向上を目指した認証制度の導入が有効です。また、気候変動への対応として、耐乾性品種の開発や灌漑施設の整備が重要です。一方で、国際市場での競争力強化には、輸出プロセスの効率化やブランド価値の向上が必要です。ここで、モザンビーク独自の有機カシューナッツを特徴とした高付加価値商品開発が、一つの鍵となるでしょう。
総じて、モザンビークのカシューナッツ生産は過去の困難を乗り越え回復基調にありますが、その成長を持続可能なものにするためには、国内外での協力や革新的なアプローチが求められます。今後、関連する国際機関や援助機構がこれらの努力をサポートすることが、モザンビークの農村経済の安定と発展につながると考えられます。