1961年から2023年にかけてのモザンビークにおける羊肉生産量の推移データは、60年以上の間に極めて多様な変動を示しています。特に1960年代から1970年代半ばにかけては生産量が着実に増加し、1975年には960トンとピークを迎えました。しかし、その後は内戦や経済的混乱により急激に減少し、1991年には360トンと大きく落ち込みました。2000年代に入ると緩やかな回復傾向を見せ、2023年には582トンに達していますが、依然としてピーク時の水準には至っていません。
モザンビークの羊肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 582 |
4.11% ↑
|
2022年 | 559 |
15.5% ↑
|
2021年 | 484 |
11.26% ↑
|
2020年 | 435 |
-6.65% ↓
|
2019年 | 466 |
6.64% ↑
|
2018年 | 437 |
13.21% ↑
|
2017年 | 386 |
6.34% ↑
|
2016年 | 363 |
42.45% ↑
|
2015年 | 255 |
-38.4% ↓
|
2014年 | 414 |
-13.42% ↓
|
2013年 | 478 |
4.16% ↑
|
2012年 | 459 |
4.45% ↑
|
2011年 | 439 |
-2.79% ↓
|
2010年 | 452 |
-3.03% ↓
|
2009年 | 466 |
-14.57% ↓
|
2008年 | 545 |
23.47% ↑
|
2007年 | 442 |
34.89% ↑
|
2006年 | 327 |
-27.88% ↓
|
2005年 | 454 |
17.43% ↑
|
2004年 | 387 |
21.79% ↑
|
2003年 | 317 |
-31.21% ↓
|
2002年 | 461 |
10.57% ↑
|
2001年 | 417 |
-1.68% ↓
|
2000年 | 424 |
8.64% ↑
|
1999年 | 391 |
2.55% ↑
|
1998年 | 381 |
-4.64% ↓
|
1997年 | 400 |
-0.4% ↓
|
1996年 | 401 |
-2.79% ↓
|
1995年 | 413 |
-0.38% ↓
|
1994年 | 414 |
1.49% ↑
|
1993年 | 408 |
10.42% ↑
|
1992年 | 370 |
2.67% ↑
|
1991年 | 360 |
-52.38% ↓
|
1990年 | 756 |
1.61% ↑
|
1989年 | 744 |
1.64% ↑
|
1988年 | 732 |
1.67% ↑
|
1987年 | 720 |
1.69% ↑
|
1986年 | 708 |
1.72% ↑
|
1985年 | 696 |
1.75% ↑
|
1984年 | 684 |
1.79% ↑
|
1983年 | 672 |
1.82% ↑
|
1982年 | 660 |
1.85% ↑
|
1981年 | 648 |
3.85% ↑
|
1980年 | 624 | - |
1979年 | 624 |
4% ↑
|
1978年 | 600 |
4.17% ↑
|
1977年 | 576 |
6.67% ↑
|
1976年 | 540 |
-43.75% ↓
|
1975年 | 960 |
28% ↑
|
1974年 | 750 |
14.89% ↑
|
1973年 | 653 |
-17.07% ↓
|
1972年 | 787 |
19.27% ↑
|
1971年 | 660 |
22.22% ↑
|
1970年 | 540 |
7.14% ↑
|
1969年 | 504 |
-12.5% ↓
|
1968年 | 576 |
17.07% ↑
|
1967年 | 492 |
-3.3% ↓
|
1966年 | 509 |
0.95% ↑
|
1965年 | 504 |
7.69% ↑
|
1964年 | 468 |
8.33% ↑
|
1963年 | 432 |
5.88% ↑
|
1962年 | 408 |
9.68% ↑
|
1961年 | 372 | - |
モザンビークの羊肉生産量データは、その時代背景と経済状況を反映して、大きな変動を示しています。1960年代から1970年代にかけて、農村部の基盤整備と牧畜活動の拡大により生産量が堅調に増加し、1975年には960トンを記録しました。しかし、この年を境に国内情勢が不安定化し、1977年に内戦が勃発した影響で、農業や牧畜を中心とした生産基盤が崩れました。この時期、農地の荒廃や家畜の喪失が深刻化し、生産量は1991年には360トンにまで落ち込みました。この値は内戦や気候変動の影響を受け、モザンビークが直面していた生産基盤の脆弱性を顕著に示しています。
内戦終結後、経済再建の一環として農業分野への投資が進むと、生産量は2000年代に回復基調に入りました。しかし、生産量の回復ペースは緩やかであり、度重なる干ばつや台風といった自然災害の影響もその一因と考えられます。特に2015年には255トンと再び低下を見せましたが、その後は政策支援や農村部のインフラ改善が進み、2023年には582トンと近年の中では比較的良好な水準に到達しました。
モザンビークの羊肉生産量は、周辺諸国や世界全体と比較しても、その規模が比較的小さく、地域の輸出額に占める割合も限定的です。例えば、畜産業が比較的発展している南アフリカ共和国では、年間生産量が数万トンに達することから、モザンビークの生産量との大きな差が明らかです。この差は、インフラの未整備や飼料の不足、病害虫の発生が生産活動を圧迫していることに起因すると考えられます。
今後、モザンビークが羊肉生産をさらに向上させるためには、いくつかの課題への対処が必要です。第一に、気候変動への適応策として、乾燥に強い牧草の導入や灌漑設備の整備を促進することが挙げられます。これにより、干ばつに対する牧畜業の脆弱性を軽減することが可能です。第二に、地域間協力を通じて技術移転や市場アクセスを改善することも重要です。例えば、南部アフリカ開発共同体(SADC)の枠組み内での連携強化が期待されます。さらに、国家レベルでは、小規模農家や牧畜業者に対する支援を拡大し、品質の高い羊肉を安定的に供給するための生産技術向上プログラムを導入することが効果的です。
一方で、地政学的リスクも無視できません。例えば、地域紛争が再燃する可能性や天然資源を巡る国際的な競争がエスカレートした場合、農村部の社会・経済基盤が再び崩壊し、生産量のさらなる低下を招く恐れがあります。このため、国内の政治的安定を保つとともに、国際社会との協力を強化することが求められます。
最後に、過去のデータは長期的な傾向を明らかにすると同時に、将来的な方向性を示唆しています。モザンビークの羊肉生産が持続可能な成長軌道に乗るためには、政府、地元コミュニティ、国際援助機関が一体となり、戦略的な取り組みを進めていくことが不可欠です。これには、持続可能な農業慣行の推進、インフラ投資の拡大、市場連携の促進が含まれます。こうした対策を通じて、モザンビークの畜産業全体の成長が期待されます。