国際連合食糧農業機関(FAO)が更新した最新データによると、モンテネグロの牛乳生産量は、この20年近くの間に大きな変動を経験しています。2006年の169,089トンという数字から、2023年には157,272トンへ減少傾向にあります。特に2011年には196,492トンと大きく生産量が増加する一方で、その後は全体的に減少基調にあります。近年の2022年から2023年にかけても1,000トン近い減少が見られ、国内酪農業が直面する課題が浮き彫りになっています。
モンテネグロの牛乳生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 157,272 |
-0.43% ↓
|
2022年 | 157,957 |
-0.97% ↓
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2021年 | 159,500 |
-6.48% ↓
|
2020年 | 170,543 |
-0.1% ↓
|
2019年 | 170,722 |
-1.48% ↓
|
2018年 | 173,280 |
-0.66% ↓
|
2017年 | 174,431 |
0.83% ↑
|
2016年 | 173,000 |
-1.59% ↓
|
2015年 | 175,800 |
-4.2% ↓
|
2014年 | 183,500 |
5.7% ↑
|
2013年 | 173,600 |
15.48% ↑
|
2012年 | 150,331 |
-23.49% ↓
|
2011年 | 196,492 |
44.66% ↑
|
2010年 | 135,829 |
-6.35% ↓
|
2009年 | 145,043 |
-4.96% ↓
|
2008年 | 152,605 |
-6.67% ↓
|
2007年 | 163,516 |
-3.3% ↓
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2006年 | 169,089 | - |
モンテネグロの牛乳生産量の変化を振り返ると、2006年から2010年にかけては生産量が急速に減少していることが特徴です。この期間では135,829トンまで減少し、この背景には農業技術の限界や気候変動による飼料不足、また都市化の進展に伴う農村人口の減少などが寄与したと考えられます。しかし、2011年には196,492トンと大幅に増加し、例年の傾向を覆す形でピークを迎えました。この要因として、EU加盟候補国としての地位を確立する中で農業支援策が活発化し、一時的に生産基盤が強化された可能性が挙げられます。
その後、2012年以降は再び下降傾向が見られるものの、2013年から2015年にかけては170,000トン台を維持しています。しかし、2020年以降は再び減少が顕著となり、2023年には157,272トンにまで落ち込んでいます。この減少の背景には、国際的な牛乳価格の低迷、新型コロナウイルス感染症による経済活動の停滞、さらには酪農分野における後継者不足という一連の課題が絡んでいると考えられます。また、高齢化が進む国内農業労働力の状況が改善されない限り、さらなる生産基盤の縮小が懸念されます。
モンテネグロの酪農業は国内の食料供給および経済において重要な位置を占めていますが、持続可能な基盤を確立するためには多くの対策が必要です。例えば、酪農技術の近代化の促進、農業従事者への補助金提供、若年層の参加を促す政策の施行が挙げられます。また、大規模な牧場に依存せず、小規模農家同士の協同組合を結成することで、集約化と効率化を同時に実現することが求められるでしょう。
さらに、気候変動への対応として、水資源の確保や高品質の飼料の供給体制を整える必要性も高まっています。他国の例として、日本では気象災害に強い牧草品種の開発や室内飼育を活用した酪農が進められており、モンテネグロもこうした先進事例を参考にすることで、環境リスクを軽減できる可能性があります。
地政学的な観点から見ても、モンテネグロはバルカン半島に位置し、欧州連合との関係強化を進めています。EU基準に準じた食品安全基準や生産体制を整えることは、将来的な輸出産業の成長を支える要素となるでしょう。一方で、地域紛争や経済制裁などの影響による飼料の輸入不安定性が課題として浮上する場合、これを国内生産で補う備えが必要です。
総じて、モンテネグロの牛乳生産量の変動は、国内外の多様な要因に影響されています。持続可能な酪農を確立するためには、国内政策において短期的対策と長期的施策をバランスよく組み合わせることが重要です。国際機関やEU諸国との連携を図りながら、資金・技術・人材の三位一体の支援体制を確立することで、今後の生産回復と安定化を目指すべきでしょう。