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モンテネグロの牛飼養数推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(FAO)が発表した2024年7月の最新データによると、モンテネグロの牛飼養数は2006年の117,482頭をピークに、2022年時点で70,765頭まで減少しています。この期間における全体的な傾向は、緩やかな減少から急激な減少へと移行しており、特に2010年以降その減少幅が顕著になっています。現在の頭数は2006年比で約40%の減少が見られます。

年度 飼養数(頭) 増減率
2023年 69,298
-2.07% ↓
2022年 70,765
-0.56% ↓
2021年 71,166
-8.63% ↓
2020年 77,889
-4.35% ↓
2019年 81,432
-2.2% ↓
2018年 83,264
-3.91% ↓
2017年 86,649
-2.93% ↓
2016年 89,269
-3.44% ↓
2015年 92,452
3.81% ↑
2014年 89,058
5.14% ↑
2013年 84,701
-2.84% ↓
2012年 87,173
1.55% ↑
2011年 85,844
-14.87% ↓
2010年 100,835
-5.31% ↓
2009年 106,494
-2.64% ↓
2008年 109,378
-4.82% ↓
2007年 114,922
-2.18% ↓
2006年 117,482 -

モンテネグロにおける牛飼養数の推移データを分析すると、2006年以降、おおむね一貫した減少傾向が確認できます。2006年の時点では117,482頭と比較的高い水準にありましたが、2022年には70,765頭まで減少しており、近年は年間約1,000~6,000頭程度の減少が続いています。このデータは、モンテネグロにおける畜産業が衰退の傾向にあることを物語っています。

この減少の背景には、いくつかの地政学的および経済的な要因が存在すると考えられます。まず、モンテネグロの小規模かつ山岳地帯が多い地形は、大規模な牧畜に向いておらず、飼養コストや効率的な経営への課題をもたらしています。特に欧州連合(EU)市場との競争において、より高効率かつ規模の大きい他国の農家に価格競争で劣ることが原因だと分析されます。この地域の牛飼養数の減少は、地元の生産者が収益性の低い農業から撤退したことや、都市部への移住が進んだ結果とも言えます。

また、同時期に発生した経済危機や新型コロナウイルスの感染拡大は、畜産業への直接的な影響も及ぼしています。新型コロナの影響期間中には、物流の停滞や市場の需要減少により、多くの生産者が経営維持に苦戦したことが要因の一つと考えられます。同様に、自然災害や気候変動が飼料生産や牧草地の質の低下を招き、飼養のコストを上昇させた可能性も注目すべき点です。

モンテネグロの牛飼養数の減少は国内だけでなく、周辺諸国や欧州全体でも農村地域の衰退や伝統的な農業の衰退とリンクしています。例えば、モンテネグロと同様に農業が大きな収入源となっているアルバニアやボスニア・ヘルツェゴビナでも似たような減少が確認される一方で、フランスやドイツといった大規模農業国では、新たな技術革新などにより畜産業が持続可能性を維持しています。

このような状況をふまえると、モンテネグロの牛飼養数減少に対する課題解決の提言としては、いくつかの方向性が考えられます。まず、小規模農家への財政的支援や補助金の提供に加えて、牧草地や飼料の改良を進める技術的援助が必要です。こうした支援は、生産効率の向上や農業従事者の離脱防止にもつながります。また、観光資源としての田舎暮らしや「農業体験型ツーリズム」を推進することで、これにより農村コミュニティの活性化と持続可能性を確保する試みも一案となります。

さらに、地域間及び国際的な協力体制の強化が重要課題です。モンテネグロで生産された牛乳や牛肉製品が周辺諸国と特化した形で取引されるような枠組みを作ることで、地域全体の活性化を図ることができます。一方、気候変動への適応策として、より耐久性のある放牧地や気候変動に適応した品種改良を進める必要性が高いと言えます。

このような具体的な対策の実施によって、長期的にモンテネグロの牛飼養産業が持続可能な形で発展する土台を構築することが求められます。畜産業は単に農業経済だけでなく、文化や景観維持など多様な側面において地域社会に寄与するため、その保全と活性化は重要な課題です。