国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2005年度のオリーブ生産量データによれば、世界最大の生産国はスペインで、4,021,720トンの生産量を記録しました。続いてイタリア(3,774,812トン)とギリシャ(2,628,911トン)が上位を占め、これら3カ国で世界のオリーブ生産量の大部分を占めています。一方で、アフガニスタンやブラジルなど、オリーブの生産規模が小さい国もランキングに含まれており、生産量の地域差が顕著に表れています。地中海沿岸諸国を中心とした「オリーブベルト」が、世界の生産を支える構造にも注目が必要です。
| 順位 | 国名 | 地域 | 生産量(トン) |
|---|---|---|---|
| 1 |
|
ヨーロッパ | 4,021,720 |
| 2 |
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ヨーロッパ | 3,774,812 |
| 3 |
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ヨーロッパ | 2,628,911 |
| 4 |
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アジア | 1,200,000 |
| 5 |
|
アフリカ | 1,050,000 |
| 6 |
|
アフリカ | 750,000 |
| 7 |
|
アジア | 612,223 |
| 8 |
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アフリカ | 316,489 |
| 9 |
|
アフリカ | 310,000 |
| 10 |
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ヨーロッパ | 211,070 |
| 11 |
|
アフリカ | 181,118 |
| 12 |
|
南アメリカ | 155,000 |
| 13 |
|
北アメリカ | 128,820 |
| 14 |
|
アジア | 113,070 |
| 15 |
|
アジア | 85,765 |
| 16 |
|
アジア | 76,500 |
| 17 |
|
アジア | 61,339 |
| 18 |
|
南アメリカ | 54,622 |
| 19 |
|
ヨーロッパ | 36,602 |
| 20 |
|
ヨーロッパ | 30,200 |
| 21 |
|
アジア | 29,000 |
| 22 |
|
南アメリカ | 26,000 |
| 23 |
|
オセアニア | 23,041 |
| 24 |
|
ヨーロッパ | 21,861 |
| 25 |
|
アジア | 16,415 |
| 26 |
|
南アメリカ | 13,014 |
| 27 |
|
ヨーロッパ | 13,000 |
| 28 |
|
南アメリカ | 7,000 |
| 29 |
|
南アメリカ | 3,800 |
| 30 |
|
アジア | 3,000 |
| 31 |
|
アジア | 2,712 |
| 32 |
|
ヨーロッパ | 2,687 |
| 33 |
|
アジア | 2,400 |
| 34 |
|
アジア | 984 |
| 35 |
|
アジア | 107 |
| 36 |
|
ヨーロッパ | 44 |
| 37 |
|
アジア | 15 |
| 38 |
|
ヨーロッパ | 3 |
| 39 |
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南アメリカ | 2 |
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オリーブは地中海性気候を中心に栽培される重要な農産物であり、特にオリーブオイルへの加工を目的とした生産がその大半を占めています。2005年度のFAO統計からも明らかなように、スペイン(4,021,720トン)をトップに、イタリア(3,774,812トン)とギリシャ(2,628,911トン)が続く「地中海諸国」がオリーブ生産の一大拠点となっています。これらの国は、地中海性気候の恩恵を受けるだけでなく、長い歴史の中で培われた栽培技術や加工ノウハウ、地元消費と輸出市場の両方への対応力といった競争優位性を持っています。この地域でのオリーブ生産は、輸出産業としての側面も強く、特にEU加盟国にとっては経済的に非常に重要な産業といえるでしょう。
一方で、地中海地域以外に目を向けると、トルコ(1,200,000トン)やアメリカ合衆国(128,820トン)など、地理的に異なるエリアでも少なからずオリーブ生産が進んでいることが伺えます。ただし、生産量における地域差は依然として非常に大きく、トップ5の国(スペイン、イタリア、ギリシャ、トルコ、チュニジア)だけで世界全体の圧倒的多数を占めています。
地域ごとの課題について考えると、気候変動が大きな影響をもたらしている点が挙げられます。地中海性気候の領域が気候変動によって縮小する可能性が議論されており、長期的にはオリーブの栽培地が北方や地中海以外に移行する構造的変化が起こる可能性もあります。さらに、限定された栽培地域への集中は、災害や疫病が発生した場合、世界全体の供給に多大な影響を及ぼすリスクも指摘されます。
また、政治的・地政学的なリスクにも注意が必要です。例えば、チュニジア(1,050,000トン)やシリア(612,223トン)などの北アフリカや中東地域では、オリーブ生産が農村部の主要な収入源である一方、不安定な政治状況が農業基盤の脆弱性を高めています。これにより、栽培量の変動や品質の低下、輸出の停滞といったリスクが発生しており、国際協力が重要な課題となっています。
未来への対策として注目すべきは、適応的な農業政策の導入と国際的な協力の強化です。例えば、耐乾性や耐病性を持つオリーブ品種の開発や導入は、気候変動に対する具体的な対策となり得ます。また、地中海地域に限られた生産構造を多地域に分散させる施策は、供給の安定化に大きく貢献します。特に、アメリカ、中国、オーストラリアといった、地中海外でもオリーブ栽培の潜在力を持つ国々が、より積極的に生産を拡大することが期待されます。
結論として、2005年度のオリーブ生産データは、地中海地域と他地域の経済的な結び付きだけでなく、気候変動や地政学的リスクが今後の生産動向に重大な影響を与える可能性を浮き彫りにしています。各国政府や国際機関は、栽培技術の革新、地域間の協力強化、紛争地域の生産支援などに取り組むことで、オリーブ産業の持続可能性を確保するべきです。このような取り組みにより、オリーブが持つ経済的・文化的価値を次世代に伝え続けることが可能となるでしょう。