国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に発表した最新データによると、ギニアビサウのパイナップル生産量は、1980年には50トンと非常に低い水準でしたがその後増加を続け、2011年にはピークの504トンを記録しました。しかし、それ以降は減少傾向に転じ、2023年には409トンまで低下しました。このデータは、ギニアビサウの農業発展とその限界、さらには地理的・経済的背景の影響を反映しています。
ギニアビサウのパイナップル生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 409 |
-0.97% ↓
|
2022年 | 413 |
0.16% ↑
|
2021年 | 413 |
-0.07% ↓
|
2020年 | 413 |
-0.32% ↓
|
2019年 | 414 |
0.86% ↑
|
2018年 | 411 |
-0.74% ↓
|
2017年 | 414 |
-1.08% ↓
|
2016年 | 418 |
-5.75% ↓
|
2015年 | 444 |
9.67% ↑
|
2014年 | 405 |
-0.41% ↓
|
2013年 | 406 |
1.58% ↑
|
2012年 | 400 |
-20.57% ↓
|
2011年 | 504 |
4.86% ↑
|
2010年 | 480 |
4.86% ↑
|
2009年 | 458 |
18.48% ↑
|
2008年 | 387 |
10.43% ↑
|
2007年 | 350 |
27.27% ↑
|
2006年 | 275 |
6.07% ↑
|
2005年 | 259 |
6.4% ↑
|
2004年 | 244 |
10.76% ↑
|
2003年 | 220 |
-4.31% ↓
|
2002年 | 230 |
1.89% ↑
|
2001年 | 226 |
1.74% ↑
|
2000年 | 222 |
0.01% ↑
|
1999年 | 222 |
1.45% ↑
|
1998年 | 219 |
1.53% ↑
|
1997年 | 215 |
1.1% ↑
|
1996年 | 213 |
1.25% ↑
|
1995年 | 210 |
1.53% ↑
|
1994年 | 207 |
1.48% ↑
|
1993年 | 204 |
1.9% ↑
|
1992年 | 200 |
0.17% ↑
|
1991年 | 200 |
11.11% ↑
|
1990年 | 180 |
20% ↑
|
1989年 | 150 |
50% ↑
|
1988年 | 100 |
100% ↑
|
1987年 | 50 | - |
1986年 | 50 | - |
1985年 | 50 | - |
1984年 | 50 | - |
1983年 | 50 | - |
1982年 | 50 | - |
1981年 | 50 | - |
1980年 | 50 | - |
ギニアビサウのパイナップル生産は、1980年代前半には年間50トンという極めて低い規模で推移していました。この時期は、農業の基盤整備が進んでいなかった時代であり、生産量の停滞はインフラ未整備や技術不足の影響が大きかったと考えられます。しかし、1988年から生産量は徐々に増加し、1990年代に入ると、年々生産量が着実に上昇、2000年代前半には急激な伸びを示しました。この成長は、農業技術改善や農民への支援政策、また市場の需要増加が寄与していると推測されます。
特に2007年から2011年にかけての急激な増加、2007年の350トンから2011年の504トンへの伸びは注目に値します。この背景には、ギニアビサウ政府が農産物輸出の拡大を目指して行った政策的支援や、地域農業の革新と国際市場へのアクセス改善の影響が関連していると見られます。しかし、2012年に入ると突然生産量が減少し、400トンへ急落しました。この減少は、主に自然災害や気候変動の影響が考えられます。ギニアビサウは湿潤熱帯気候に属し、気候変動により降雨量の不規則化や干ばつの発生が生産に直接関与すると予想されます。また、インフラの脆弱性や恒常的な政治的安定が確保されていないことも、生産の変動要因と考えられます。
2013年以降、パイナップル生産量はおおむね400トン規模で停滞しています。これは、持続可能な生産性を確保できる仕組みや体制が構築されていないことを示しています。他国との比較では、アフリカ全体で主要パイナップル生産国であるナイジェリアやケニアが数千トンの生産量を誇るのに対して、ギニアビサウは依然として小規模生産の域を脱することができていません。この差は、農業技術への投資能力や農業向けインフラの質の違いによるところが大きいです。
今後の課題として、まず第一に挙げられるのは、気候変動への対応です。パイナップルなどの農産物は、適切な水分管理や天候の安定性が不可欠であり、新たな気候変動対策技術の導入が急務です。また、輸出産業への転換を図るためには、農民への技術支援強化や物流ネットワークの整備も求められます。加えて、地域の農業団体や国際機関との連携による資金調達や技術提供も期待されます。
例えば、アフリカ内の近隣諸国や国際農業機関と連携し、地域の気候情報を共有するシステムの活用や、耐性作物への転換を進めることで、気候リスクを軽減することが可能です。また、小規模農業の共同化やパイナップル加工産業(ジュースや缶詰など)への多角化も、付加価値を高める手段として考えられます。
さらに、ギニアビサウにおける地政学的なリスクも見過ごせません。同国は過去に政治的不安定や地域紛争の影響を受けており、このような要因が農業の発展を妨げてきました。これらの問題に対処するためには、地域における平和と安定を国連や地域組織と連携して確保することが重要です。
結論として、ギニアビサウのパイナップル生産量は顕著な伸びを記録した時期を持つものの、その後は停滞や減少を示し、現在の400トン台という規模に留まっています。これは、生産基盤や外部環境の制限の影響が大きいためです。今後、この状況を改善するには、気候変動対策、技術支援強化、地域協力の促進、生産品の多様化など、具体的な施策が求められます。それに加え、農業を持続可能かつ競争力のある成長産業とするための、長期的な政策の策定と実行が必要です。