国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に発表した最新のギニアビサウのフォニオ生産量データによると、生産量は1960年代の20,000トン弱をピークに、以降は大幅に減少しました。2022年の生産量は399トンとピーク時の約2%程度となり、過去数十年間で著しい減少傾向が確認されています。この長期的な減少の背景には、農業技術の停滞、政治的・社会的要因、および環境変動が影響していると考えられます。
ギニアビサウのフォニオ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 456 |
14.38% ↑
|
2022年 | 399 |
20.54% ↑
|
2021年 | 331 |
12.2% ↑
|
2020年 | 295 |
-28.57% ↓
|
2019年 | 413 |
-26.25% ↓
|
2018年 | 560 |
-19.27% ↓
|
2017年 | 694 |
-5.48% ↓
|
2016年 | 734 |
14.87% ↑
|
2015年 | 639 |
-24.01% ↓
|
2014年 | 841 |
16.44% ↑
|
2013年 | 722 |
24.48% ↑
|
2012年 | 580 |
10.48% ↑
|
2011年 | 525 |
0.19% ↑
|
2010年 | 524 |
-1.5% ↓
|
2009年 | 532 |
80.34% ↑
|
2008年 | 295 |
-10.33% ↓
|
2007年 | 329 |
-82.08% ↓
|
2006年 | 1,836 |
-20% ↓
|
2005年 | 2,295 |
25% ↑
|
2004年 | 1,836 |
163.04% ↑
|
2003年 | 698 |
-54.08% ↓
|
2002年 | 1,520 |
-46.69% ↓
|
2001年 | 2,851 |
-27.6% ↓
|
2000年 | 3,938 |
-9.1% ↓
|
1999年 | 4,332 |
11.08% ↑
|
1998年 | 3,900 |
72.41% ↑
|
1997年 | 2,262 |
22.73% ↑
|
1996年 | 1,843 |
8.09% ↑
|
1995年 | 1,705 |
-30.09% ↓
|
1994年 | 2,439 |
23% ↑
|
1993年 | 1,983 |
46.56% ↑
|
1992年 | 1,353 |
25.05% ↑
|
1991年 | 1,082 |
-31.26% ↓
|
1990年 | 1,574 |
22.97% ↑
|
1989年 | 1,280 |
-31.84% ↓
|
1988年 | 1,878 |
-37.4% ↓
|
1987年 | 3,000 |
-25% ↓
|
1986年 | 4,000 |
-20% ↓
|
1985年 | 5,000 |
-28.57% ↓
|
1984年 | 7,000 |
40% ↑
|
1983年 | 5,000 | - |
1982年 | 5,000 | - |
1981年 | 5,000 |
-37.5% ↓
|
1980年 | 8,000 | - |
1979年 | 8,000 | - |
1978年 | 8,000 | - |
1977年 | 8,000 |
-20% ↓
|
1976年 | 10,000 |
11.11% ↑
|
1975年 | 9,000 |
12.5% ↑
|
1974年 | 8,000 | - |
1973年 | 8,000 | - |
1972年 | 8,000 |
-11.11% ↓
|
1971年 | 9,000 | - |
1970年 | 9,000 | - |
1969年 | 9,000 |
-10% ↓
|
1968年 | 10,000 | - |
1967年 | 10,000 | - |
1966年 | 10,000 |
-41.18% ↓
|
1965年 | 17,000 |
-5.56% ↓
|
1964年 | 18,000 |
-5.26% ↓
|
1963年 | 19,000 |
2.7% ↑
|
1962年 | 18,500 |
2.78% ↑
|
1961年 | 18,000 | - |
ギニアビサウにおけるフォニオ生産量の長期的な推移を見ると、特に1961年から1980年代にかけて顕著な減少傾向が見られます。1961年には18,000トンのフォニオが生産されていましたが、1970年代の後半から徐々に1万トンを下回り始め、さらに1980年代以降急激に衰退していきました。最新の2022年のデータでは399トンと極めて少ない値となっています。このような減少傾向は、いくつかの重要な要因によるものと推測されています。
一つの要因としては、植民地支配の影響から続く農業基盤の脆弱性が挙げられます。ギニアビサウは1974年の独立以降、内戦や政治的混乱が相次ぎ、重要な農業開発や国際支援の遅れが生じました。これにより、小規模農家の支援が十分に行き渡らず、農業技術の向上やインフラの整備が進まなかったことが挙げられます。また、フォニオは伝統的に作られる穀物であるものの、他の高収量性の作物に置き換えられる傾向も見られ、重要性が低下していった可能性があります。
加えて、地政学的リスクや気候変動もその背景に影響を与えたと考えられます。近年、ギニアビサウは干ばつや洪水などの気候変動による農業被害を受けており、フォニオの生産にも大きな負荷をかけています。特に2020年以降、新型コロナウイルス感染症の影響も重なり農業経済の停滞が加速しました。これがさらなる減少を招く一因となっている可能性も否定できません。
このような状況を解決するためには、いくつかの具体的な対策が必要です。まず、政府や国際機関の支援を強化し、小規模農家への技術支援や灌漑設備の普及を促進することが重要です。例えば、灌漑技術の導入やより耐乾性の高い品種の開発に投資を行うことで、気候変動の影響を緩和することができます。また、フォニオは栄養価が高いことから国際的にも注目を集める可能性があります。これを活用し、マーケティング支援を進めることで、地域経済の一部として再活性化を図ることができるでしょう。
さらに、地域内外の農業協力を強化することも重要です。隣国と農業技術を共有するプログラムや、地域全体で災害リスクに対応する枠組みを構築することで、長期的な持続可能性を支える基盤を作るべきです。また、紛争や政情不安が農業開発を妨げる要因ともなっているため、これらを解決するための平和構築努力が欠かせません。農業は地域の安定に密接に関連しており、包括的な政策が効果を発揮する可能性があります。
結論として、ギニアビサウのフォニオ生産量は過去数十年間で著しい縮小傾向を示しており、国家および国際社会の一丸となった取り組みが不可欠です。フォニオの生産が回復することで、地域の食糧安全保障が向上し、農村経済の安定化が期待できます。