国連食糧農業機関(FAO)のデータによると、ギニアビサウのヤギ肉生産量は1961年の315トンから長期的に増加してきましたが、2012年をピークに減少傾向へ転じ、2023年には900トンとなりました。2022年以前との比較では約5.2%の減少を記録しています。特に近年の減少傾向は顕著となっており、地政学的要因や気候変動、地域の経済的課題が影響している可能性があります。
ギニアビサウのヤギ肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 900 |
-5.13% ↓
|
2022年 | 949 |
-3.23% ↓
|
2021年 | 980 |
-3.05% ↓
|
2020年 | 1,011 |
-4.42% ↓
|
2019年 | 1,058 |
0.89% ↑
|
2018年 | 1,049 |
-3.77% ↓
|
2017年 | 1,090 |
-2.3% ↓
|
2016年 | 1,115 |
-1.83% ↓
|
2015年 | 1,136 |
-3.03% ↓
|
2014年 | 1,172 |
0.59% ↑
|
2013年 | 1,165 |
-3.42% ↓
|
2012年 | 1,206 |
0.75% ↑
|
2011年 | 1,197 |
2.31% ↑
|
2010年 | 1,170 |
0.8% ↑
|
2009年 | 1,161 |
5.93% ↑
|
2008年 | 1,096 |
5.87% ↑
|
2007年 | 1,035 |
5.99% ↑
|
2006年 | 977 |
4.33% ↑
|
2005年 | 936 |
1.46% ↑
|
2004年 | 923 | - |
2003年 | 923 |
11.26% ↑
|
2002年 | 829 |
-5.51% ↓
|
2001年 | 878 | - |
2000年 | 878 | - |
1999年 | 878 |
3.17% ↑
|
1998年 | 851 |
3.28% ↑
|
1997年 | 824 |
3.39% ↑
|
1996年 | 797 |
3.51% ↑
|
1995年 | 770 |
1.79% ↑
|
1994年 | 756 |
3.7% ↑
|
1993年 | 729 |
8% ↑
|
1992年 | 675 |
13.64% ↑
|
1991年 | 594 |
5.77% ↑
|
1990年 | 562 |
0.48% ↑
|
1989年 | 559 |
0.16% ↑
|
1988年 | 558 |
0.32% ↑
|
1987年 | 556 |
0.32% ↑
|
1986年 | 554 |
2.67% ↑
|
1985年 | 540 |
1.69% ↑
|
1984年 | 531 | - |
1983年 | 531 |
1.72% ↑
|
1982年 | 522 |
3.57% ↑
|
1981年 | 504 |
1.82% ↑
|
1980年 | 495 |
3.77% ↑
|
1979年 | 477 |
6% ↑
|
1978年 | 450 |
6.38% ↑
|
1977年 | 423 |
4.44% ↑
|
1976年 | 405 |
4.65% ↑
|
1975年 | 387 |
4.88% ↑
|
1974年 | 369 |
2.5% ↑
|
1973年 | 360 |
5.26% ↑
|
1972年 | 342 |
5.56% ↑
|
1971年 | 324 |
1.41% ↑
|
1970年 | 320 |
1.43% ↑
|
1969年 | 315 | - |
1968年 | 315 | - |
1967年 | 315 | - |
1966年 | 315 | - |
1965年 | 315 | - |
1964年 | 315 | - |
1963年 | 315 | - |
1962年 | 315 | - |
1961年 | 315 | - |
FAOのデータによると、ギニアビサウのヤギ肉生産は当初の1960年代には安定した水準を維持していました。その後、1970年代から1990年代にかけて急激な増加を見せ、とりわけ1990年代後半以降では700トンを超える成長を記録しました。この増加は、当時の農業技術の向上や地域社会の食肉需要の増加が背景として考えられます。また、ヤギの飼育は乾燥地帯でも行いやすいため、持続可能な畜産として注目されていたと推測されます。
しかし、2012年の1,206トンをピークに生産量が減少に転じています。2023年の900トンという生産量は、このピーク時と比較して約25%の減少を示しており、これには複数の要因が絡んでいると考えられます。気候変動による干ばつや降水量の変動がヤギの飼育環境に影響を与えていると同時に、ギニアビサウ国内の政治的な不安定さや経済の伸び悩みも負の影響を与えているとみられます。また、人口増加に伴う食物の多様化や輸入肉への依存度の増加も、地元生産への需要が減少した要因と考えられます。
地域間比較を行うと、例えば同じ西アフリカ地域のセネガルやマリはヤギ肉生産量を維持または増加させており、ギニアビサウの減少傾向は特異的な現象とも言えます。これらの国々の成功例からは、畜産業を支援する技術開発、インフラ整備、そして国際市場へのアクセス拡大が重要であると考えられます。
ギニアビサウのヤギ肉生産の減少が続くことで、主に農村地域における栄養状況や家計収入に悪影響を及ぼす可能性があります。また、農村経済が活気を失うことで、貧困層が増え、人々が都市へ流入する結果都会の失業率が上昇するなど、社会経済的な課題が拡大するリスクも懸念されます。このような事態を避けるためには、いくつかの具体的対策が必要です。
第一に、国内の生産者への技術と資金の提供が求められます。これにより、効率的で持続可能なヤギの飼育環境を促進することが可能になります。第二に、地域間の協力を推進し、他国の成功例から学びながら知識を共有する仕組みを構築することが重要です。特に近年では、気候耐性のある牧草の導入や牧畜に適した新しい技術の展開が各地で行われています。第三に、ヤギ肉市場の拡張を目的とした国際輸出戦略の策定も重要であり、これにより国内生産者の収入が増え、産業全体の持続可能性が高まることが期待されます。
地政学的な面でも、サヘル地域の不安定な情勢や気候リスクがギニアビサウの農業に与える影響は軽視できません。特に干ばつが続く場合、飼料不足により生産が一層減少するリスクがあります。そのため、早期警戒システムの構築や気候適応型政策の実施が急務です。また、農業従事者を保護するための地方政府と国際機関の連携が不可欠でしょう。
結論として、ギニアビサウのヤギ肉生産量はピーク時から大きく減少しており、この問題は地域社会の暮らしや経済に直接的な影響を及ぼしています。一方で、適切な対策を実施すれば回復の見込みも十分にある分野です。今後、農業政策の改善、国際協力の強化、そして変動する気候への適応を柱とした持続可能な畜産業の推進こそが、ギニアビサウの食肉産業を再び成長軌道に乗せる鍵となるでしょう。