Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した2014年度のオリーブ生産量ランキングによると、世界最大のオリーブ生産国はスペインで、生産量は4,560,400トンでした。第2位はギリシャ(2,592,375トン)、第3位はイタリア(1,963,676トン)で、これら3国で全体の大部分を占めています。これに続くのはトルコとモロッコで、それぞれ1,768,000トンと1,573,206トンを生産し、地中海地域がオリーブ生産の中心地であることが明らかです。反対に、日本や北アジア地域はランキングに入っていないことから、オリーブの生産は非常に地域的な特性を有しています。
| 順位 | 国名 | 地域 | 生産量(トン) |
|---|---|---|---|
| 1 |
|
ヨーロッパ | 4,560,400 |
| 2 |
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ヨーロッパ | 2,592,375 |
| 3 |
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ヨーロッパ | 1,963,676 |
| 4 |
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アジア | 1,768,000 |
| 5 |
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アフリカ | 1,573,206 |
| 6 |
|
アフリカ | 565,669 |
| 7 |
|
アフリカ | 482,860 |
| 8 |
|
ヨーロッパ | 455,374 |
| 9 |
|
アジア | 392,214 |
| 10 |
|
アフリカ | 376,000 |
| 11 |
|
南アメリカ | 341,865 |
| 12 |
|
アフリカ | 180,668 |
| 13 |
|
アジア | 155,764 |
| 14 |
|
南アメリカ | 151,927 |
| 15 |
|
アジア | 113,700 |
| 16 |
|
南アメリカ | 103,470 |
| 17 |
|
ヨーロッパ | 98,000 |
| 18 |
|
アジア | 90,000 |
| 19 |
|
北アメリカ | 86,183 |
| 20 |
|
オセアニア | 65,851 |
| 21 |
|
アジア | 60,900 |
| 22 |
|
アジア | 43,797 |
| 23 |
|
アジア | 24,768 |
| 24 |
|
アジア | 17,266 |
| 25 |
|
ヨーロッパ | 13,006 |
| 26 |
|
ヨーロッパ | 12,343 |
| 27 |
|
南アメリカ | 10,887 |
| 28 |
|
南アメリカ | 9,994 |
| 29 |
|
ヨーロッパ | 8,840 |
| 30 |
|
アジア | 6,916 |
| 31 |
|
南アメリカ | 4,400 |
| 32 |
|
アジア | 2,611 |
| 33 |
|
アジア | 847 |
| 34 |
|
ヨーロッパ | 814 |
| 35 |
|
南アメリカ | 512 |
| 36 |
|
ヨーロッパ | 254 |
| 37 |
|
ヨーロッパ | 190 |
| 38 |
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アジア | 120 |
| 39 |
|
アジア | 62 |
| 40 |
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ヨーロッパ | 60 |
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2014年度のデータを通じて、オリーブ生産の地理的分布とその背景を分析すると、いくつかの重要なポイントが浮かび上がります。まず、上位3国であるスペイン、ギリシャ、イタリアが合計で約900万トン以上を生産し、全世界のオリーブ供給の主要な柱となっています。これらの国々は、地中海性気候(冬が温暖で降雨があり、夏が高温乾燥している)の恩恵を受けており、この気候がオリーブ栽培に最適であることが一因です。また、これらの地域では数世紀にわたる農業技術の蓄積があり、伝統的なオリーブオイル生産の拠点として知られています。
さらに、トルコ、モロッコ、エジプト、アルジェリアといった地中海沿岸諸国も上位に挙げられています。一方で、シリア、チュニジアといった国々が順位を下げ始めているのは、ここ数十年間における紛争や政治的不安定性が影響している可能性を示唆します。オリーブ栽培地は、地政学的リスクの影響を受けやすい農業分野の一つでもあります。たとえば、戦闘や不安定な経済環境が長期化すると、生産設備や農業労働者への影響が避けられません。
生産量が上位に位置する国々を見れば、これらの国々にとってオリーブがいかに重要な輸出産品であるかがわかります。例えば、スペインやギリシャでは、オリーブオイルが国家経済やブランドイメージの重要な柱となっています。しかし同時に、異常気象や干ばつ、また病害虫の蔓延など環境的なリスクも近年増大しています。特に、イタリアを襲ったオリーブのキシレラ菌(Xylella fastidiosa)による壊滅的な被害が、これらのリスクを象徴しています。この病害問題の解決には、国際的な協力や早期検疫体制の構築が重要とされています。
アジアやアメリカ、オセアニア諸国の生産量は、地中海地域と比べると非常に少ない水準にとどまっています。アメリカ合衆国やオーストラリアといった国々では、大規模農業による効率的な生産が増加していますが、ブランド価値や品質面では地中海オリーブと競合する上で課題も多く存在します。一方、大消費市場である中国や日本は、国内生産量が極めて少なく、ほぼ全量を輸入に依存している現状があります。これに関連して、日本では近年香川県などを中心にオリーブの試験栽培が進められていますが、気候条件や生産規模の制約から商業ベースでの拡大には時間がかかると見られます。
将来的には、気候変動の影響がオリーブ栽培全体に大きな課題を投げかける可能性があります。たとえば、地中海性気候の範囲が縮小することで、従来の生産地が影響を受ける可能性があります。このため、生産国は気候に強い品種の開発や新たな作付け地の開拓に取り組む必要があります。また、病害虫管理や生産効率の向上には、新しい農業技術の普及が不可欠です。加えて、生産国間の協力体制を強化し、地域ごとに異なる課題に即した戦略を構築することが求められます。
国際連合食糧農業機関の発表するこうしたデータは、オリーブが単なる農産物以上の意味を持つことを私たちに教えてくれます。それは、文化的アイデンティティや経済的な柱であり、さらには地政学的な安定にも影響を与える要素です。今後、各国政府や国際団体が連携し、オリーブ生産の持続可能性を確保するための政策や国際協力の枠組みをさらに広げていくことが求められます。