国際連合食糧農業機関(FAO)のデータによると、2010年度の世界のオリーブ生産量ランキングでは、スペインが約7,197,600トンで圧倒的な1位となり、2位のイタリア(約3,170,700トン)および3位のギリシャ(約2,559,567トン)を大きく引き離しました。これら上位3カ国は世界のオリーブ生産を主導しており、特に地中海地域がオリーブ産業の中心であることが改めて確認されます。アメリカや中国が比較的小規模な生産者に留まっている一方で、アラブ諸国や北アフリカの国々もランキングの上位に食い込んでおり、地域的な多様性も見られる結果となっています。
| 順位 | 国名 | 地域 | 生産量(トン) |
|---|---|---|---|
| 1 |
|
ヨーロッパ | 7,197,600 |
| 2 |
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ヨーロッパ | 3,170,700 |
| 3 |
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ヨーロッパ | 2,559,567 |
| 4 |
|
アフリカ | 1,506,473 |
| 5 |
|
アジア | 1,415,000 |
| 6 |
|
アジア | 960,403 |
| 7 |
|
アフリカ | 873,000 |
| 8 |
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ヨーロッパ | 445,301 |
| 9 |
|
アフリカ | 390,932 |
| 10 |
|
南アメリカ | 353,842 |
| 11 |
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アフリカ | 311,252 |
| 12 |
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アジア | 200,000 |
| 13 |
|
北アメリカ | 186,880 |
| 14 |
|
アフリカ | 177,144 |
| 15 |
|
アジア | 171,672 |
| 16 |
|
アジア | 112,000 |
| 17 |
|
オセアニア | 90,000 |
| 18 |
|
南アメリカ | 75,035 |
| 19 |
|
アジア | 73,500 |
| 20 |
|
ヨーロッパ | 70,000 |
| 21 |
|
南アメリカ | 59,932 |
| 22 |
|
アジア | 58,900 |
| 23 |
|
ヨーロッパ | 38,001 |
| 24 |
|
ヨーロッパ | 31,706 |
| 25 |
|
南アメリカ | 27,209 |
| 26 |
|
アジア | 15,113 |
| 27 |
|
アジア | 14,873 |
| 28 |
|
ヨーロッパ | 12,000 |
| 29 |
|
南アメリカ | 9,000 |
| 30 |
|
アジア | 7,300 |
| 31 |
|
南アメリカ | 4,863 |
| 32 |
|
アジア | 2,588 |
| 33 |
|
ヨーロッパ | 1,895 |
| 34 |
|
アジア | 1,863 |
| 35 |
|
ヨーロッパ | 483 |
| 36 |
|
ヨーロッパ | 123 |
| 37 |
|
アジア | 120 |
| 38 |
|
南アメリカ | 39 |
| 39 |
|
アジア | 29 |
| 40 |
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ヨーロッパ | 14 |
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2010年度のオリーブ生産量ランキングを見ると、スペインが世界の生産量の大半を占めており、オリーブ産業における明確なリーダーであることが示されています。スペイン単独で約720万トンのオリーブを生産しており、その規模は2位のイタリア(約317万トン)および3位のギリシャ(約255万トン)の合計を上回ることからも、地中海の気候条件を活かした生産体制の効率性が際立っています。これに続くモロッコやトルコも、地中海および中東地域のオリーブ生産の重要性を示す象徴的な存在です。
しかしながら、このデータは、生産量が地中海沿岸諸国に集中していることを指摘する一方で、他地域の生産量が比較的低いという課題も浮き彫りにしています。例えば、アメリカは約18万トンで13位にとどまっており、アジア地域の主要国である中国や日本に関しては、オリーブの生産がほとんど確認されていません(中国は約2,588トンと極めて少量です)。この背景には、地中海型の気候が生産の前提条件であることが挙げられますが、温暖化による気候変動や乾燥化が進行する現代では、新たな栽培領域の開拓や技術革新も求められます。
地政学的リスクの観点から見ると、生産上位にシリアやチュニジアといった中東・北アフリカの国々が位置している点に注目が必要です。これらの地域は近年、政治不安や紛争、気候変動による水不足などの課題を抱えており、安定的な生産が今後も継続されるかは不透明です。これにより、オリーブおよびその加工品であるオリーブオイルの国際市場で供給不足や価格高騰が懸念される可能性があります。
また、アメリカやオーストラリア、アルゼンチンなど、伝統的なオリーブ生産地域ではない国がランキングに入っている点にも注目すべきです。これらの国々は地中海型の気候を一部の地域で持ち、生産技術への投資によって収穫量が安定しており、今後の市場拡大が期待されています。特に、耐乾燥性や丈夫な品種の改良が進めば、新たな生産地域としてのポテンシャルをさらに発揮できる可能性があります。
地中海地域における水資源不足や極端な気温上昇はオリーブの収穫に重大な影響を与えるため、持続可能な農業への移行も課題です。灌漑技術の高度化や気候変動に強い品種の研究開発は、長期的なオリーブ生産の安定に向けて各国が取り組むべき方向性となります。同時に、例えば日本のようなオリーブ生産が相対的に少ない国においても、消費地としての役割を果たすことが重要です。これには輸入依存度を抑えながら、国内での小規模かつ高品質な生産を目指すことが含まれます。
こうした背景を踏まえると、今後の課題は地中海地域の中心性を維持しつつも、その依存度を緩和し、新たな生産地の多角化を促進することです。国際機関や国ごとの協力体制は、これを実現するために不可欠であり、特に技術交流や人材育成の分野でより強力な連携が必要です。たとえば、オリーブ生産の温暖化対応力を高めるための研究資金の確保や、農業教育プログラムを通じた収量改善への取り組みが考えられます。
総じて、2010年度のランキングは、オリーブ生産が地中海気候と深く結びついていることを示す一方で、気候変動や地政学的リスクなどの現代的な課題も浮き彫りにしました。未来に向けて持続可能な生産と新たな可能性の拡大を実現するためには、技術力、政策、そして国際間の協調がますます重要となるでしょう。