国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年7月時点の最新データによると、ソマリアのココナッツ生産量は長期的な視点から見ると大きな増加傾向にあります。特に1961年から1989年にかけては順調に伸び、ピーク時の1989年には15,000トンを記録しました。一方で1990年代以降は生産量が大幅に減少し、その後緩やかな増減が続きました。近年では再び増加基調にあり、2023年には17,199トンと記録的な数値を達成しています。
ソマリアのココナッツ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 17,199 |
23.54% ↑
|
2022年 | 13,922 |
-3.32% ↓
|
2021年 | 14,400 |
-0.04% ↓
|
2020年 | 14,406 |
9.1% ↑
|
2019年 | 13,205 |
22.27% ↑
|
2018年 | 10,800 | - |
2017年 | 10,800 | - |
2016年 | 10,800 |
22.73% ↑
|
2015年 | 8,800 |
-19.85% ↓
|
2014年 | 10,980 |
-0.07% ↓
|
2013年 | 10,988 |
-0.44% ↓
|
2012年 | 11,037 |
0.33% ↑
|
2011年 | 11,000 |
-0.81% ↓
|
2010年 | 11,090 |
6.53% ↑
|
2009年 | 10,410 |
-13.25% ↓
|
2008年 | 12,000 | - |
2007年 | 12,000 |
13.6% ↑
|
2006年 | 10,563 |
-2.04% ↓
|
2005年 | 10,784 |
-2.36% ↓
|
2004年 | 11,044 |
-7.96% ↓
|
2003年 | 12,000 |
9.74% ↑
|
2002年 | 10,935 |
-0.59% ↓
|
2001年 | 11,000 |
10% ↑
|
2000年 | 10,000 |
11.11% ↑
|
1999年 | 9,000 |
12.5% ↑
|
1998年 | 8,000 |
-8.94% ↓
|
1997年 | 8,786 |
-2.64% ↓
|
1996年 | 9,024 |
0.27% ↑
|
1995年 | 9,000 |
28.57% ↑
|
1994年 | 7,000 |
-12.5% ↓
|
1993年 | 8,000 |
-11.11% ↓
|
1992年 | 9,000 |
-25% ↓
|
1991年 | 12,000 |
-11.94% ↓
|
1990年 | 13,627 |
-9.15% ↓
|
1989年 | 15,000 |
3.45% ↑
|
1988年 | 14,500 | - |
1987年 | 14,500 |
3.57% ↑
|
1986年 | 14,000 |
3.7% ↑
|
1985年 | 13,500 |
3.85% ↑
|
1984年 | 13,000 |
4% ↑
|
1983年 | 12,500 |
4.17% ↑
|
1982年 | 12,000 |
9.09% ↑
|
1981年 | 11,000 |
10% ↑
|
1980年 | 10,000 |
11.11% ↑
|
1979年 | 9,000 |
5.88% ↑
|
1978年 | 8,500 |
6.25% ↑
|
1977年 | 8,000 |
6.67% ↑
|
1976年 | 7,500 |
7.14% ↑
|
1975年 | 7,000 |
7.69% ↑
|
1974年 | 6,500 |
8.33% ↑
|
1973年 | 6,000 |
9.09% ↑
|
1972年 | 5,500 |
10% ↑
|
1971年 | 5,000 |
11.11% ↑
|
1970年 | 4,500 |
12.5% ↑
|
1969年 | 4,000 |
14.29% ↑
|
1968年 | 3,500 |
16.67% ↑
|
1967年 | 3,000 |
20% ↑
|
1966年 | 2,500 |
25% ↑
|
1965年 | 2,000 |
33.33% ↑
|
1964年 | 1,500 |
50% ↑
|
1963年 | 1,000 |
25% ↑
|
1962年 | 800 | - |
1961年 | 800 | - |
ソマリアのココナッツ生産量の推移を見ると、長い間安定的または着実に成長してきた一方で、1990年代初頭には急激な減少が見られる点が特徴的です。この背景には、1991年に発生したソマリア内戦による政治的混乱が挙げられます。内戦は国内のインフラや農業の流通システムに深刻な打撃を与え、農作物の生産性や輸送が大幅に妨げられました。このような状況の中、ココナッツ生産量も1990年の13,627トンから1994年には7,000トンとほぼ半減しています。この減少は地政学的リスクが農業に与える影響の典型例として捉えられるでしょう。
2000年代以降は、内戦の影響が収まりつつある地域もあり、一部で農業の再建が進みました。しかしながら、復興には時間を要し、生産量は1990年代以前の水準を超えるまでには至りませんでした。その後、2019年から2023年にかけては明確な増加傾向が見られ、特に2023年には17,199トンと、過去最高を記録しました。この回復の背景には、近年の地域的な安定化だけでなく、国際的な農業援助や技術普及の促進も寄与していると考えられます。
さらに、気候変動や土地利用の変化もソマリアのココナッツ生産に影響を与えています。ココナッツは水の供給が欠かせない作物であるため、水不足や不安定な降水パターンには弱い側面があります。しかしながら、水資源管理技術の導入など、国際的な支援も増えつつあるため、将来的な生産性向上に期待も抱けます。
一方で、持続可能な長期的発展のためには多くの課題があります。第一に、地域衝突や農地の不法占拠が農業生産の安定を脅かしています。これを解決するためには、地方自治体レベルでの農地管理の徹底や、適切な土地法の整備が求められます。第二に、生産の自動化や効率化が遅れており、これには国際パートナーシップの下での技術導入が必要です。具体的には、耐久性のある種苗の提供や、灌漑設備の拡充が効果的と言えるでしょう。
加えて、国際市場へのアクセス拡大を支援するため、インフラの強化が不可欠です。特に道路や港湾の整備は、ココナッツを国内外市場に効率的に輸送するための重要な要素となります。また、ココナッツの加工製品(ココナッツオイルや乾燥ココナッツ)の生産能力向上を支援することで、付加価値を高め、輸出産業としての基盤を作ることも重要です。
結論として、ソマリアのココナッツ生産量の推移は、国内外の情勢が農業にいかに深く影響を与えるかを示しています。データが示す最近の増加傾向は希望の兆しですが、持続可能な成長を実現するためには、地政学的および経済的な課題に対応する政策が必要です。国際社会としては、生産インフラへの支援や技術移転の推進を続けることで、ソマリアの農業産業全般の復活を後押しするべきでしょう。そして、同国が将来的に安定し、国際的なココナッツ生産の一端を担う存在となるよう支援を強化することが求められます。