国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ソマリアにおける豚の飼育数は、1961年の2,800頭から1989年の10,200頭まで一貫して増加しました。しかし、1991年以降の急激な減少とその後も安定しない推移が特徴的です。特に2022年時点では3,785頭に留まり、ピーク時の約3分の1の規模となっています。
ソマリアの豚飼育数推移(1961-2022)
年度 | 飼育数(頭) |
---|---|
2022年 | 3,785 |
2021年 | 3,810 |
2020年 | 3,834 |
2019年 | 3,790 |
2018年 | 3,748 |
2017年 | 3,746 |
2016年 | 3,753 |
2015年 | 3,727 |
2014年 | 3,700 |
2013年 | 3,700 |
2012年 | 3,600 |
2011年 | 3,800 |
2010年 | 4,000 |
2009年 | 4,200 |
2008年 | 4,200 |
2007年 | 4,200 |
2006年 | 4,200 |
2005年 | 4,800 |
2004年 | 4,600 |
2003年 | 4,500 |
2002年 | 4,200 |
2001年 | 4,200 |
2000年 | 3,900 |
1999年 | 3,800 |
1998年 | 4,000 |
1997年 | 4,500 |
1996年 | 4,300 |
1995年 | 4,000 |
1994年 | 3,800 |
1993年 | 3,500 |
1992年 | 3,000 |
1991年 | 7,000 |
1990年 | 10,000 |
1989年 | 10,200 |
1988年 | 10,200 |
1987年 | 10,100 |
1986年 | 10,100 |
1985年 | 10,000 |
1984年 | 9,800 |
1983年 | 9,700 |
1982年 | 9,500 |
1981年 | 9,200 |
1980年 | 9,000 |
1979年 | 8,800 |
1978年 | 8,500 |
1977年 | 8,200 |
1976年 | 8,000 |
1975年 | 7,700 |
1974年 | 7,500 |
1973年 | 7,200 |
1972年 | 7,000 |
1971年 | 6,700 |
1970年 | 6,500 |
1969年 | 6,300 |
1968年 | 6,000 |
1967年 | 5,300 |
1966年 | 5,000 |
1965年 | 4,700 |
1964年 | 4,000 |
1963年 | 3,500 |
1962年 | 3,000 |
1961年 | 2,800 |
FAOが収集した統計によれば、ソマリアの豚飼育数は1960年代から1980年代にかけて順調に増加していました。この増加は、当時の農畜産業の発展を背景に、ソマリアでの豚飼育が経済基盤の一部として発展し始めたことを示しています。しかし、1991年に発生した内戦を境に、豚の飼育数は7,000頭に急落し、翌年には3,000頭にまで激減しました。この内戦による混乱は、農業や畜産業の生産基盤を破壊し、多くの生産者が家畜の飼育を継続できなくなるほどに深刻でした。
その後2000年代に入ってからも飼育数は低水準で推移しており、2022年には3,785頭と、1990年時点の約38%の水準にとどまっています。このような低迷は、ソマリアの特定の地政学的背景が関与しています。まず、ソマリアでは依然として治安の不安定さが続いており、それが農畜産業への投資や資源の安定供給を妨げています。また、ソマリアの主流宗教であるイスラム教の教義では豚肉の消費が禁じられているため、豚肉市場が他国ほど需要を形成しないという文化的要因も影響しています。
一方、飼育数の推移を振り返ると、1991年以降その増減が小さく比較的安定したのは、第二次内戦の終結や国際社会による農業復興支援が一定の効果を見せたことが要因でしょう。近年では、国際的な支援機関によるソマリアの畜産技術の改革促進や輸出産業支援も、この安定化に寄与していると考えられます。
なお、疫病や気候変動も豚飼育の動態に影響を与える要因です。旱魃や洪水などの自然災害が頻発するソマリアでは、特に豚の飼育環境が劣化しており、これは豚に限らず他の家畜の健康や生産性にも悪影響を及ぼしています。
今後、この状況を改善するためにはいくつかの施策が求められます。まず、農業インフラの整備や治安の回復を図り、畜産業全般の生産力を底上げすることが必要です。また、豚飼育の付加価値を高めるために、生産者が豚肉以外の豚由来製品(例えば肥料や医療用製品)にアクセスできるよう支援する方針も有効です。他国で実施されているように、農業支援団体や国際機関による技術研修や設備投資の助成金支給なども検討に値します。
さらに、文化的要素を考慮しつつ、適切な国際市場への輸出機会を模索することで、外貨獲得の一助とすることができます。これにより、ソマリアの豚飼育の持続可能性を高め、経済全体へ好影響をもたらす可能性があります。最終的にこの取り組みが成功すれば、地域経済の安定化や地政学的リスクの軽減にもつながるでしょう。
ソマリアは引き続き内外の課題に直面していますが、各種政策や国際協力によって豚飼育と畜産業が再生することで、経済復興の道筋が具体化されることを期待したいです。