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ソマリアの小麦生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ソマリアの小麦生産量は1985年から2022年にかけて年間1,300トンから1,057トンに推移しており、全体としては安定性を欠いています。一時的な減少が見られる時期もありましたが、2000年代以降は徐々に生産量が回復・安定する傾向にあります。しかし、近年の生産量は依然として非常に低く、生産効率や農業インフラの限界が明らかとなっています。

年度 生産量(トン)
2022年 1,057
2021年 1,053
2020年 1,049
2019年 1,053
2018年 1,050
2017年 1,045
2016年 1,039
2015年 1,031
2014年 1,020
2013年 1,000
2012年 1,000
2011年 1,006
2010年 998
2009年 950
2008年 1,000
2007年 970
2006年 960
2005年 1,200
2004年 1,000
2003年 964
2002年 957
2001年 950
2000年 960
1999年 938
1998年 900
1997年 920
1996年 920
1995年 920
1994年 999
1993年 925
1992年 863
1991年 660
1990年 925
1989年 1,400
1988年 1,370
1987年 1,370
1986年 1,300
1985年 1,300

ソマリアの小麦生産量のデータを振り返ると、1985年から1990年までは1,300トン前後を維持していましたが、1990年以降に大きく減少しています。この時期はソマリア国内で政治的混乱や内戦の勃発があり、それに伴う農業基盤の破壊やインフラ崩壊が明確に影響しています。例えば1991年には生産量が660トンにまで落ち込んでおり、これは農地の荒廃や農業資材の供給不足、治安の悪化が一因となっていると考えられます。

1990年代後半に入ると、地政学的なリスクの軽減とともに生産量が回復傾向を見せましたが、それでも年間900~960トン前後に留まりました。2000年代には、小麦の栽培技術の改善や新たな支援プログラムが一部地域で展開された結果、生産量がやや上昇し、2005年には1,200トンに達しています。しかし、その後も気候変動による干ばつや洪水といった自然災害が頻繁に発生し、生産量は安定しませんでした。

2010年代以降、小麦の生産は若干の改善を見せ、2022年には1,057トンに達しています。しかし、これは世界の主要な小麦生産国と比較すると極めて少ない水準です。例えば近隣のエチオピアでは年間400万トン以上の生産量が報告されており、同じ地域でありながら生産力に大きな格差があります。また、主要輸出国であるアメリカやロシアなどと比べても、ソマリアの生産量は取るに足らないと言えるほど低い状態です。

この低い生産量の背景には、インフラの未整備や農業政策の不足があります。農業機械の普及率が低いため作業効率が悪く、かつ灌漑設備が不十分なことから雨頼みの農業が多い現状です。さらに、小麦の栽培技術や種子資源が近代化されておらず、収量の向上が困難となっています。加えて、ソマリアは気候変動の影響を大きく受ける脆弱な地域であり、頻発する干ばつや洪水が生産に深刻な打撃を与えています。これにより食料安全保障が脅かされ、多くの国民が輸入穀物への依存を余儀なくされています。

将来的には、いくつかの課題に直面すると同時に解決策を検討する必要があります。第一に、灌漑インフラの整備を進め、雨季に依存しない農業を推進することが不可欠です。これは国際援助や金融支援を通じて実現可能です。第二に、耐干ばつ性や高収量を持つ新しい品種の導入が急務です。この点では、エチオピアなどの近隣国との連携や技術共有が期待されます。第三に、農村地域における教育とトレーニングの強化が必要です。これにより、伝統的な農法から近代的で効率的な農業技術への移行を図るべきです。

最終的に、ソマリアの農業の復興と安定は、国内の食料安全保障のみならず地政学的な安定にも寄与するでしょう。農業が発展すれば農村部の雇用が生まれ、地方自治や経済全体の基盤が強化される可能性があります。このためには、ソマリア政府と国際社会が協力し、長期的かつ持続可能な発展戦略を共有することが鍵となります。