国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した1994年度の世界のオリーブ生産量ランキングによると、1位はスペインで2,799,000トン、2位はイタリアで2,640,328トン、3位はギリシャで2,001,782トンと、ヨーロッパ南部での生産が中心であることが分かります。これに続くトルコやシリア・アラブ共和国など、地中海沿岸諸国が上位を占めています。一方で、アメリカやアルゼンチンなど非伝統的生産地域の名前もランクインしており、地中海以外の地域での生産の兆候が見られます。
| 順位 | 国名 | 地域 | 生産量(トン) |
|---|---|---|---|
| 1 |
|
ヨーロッパ | 2,799,000 |
| 2 |
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ヨーロッパ | 2,640,328 |
| 3 |
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ヨーロッパ | 2,001,782 |
| 4 |
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アジア | 1,400,000 |
| 5 |
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アジア | 517,892 |
| 6 |
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アフリカ | 500,000 |
| 7 |
|
アフリカ | 350,000 |
| 8 |
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ヨーロッパ | 232,210 |
| 9 |
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アフリカ | 170,360 |
| 10 |
|
アフリカ | 140,000 |
| 11 |
|
アフリカ | 130,287 |
| 12 |
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アジア | 94,071 |
| 13 |
|
アジア | 83,652 |
| 14 |
|
アジア | 77,889 |
| 15 |
|
南アメリカ | 77,452 |
| 16 |
|
北アメリカ | 76,200 |
| 17 |
|
ヨーロッパ | 30,000 |
| 18 |
|
アジア | 26,500 |
| 19 |
|
南アメリカ | 20,589 |
| 20 |
|
アジア | 17,562 |
| 21 |
|
ヨーロッパ | 16,742 |
| 22 |
|
ヨーロッパ | 15,343 |
| 23 |
|
アジア | 14,000 |
| 24 |
|
アジア | 12,000 |
| 25 |
|
南アメリカ | 10,303 |
| 26 |
|
南アメリカ | 7,000 |
| 27 |
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南アメリカ | 3,965 |
| 28 |
|
南アメリカ | 2,600 |
| 29 |
|
アジア | 2,503 |
| 30 |
|
アジア | 1,100 |
| 31 |
|
オセアニア | 936 |
| 32 |
|
ヨーロッパ | 429 |
| 33 |
|
アジア | 91 |
| 34 |
|
アジア | 70 |
| 35 |
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ヨーロッパ | 8 |
| 36 |
|
南アメリカ | 4 |
| 37 |
|
アジア | 1 |
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1994年のオリーブ生産量ランキングを見ると、スペイン、イタリア、ギリシャが上位3か国として大きなシェアを占めています。この3か国だけで世界のオリーブ生産量の約70%を占めており、地中海性気候がオリーブ栽培に適している点が強調されます。これらの国々は、豊かな日照、適度な降水量、そして伝統的なオリーブ栽培技術の強みを活かした効率的な生産によって、現在もオリーブ生産の中心的な役割を果たしています。一方で、4位以降に登場するトルコやシリアは、オリーブオイルの主要輸出国としての地位を確立する一方、内政不安や地域紛争の影響を受けることが多く、生産・輸出が安定的でない課題もあります。
更に北アフリカ諸国、モロッコ、チュニジア、アルジェリア、リビアなどもランキング上位に入っており、これらの国々はオリーブ栽培を通じて経済成長を目指しています。特に、モロッコやチュニジアは欧州向けの輸出が主な収入源となっていますが、農業インフラや水資源管理の課題が今後の発展を左右する重要な要素となっています。
地中海地域外では、アメリカ、アルゼンチン、オーストラリアなどの国々が注目されます。アメリカやアルゼンチンは消費者からの需要増加を背景に新たな栽培エリアを広げており、特にアルゼンチンは将来的に南米市場での重要な供給国としての潜在力を秘めています。一方、アメリカは品質基準や効率的な生産技術を強みとしていますが、地中海諸国との競争力を高めるには生産規模の拡大が必要です。
しかし、これらの生産量増加には気候変動が大きな課題として立ちはだかっています。例えば、異常気象により干ばつや熱波が頻発することにより、生育環境が不安定になっています。また、水資源不足が深刻化する地域では、オリーブの持続的な栽培が難しい状況です。これに対し、灌漑設備の近代化や乾燥地域向けの耐性品種の開発、さらには地域間協力の推進が急務となっています。
地域紛争や内政不安によるリスクも特筆すべき要因です。例えば、シリアやリビアなどでは政治的な混乱により農業活動が一時停止したり、生産量が激減することが過去にもありました。こうした問題を解決するためには、国際的な支援機関による技術支援や、農村地域の安定が重要です。また、将来的に地政学的リスクを軽減するため、地域的枠組みでの協力強化を目指す必要があります。
さらに、オリーブ栽培の輸出拡大をめぐり地元農家の所得向上が期待される一方、技術革新の導入が遅れる場合、大量生産を要する国際市場で競争力を失う可能性があります。これに対しては、農法の近代化と従業員教育の推進、さらにはオーガニック製品へのシフトが鍵となるでしょう。
結論として、1994年時点には地中海諸国を中心とするオリーブ生産の偏重が見られるものの、新興地域の可能性や生産の効率化、環境変化への適応が進めば、未来のオリーブ市場はさらに多様化すると期待されます。国際機関や国レベルの政策支援を活用しつつ、地域ごとの課題に適応した持続可能な生産体制を構築することが求められます。このアプローチが成功すれば、オリーブ生産という分野は地元経済の発展や国際市場の安定につながるでしょう。