国際連合食糧農業機関(FAO)が公表した1987年度のオリーブ生産量データによると、1位はスペインで3,879,000トン、2位はイタリアで3,457,400トン、3位はギリシャで1,372,315トンの生産量を記録しました。この3か国のみで世界全体の生産量の大部分を占めており、地中海諸国の優位性が際立っています。生産量において大きな差がみられる国々の背景や課題、将来の展望について解説します。
| 順位 | 国名 | 地域 | 生産量(トン) |
|---|---|---|---|
| 1 |
|
ヨーロッパ | 3,879,000 |
| 2 |
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ヨーロッパ | 3,457,400 |
| 3 |
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ヨーロッパ | 1,372,315 |
| 4 |
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アジア | 600,000 |
| 5 |
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アフリカ | 500,000 |
| 6 |
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アフリカ | 453,960 |
| 7 |
|
ヨーロッパ | 290,675 |
| 8 |
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アジア | 220,831 |
| 9 |
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アフリカ | 168,172 |
| 10 |
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南アメリカ | 73,700 |
| 11 |
|
アジア | 68,328 |
| 12 |
|
北アメリカ | 61,235 |
| 13 |
|
アフリカ | 58,002 |
| 14 |
|
ヨーロッパ | 37,700 |
| 15 |
|
アフリカ | 29,000 |
| 16 |
|
アジア | 25,000 |
| 17 |
|
アジア | 20,474 |
| 18 |
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南アメリカ | 16,331 |
| 19 |
|
南アメリカ | 14,379 |
| 20 |
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ヨーロッパ | 13,300 |
| 21 |
|
アジア | 9,000 |
| 22 |
|
南アメリカ | 8,400 |
| 23 |
|
アジア | 8,382 |
| 24 |
|
アジア | 8,000 |
| 25 |
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南アメリカ | 3,400 |
| 26 |
|
南アメリカ | 3,000 |
| 27 |
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アジア | 1,506 |
| 28 |
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アジア | 900 |
| 29 |
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オセアニア | 486 |
| 30 |
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南アメリカ | 24 |
| 31 |
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ヨーロッパ | 21 |
| 32 |
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アジア | 6 |
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1987年度のオリーブ生産量ランキングでは、スペインがトップで約387万9000トンを生産し、世界最大のオリーブ生産国の地位を示しました。この当時からスペインは地中海性気候を活かし、アンダルシア地方を中心とした大規模農場で高品質なオリーブを大量生産していました。続くイタリア(345万7400トン)とギリシャ(137万2315トン)も、良質なオリーブオイル生産地として知られ、特にオリーブの多様性や文化的な利用方法が豊富である点も注目されます。この3か国は地中海地域に位置し、その気候と地形がオリーブ栽培を最適化していることが主要因となっています。
また、上位の国々を見ても、トルコやチュニジア、モロッコといった地中海やその近隣地域が生産の中心である点は統計データから明確に読み取れます。これは、オリーブが温暖で乾燥した地中海性気候に適している特徴を反映しています。例えば、チュニジア(50万トン)は、雨水に乏しいにもかかわらず伝統的な乾燥農法を駆使し、世界市場への輸出を拡大している点が評価されます。一方で、アメリカ合衆国(61,235トン)やフランス(13,300トン)などの非地中海諸国は、地中海地方と異なる農業条件のため生産量が限定的です。
このデータはまた、先進国や発展途上国においてオリーブ農業の依存度が異なることも示しています。例えば、モロッコやシリアは地域経済の中でオリーブが重要な収入源であるのに対し、アメリカやフランスではオリーブは嗜好品市場や料理文化の一部として限定的な影響を持つに過ぎません。
しかし、こうした一極集中型生産の構造は将来的な課題を孕んでいます。地中海地域では、砂漠化や気候変動の影響が懸念されており、これがオリーブ生産量の安定性に影響を与える可能性があります。気温上昇や水資源の不足により、主要産地が一定の圧力を受けることは否定できません。また、生産量の地域偏重も、政治的・経済的緊張を引き起こす可能性があります。たとえば、トルコやシリアといった中東地域では、資源の争奪や地域紛争の影響を受けやすい点が特筆されます。
生産が少ない国々においては、持続可能な農業技術や輸出戦略の導入が必要とされます。たとえば、日本は1987年度のデータには含まれていないものの、国内需要を満たすために輸入に大きく依存しています。こうした状況を改善するには、農業政策の改善や地元市場との連携を強化し、小規模農家が取り組みやすい柔軟な栽培モデルを導入することが必要です。
結論として、本データは地中海地域の生産に極端に依存する構造と、それに伴う地政学的・環境的リスクを浮き彫りにしています。これに対処するために、気候変動に適応した栽培手法や、他の地域におけるオリーブ農業の導入を促進する政策が国際的に求められます。具体的には、国際機関や地域協力の枠組みを強化し、伝統的な生産地と新興地域間で知識や技術を共有するプラットフォームを構築することが重要です。また、地中海沿岸諸国においては、水資源管理と気候変動への適応を軸とした農業改革を進めることが今後の持続可能な発展につながると考えられます。