1989年度のオリーブ生産量において、イタリアが約305万トンで1位となり、次いでスペインが約295万トン、ギリシャが約165万トンの生産量で続いています。このデータは、特に地中海沿岸地域がオリーブ生産の中心地であることを示しています。一方で、アメリカやアルゼンチンなどいわゆる非地中海地域も少量ながら生産を行っています。全体的にヨーロッパ、北アフリカ、中東の国々が上位に位置し、生産量の地域分布に明確な傾向が見られます。
| 順位 | 国名 | 地域 | 生産量(トン) |
|---|---|---|---|
| 1 |
|
ヨーロッパ | 3,055,810 |
| 2 |
|
ヨーロッパ | 2,945,700 |
| 3 |
|
ヨーロッパ | 1,646,725 |
| 4 |
|
アフリカ | 650,000 |
| 5 |
|
アフリカ | 650,000 |
| 6 |
|
アジア | 500,000 |
| 7 |
|
ヨーロッパ | 330,795 |
| 8 |
|
アジア | 119,796 |
| 9 |
|
北アメリカ | 111,583 |
| 10 |
|
アフリカ | 92,453 |
| 11 |
|
南アメリカ | 79,000 |
| 12 |
|
アフリカ | 64,998 |
| 13 |
|
アジア | 45,906 |
| 14 |
|
アフリカ | 32,297 |
| 15 |
|
ヨーロッパ | 31,100 |
| 16 |
|
アジア | 25,683 |
| 17 |
|
南アメリカ | 22,448 |
| 18 |
|
アジア | 19,500 |
| 19 |
|
アジア | 12,637 |
| 20 |
|
アジア | 12,000 |
| 21 |
|
南アメリカ | 11,200 |
| 22 |
|
ヨーロッパ | 11,000 |
| 23 |
|
アジア | 9,000 |
| 24 |
|
南アメリカ | 7,057 |
| 25 |
|
アジア | 3,421 |
| 26 |
|
南アメリカ | 3,400 |
| 27 |
|
南アメリカ | 3,000 |
| 28 |
|
アジア | 800 |
| 29 |
|
オセアニア | 523 |
| 30 |
|
南アメリカ | 29 |
| 31 |
|
ヨーロッパ | 15 |
| 32 |
|
アジア | 7 |
| + すべての国を見る | |||
1989年度のオリーブ生産量データは、オリーブが主に地中海沿岸地域で栽培される作物であることを強く示しています。トップ3の国であるイタリア、スペイン、ギリシャは、場合によっては「オリーブベルト」とも呼ばれる地域の中核を形成しており、これらの国が合計で世界生産の約80%を占めています。この生産量は、長い伝統的な農業技術と、地中海の気候条件がオリーブの栽培に最適であるという地理的要因に支えられています。
一方で北アフリカ、例えばチュニジアとモロッコが同じ650,000トンの生産量を記録しており、これらの国々が地域経済においてオリーブの栽培と輸出を重要な柱とみなしていることが示されています。オリーブオイルはこれらの国々の主要な輸出品であり、特にヨーロッパへの輸出市場は非常に大きなポテンシャルを秘めています。
中東地域では、シリア・アラブ共和国が約12万トンと他国を上回る生産量を誇り、続いてレバノンやヨルダンもオリーブ栽培に寄与しています。この地域でのオリーブ生産は、主に地域の食文化の重要な側面を担っており、オリーブやオリーブオイルの消費が日常生活の一部となっています。しかしながら、この地域は地政学的リスクや水資源不足などの課題を抱えており、それが農業生産量に影響を及ぼす可能性があります。
アメリカなど地中海とは異なる気候を持つ場所における生産量はわずかですが、カリフォルニア州などの条件の良い地域では今後の拡大が期待されます。この発展には、消費者の健康志向の高まりや、オリーブオイルが健康食品の代表格の一つとみなされるようになった背景も関係しています。
また、南アメリカではアルゼンチンやチリが一定の生産量を記録しており、これらの国々が将来的にアジア市場を狙った輸出を拡大する可能性も考えられます。特に、日本や中国などのアジア諸国では、オリーブ製品の需要が徐々に高まっているため、それに応える形でこれらの国々が市場拡大を進める余地があります。
一方で、最下位に位置する国々の中には、オリーブ生産量が数トン程度にとどまる国もみられます。これには、地理的条件や気候の影響が大きいと考えられますが、特に国々が農業政策の一環としてオリーブ栽培に対する技術援助、研究開発、資金補助を行わない状況も影響しています。それにもかかわらず、グローバルな需要の増加に伴い、新興市場でのオリーブ産業の発展が注目されています。
未来に向けた課題としては、まず気候変動の影響が挙げられます。オリーブは非常に気候に依存する作物であり、温暖化による乾燥化や降雨量の変動が生産量に深刻な打撃を与える可能性があります。特に、北アフリカと中東地域の乾燥化は、水資源管理の観点からも大きな課題です。このため、効率的な灌漑法の導入や耐乾燥性品種の育成などが期待されています。このようなプロジェクトを進めるには、国際社会と現地の協力が不可欠です。
また、感染症や害虫の拡大リスクも見逃せません。例えば、オリーブに甚大な被害を及ぼす細菌の一種であるキシレラ・ファストディオサ(Xylella fastidiosa)による蔓延リスクが指摘されています。このため、各国は早期発見と迅速な対応を可能にする検疫体制の整備が必要です。
結論として、今回のデータは、オリーブの栽培が特定の地域に広がりつつも地中海地域に集中している現状を示しています。しかし、地政学的リスク、気候変動、健康志向の消費傾向など複雑な要因が絡む中で、スマート農業技術の活用やコラボレーションの促進が将来的な課題解決の鍵となるでしょう。国際的な農業支援と多国間協力の枠組みを整備し、持続可能で安定したオリーブ生産を目指すことが必要です。