国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したブルネイ ダルサラームのココナッツ生産量データによると、1960年代は平均400~600トンであったのに対し、1970年代後半から大幅な減少を経験しました。その後、1980年代に一時的に増加しましたが、1990年代以降は比較的安定した生産量を維持しています。2023年の生産量は407トンであり、直近数年間で若干の増減が見られるものの、安定した値を示しています。
ブルネイ ダルサラームのココナッツ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 407 |
-0.81% ↓
|
2022年 | 411 |
0.32% ↑
|
2021年 | 409 |
-3.23% ↓
|
2020年 | 423 |
5.86% ↑
|
2019年 | 400 |
-1.44% ↓
|
2018年 | 406 |
1.86% ↑
|
2017年 | 398 |
0.67% ↑
|
2016年 | 395 |
-4.86% ↓
|
2015年 | 416 |
6.52% ↑
|
2014年 | 390 |
2.56% ↑
|
2013年 | 380 |
1.7% ↑
|
2012年 | 374 |
2.48% ↑
|
2011年 | 365 |
1.88% ↑
|
2010年 | 358 |
2.14% ↑
|
2009年 | 351 |
2.44% ↑
|
2008年 | 342 |
-2.16% ↓
|
2007年 | 350 |
8.02% ↑
|
2006年 | 324 |
-9.5% ↓
|
2005年 | 358 |
68.08% ↑
|
2004年 | 213 |
15.14% ↑
|
2003年 | 185 |
2.78% ↑
|
2002年 | 180 |
5.88% ↑
|
2001年 | 170 |
0.59% ↑
|
2000年 | 169 |
3.68% ↑
|
1999年 | 163 | - |
1998年 | 163 | - |
1997年 | 163 | - |
1996年 | 163 |
15.13% ↑
|
1995年 | 142 |
13.26% ↑
|
1994年 | 125 |
4.17% ↑
|
1993年 | 120 |
4.35% ↑
|
1992年 | 115 |
-3.09% ↓
|
1991年 | 119 |
-1.11% ↓
|
1990年 | 120 |
-7.69% ↓
|
1989年 | 130 | - |
1988年 | 130 |
-7.14% ↓
|
1987年 | 140 | - |
1986年 | 140 | - |
1985年 | 140 |
-88.15% ↓
|
1984年 | 1,181 |
57.47% ↑
|
1983年 | 750 |
8.07% ↑
|
1982年 | 694 |
560.95% ↑
|
1981年 | 105 |
0.96% ↑
|
1980年 | 104 |
25.3% ↑
|
1979年 | 83 |
-8.79% ↓
|
1978年 | 91 |
-68.07% ↓
|
1977年 | 285 |
92.57% ↑
|
1976年 | 148 |
-43.73% ↓
|
1975年 | 263 |
-47.4% ↓
|
1974年 | 500 |
-29.58% ↓
|
1973年 | 710 |
29.09% ↑
|
1972年 | 550 |
-13.52% ↓
|
1971年 | 636 |
27.2% ↑
|
1970年 | 500 |
-21.38% ↓
|
1969年 | 636 |
0.47% ↑
|
1968年 | 633 |
2.59% ↑
|
1967年 | 617 |
25.15% ↑
|
1966年 | 493 |
0.61% ↑
|
1965年 | 490 |
8.41% ↑
|
1964年 | 452 |
-4.84% ↓
|
1963年 | 475 |
5.09% ↑
|
1962年 | 452 |
13% ↑
|
1961年 | 400 | - |
ブルネイ ダルサラームのココナッツ生産量は、1960年代から2023年にかけて顕著な変動を経験してきました。このデータはブルネイ国内における農業発展や経済政策の影響を示すだけでなく、気候変動、土地利用の変化、また国際市場の影響を反映しています。
1960年代から1970年代初頭にかけて、ココナッツ生産量は400~636トンの範囲で推移し、この時期はブルネイにおける農業の重要性が高かったと考えられます。しかし、1975年以降、生産量は急激に減少し、1979年には83トンと著しく低下しました。これは、石油産業の発展に伴い農業から他産業へのシフトが進行したこと、また土地利用の変化や技術的な支援の不足が要因として挙げられます。1970年代後半から1980年代にかけての世界的な石油ブームによる経済構造の変化が、農業部門に直接的な影響を与えたことが想定されます。
その後、1984年には1,181トンという大幅な増加が見られ、この増加はおそらく農業振興政策の一環であった可能性があります。しかし1985年以降には再び減少し始め、140トンから170トン程度の低水準で安定しました。2000年代に入ると、生産量は徐々に回復基調に転じ、204トンを記録した2004年以降は増加傾向が続きました。2020年代初頭では生産量は400トン前後に達し、歴史的な平均水準に近い数値となっています。
現在、ブルネイのココナッツ生産量は比較的安定していますが、いくつかの課題が存在します。例えば、気候変動の影響として異常気象や降雨パターンの変化が挙げられます。ブルネイのココナッツ栽培がこれらの気候条件に依存しているため、これらの変化は生産量に直接的な影響を与える可能性があります。また、農業従事者の高齢化、若者の農業離れ、そして栽培技術革新の遅れも重要な課題といえます。
これらの課題に対処するためにはいくつかの具体的な対策が考えられます。第一に、気候変動への対策として、耐乾性や高収量の品種への切り替え、灌漑設備の導入を進めるべきです。第二に、農業分野への若年層の関与を促進するため、農業教育の普及や経済的なインセンティブを提供することが重要です。第三に、他国(たとえばフィリピンやインドネシア)の成功事例を参考にし、効率的な生産技術やマーケティング戦略を学ぶことも有益です。また、地域間協力の枠組みを活用し、ASEAN内での農業技術の共有を進めることもブルネイにおける農業の振興に役立つでしょう。
さらに、ブルネイでは石油産業が経済の主体を占める一方、農業の重要性を再評価する必要があります。食料安全保障の観点から国内農業の基盤を強化することは、経済的に意味があるだけでなく、輸入依存のリスク軽減にも寄与します。また、生産量を増加させる努力と並行して、ココナッツの加工品(例:ココナッツオイル、ココナッツシュガー)を開発し、付加価値の高い商品による輸出拡大を目指す政策も効果的です。
結論として、ブルネイ ダルサラームのココナッツ生産量は過去数十年の間に著しい変化を経験しましたが、現在は安定した水準に達しています。この安定を維持し、未来に向けて持続可能な成長を遂げるには、対策として農業・気候・経済の領域で総合的な取り組みが必要です。その上で地元農業の価値を再評価し、国内消費だけでなく輸出の可能性を視野に入れ、ブルネイの農業産業の未来を切り開くべきです。