国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、ブルネイ ダルサラームのキュウリ類生産量は1990年代から2000年代初頭にかけて着実に増加し、2004年に2,380トンというピークを迎えました。その後は概ね横ばいから緩やかな増加傾向を維持していましたが、2018年以降急激に生産量が減少し、2022年に1,141トンと最も低い水準に到達しました。ただし、2023年には1,375トンとやや回復傾向が見られます。
ブルネイ ダルサラームのキュウリ類生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 1,375 |
20.5% ↑
|
2022年 | 1,141 |
-15.29% ↓
|
2021年 | 1,347 |
-11.03% ↓
|
2020年 | 1,514 |
-12.99% ↓
|
2019年 | 1,740 |
-12.34% ↓
|
2018年 | 1,985 |
-13.73% ↓
|
2017年 | 2,301 |
-9.8% ↓
|
2016年 | 2,551 |
7.5% ↑
|
2015年 | 2,373 |
5.35% ↑
|
2014年 | 2,253 |
2.71% ↑
|
2013年 | 2,193 |
4.43% ↑
|
2012年 | 2,100 |
-0.7% ↓
|
2011年 | 2,115 |
1.13% ↑
|
2010年 | 2,091 |
0.95% ↑
|
2009年 | 2,072 |
3.58% ↑
|
2008年 | 2,000 |
2.04% ↑
|
2007年 | 1,960 |
6.7% ↑
|
2006年 | 1,837 |
-12.52% ↓
|
2005年 | 2,100 |
-11.76% ↓
|
2004年 | 2,380 |
14.98% ↑
|
2003年 | 2,070 |
7.81% ↑
|
2002年 | 1,920 |
7.87% ↑
|
2001年 | 1,780 |
0.56% ↑
|
2000年 | 1,770 |
26.43% ↑
|
1999年 | 1,400 |
11.11% ↑
|
1998年 | 1,260 |
-5.26% ↓
|
1997年 | 1,330 |
-0.75% ↓
|
1996年 | 1,340 |
11.67% ↑
|
1995年 | 1,200 |
25% ↑
|
1994年 | 960 |
6.67% ↑
|
1993年 | 900 |
83.67% ↑
|
1992年 | 490 |
-20.97% ↓
|
1991年 | 620 |
44.19% ↑
|
1990年 | 430 | - |
FAOの最新データに基づくと、ブルネイ ダルサラームのキュウリ類生産量は、1990年の430トンという小規模なスタートから20年以上にわたり増加を続け、2004年時点で2,380トンという高い生産量を記録しました。この初期の生産量増加の背景には、ブルネイ国内の農業技術の改善、インフラ整備、需要の高まりが寄与した可能性があります。特に、人口増加や都市化が進みつつも、自国で消費する新鮮な野菜類への需要が生産拡大を後押ししたと考えられます。
しかし、2018年以降、生産量は著しく減少します。わずか数年で生産量が2,000トン以上から1,100トン台まで低下した原因については、いくつかの要因が考えられます。一つは、近年の異常気象や土壌環境の変化からくる農業生産への影響です。ブルネイは東南アジア特有の熱帯気候の影響を受けやすい地域であり、豪雨や乾季の長期化、さらには頻繁な洪水被害が農地に悪影響を与えた可能性があります。さらにCO2濃度の上昇に伴う気候変動が収穫量の減少に寄与している可能性も指摘されています。
また、新型コロナウイルス感染症のパンデミックも無視できない影響の一因です。2020年以降、ブルネイ国内では食料の輸入制限や人材確保の困難が畑作や農業経営全般に深刻なダメージを与えました。特に、熟練農業従事者の不足、輸送分野での混乱、ならびに感染防止対策への余分なコストが生産力を鈍化させ、生産減少を加速させた可能性があります。
さらに、ブルネイは国土面積が狭く、地理的制約や農業用地の限界を抱えています。石油やガスといったエネルギー資源に収入を依存しており、農業部門の優先順位が低いことも、投資の不足や生産効率の停滞を招いている一因と言えるでしょう。これに対し、日本や中国、インドなどでは技術投資と効率的な農業政策が進み、それぞれの国で安定的な割合の収穫が維持されています。
将来的にブルネイが取り組むべき課題は、気候変動の対策を含む生産技術の改善と農業分野への資本の再投入です。具体的な対策としては、まず灌漑技術や温室栽培の採用といった気候変動対策型技術の導入が挙げられます。さらに、小規模農家への支援を強化し、土壌改良や持続可能な農法への移行を促進する政策も有効です。加えて、地域協力を活用した技術移転や学術交流を進めることで、他国からの効率的な農業技術を導入する機会を増大させるべきです。
結論として、ブルネイ ダルサラームのキュウリ類生産量推移は、過去の安定成長期に対し、最近では気候変動や経済的・社会的要因による大きな停滞が見られます。しかし、問題点を的確に認識し、持続可能な農業への戦略的投資を行えば、再び生産の成長軌道に戻る可能性が期待されます。国だけでなく国際機関の支援や地域間協力の活用も、この小国の農業振興にとって鍵となるでしょう。