国際連合食糧農業機関(FAO)が公開した最新のデータによると、ブルネイ ダルサラームの牛飼養数は過去60年間で大幅に減少しています。1961年における飼養数は3,277頭でしたが、その後徐々に減少し、2022年には367頭となっています。この長期間にわたる減少傾向は、経済構造の変化や食料政策、地政学的要因など複数の影響を受けている可能性があります。
ブルネイ ダルサラームの牛飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 367 |
2021年 | 353 |
2020年 | 583 |
2019年 | 617 |
2018年 | 681 |
2017年 | 651 |
2016年 | 795 |
2015年 | 770 |
2014年 | 750 |
2013年 | 800 |
2012年 | 812 |
2011年 | 899 |
2010年 | 852 |
2009年 | 852 |
2008年 | 948 |
2007年 | 935 |
2006年 | 1,010 |
2005年 | 1,079 |
2004年 | 1,211 |
2003年 | 1,443 |
2002年 | 1,412 |
2001年 | 1,617 |
2000年 | 1,726 |
1999年 | 1,836 |
1998年 | 1,854 |
1997年 | 1,924 |
1996年 | 2,017 |
1995年 | 1,600 |
1994年 | 2,092 |
1993年 | 1,449 |
1992年 | 1,600 |
1991年 | 1,613 |
1990年 | 1,503 |
1989年 | 1,607 |
1988年 | 1,542 |
1987年 | 1,083 |
1986年 | 1,117 |
1985年 | 1,000 |
1984年 | 1,000 |
1983年 | 2,000 |
1982年 | 2,000 |
1981年 | 3,000 |
1980年 | 3,000 |
1979年 | 3,000 |
1978年 | 3,000 |
1977年 | 3,000 |
1976年 | 3,000 |
1975年 | 3,000 |
1974年 | 3,000 |
1973年 | 2,000 |
1972年 | 2,271 |
1971年 | 2,058 |
1970年 | 2,500 |
1969年 | 2,237 |
1968年 | 2,145 |
1967年 | 1,832 |
1966年 | 1,879 |
1965年 | 1,295 |
1964年 | 1,539 |
1963年 | 2,500 |
1962年 | 3,000 |
1961年 | 3,277 |
ブルネイ ダルサラームにおける牛飼養数の推移は、1960年代初頭の3,000頭台から、2022年の367頭へと顕著な減少を示しています。このデータは、同国の畜産業全体が規模を縮小していることを示唆しており、その背景にはさまざまな要因が影響していると考えられます。
まず、1961年から1980年代までを振り返ると、飼養数が3,000頭をピークに上下動を繰り返していたことが分かります。しかし、1980年代以降は減少傾向が顕著です。これは、同国の主要産業が石油・ガス産業に特化したことで、農業や畜産業が次第に縮小したためと考えられます。1984年の独立以降も同様の傾向が続き、主要な国家方針が農業振興よりもエネルギー資源開発へ注力していったことが大きな影響を及ぼしていると推測されます。
さらに、ブルネイ ダルサラームの地理的条件も、畜産業の発展を妨げている要因の一つです。同国の総面積は約5,765平方キロメートルと小さく、農業や放牧に適した土地が限られています。また、都市化の進展に伴い、可用な土地の多くが住宅地やインフラ建設に割り当てられている点も見逃せません。
同時に、国内消費者の食肉消費の変化も注目すべき要因といえます。他国と比較すると、牛肉は高価格帯にあり、他の畜産品や輸入品(例えば、鶏肉や魚など)が利用される傾向が強まっています。2020年以降の新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、輸入品への依存度が増加し、さらなる飼養数の低下を助長していることが考えられます。
このような状況を改善するためには、持続可能な農業および畜産業の再開発を目的とした国家的なイニシアチブが必要です。適切な政策として、国内生産者を支援するための補助金制度や、牛の育種・飼育技術の導入などが挙げられます。また、近隣諸国との協力を強化することで、畜産業振興のノウハウを共有し、地域レベルでの食料安全保障を向上させることも重要です。地域内では、インドネシアやマレーシアが畜産業に力を注いでいるため、これらの国との連携が効果的と考えられます。
地政学的な観点からも、ブルネイ ダルサラームとしては食料安全保障を確立することが重要です。例えば、天然資源の枯渇や、気候変動による農業生産の不確実性が高まる中、国内での生産基盤の構築が喫緊の課題です。さらに、地域情勢の安定を図るため、蒸発量や降水量に対応した新しい農業スタイルへの移行も支援するべきでしょう。
結論として、ブルネイ ダルサラームにおける牛飼養数の減少は、経済構造の変化や消費者の嗜好、地政学的背景などさまざまな要因が絡み合っています。この課題に対応するためには、経済多角化を進めるとともに、持続可能な農業政策の策定と国際的な協力が不可欠です。同国政府と国際機関は共同して、この地域での食料供給問題の解決に向けた取り組みを強化していくべきです。