Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)のデータによると、ブルネイ ダルサラームの羊肉生産量は、1990年の1トンから2023年の36トンまで増加しましたが、この間には大きな変動も見られました。2000年前後の急激な増減と比較して、2010年以降は比較的安定した緩やかな上昇傾向が見られます。このデータは、ブルネイ ダルサラームの農業生産における変遷や、同国の食糧安全保障戦略に必要な課題を理解するうえで重要です。
ブルネイ ダルサラームの羊肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 36 |
13.22% ↑
|
2022年 | 32 |
3.9% ↑
|
2021年 | 31 |
4.09% ↑
|
2020年 | 30 |
4.34% ↑
|
2019年 | 28 |
3.05% ↑
|
2018年 | 28 |
8.82% ↑
|
2017年 | 25 |
0.64% ↑
|
2016年 | 25 |
5.9% ↑
|
2015年 | 24 |
5.84% ↑
|
2014年 | 22 |
23.19% ↑
|
2013年 | 18 |
-2.41% ↓
|
2012年 | 19 |
-28.54% ↓
|
2011年 | 26 |
7.41% ↑
|
2010年 | 24 | - |
2009年 | 24 | - |
2008年 | 24 | - |
2007年 | 24 | - |
2006年 | 24 |
-35.71% ↓
|
2005年 | 38 |
68% ↑
|
2004年 | 23 |
-21.88% ↓
|
2003年 | 29 | - |
2002年 | 29 |
6.67% ↑
|
2001年 | 27 |
87.5% ↑
|
2000年 | 14 |
-74.19% ↓
|
1999年 | 56 |
-38% ↓
|
1998年 | 90 |
194.12% ↑
|
1997年 | 31 |
580% ↑
|
1996年 | 5 |
-83.33% ↓
|
1995年 | 27 |
177.78% ↑
|
1994年 | 10 |
-71.58% ↓
|
1993年 | 34 |
58.33% ↑
|
1992年 | 22 |
140% ↑
|
1991年 | 9 |
733.33% ↑
|
1990年 | 1 | - |
ブルネイ ダルサラームにおける羊肉生産量は、1990年から2023年の間で極めて低い値から徐々に増加する傾向を示しています。特に1990年代の初期には不安定な生産動態が見られ、1990年の1トンから1998年の90トンへと急増したものの、1999年には56トン、さらに2000年には14トンと短期間で大きな減少が発生しました。この急激な変動は、おそらく農業インフラの整備状況、生産技術の導入、あるいは気候条件や貿易政策の影響が関係していると考えられます。
2000年以降、羊肉生産量は一時的な小幅変動を挟みつつも、次第に安定した傾向を見せています。この安定期に入る主な要因として、政府による農業の近代化を目指した支援や、国内での需要増加に対応するための努力が挙げられます。さらに2010年代からは緩やかな上昇傾向に入り、2023年には36トンに達しました。この緩やかな成長は、ブルネイ ダルサラームの小規模な国内市場と自給自足型の農業への依存が背景にあると推測されます。
しかしながら、世界全体と比較するとブルネイの羊肉生産量は依然として極めて少なく、中国やインドのようなアジアの大国、さらにはオーストラリアやニュージーランドといった羊肉輸出大国の規模と比較すると、その差は非常に大きいです。この規模の違いは、国内利用向けの農業に重点を置く政策、地理的条件、限られた耕作可能地などが影響していると考えられます。
ブルネイが今後直面する課題として、まず第一に食糧安全保障の強化が挙げられます。同国は多くの食品を輸入に依存しており、羊肉も例外ではありません。特に感染症の世界的流行や、ウクライナ情勢などの地政学的リスクが供給網に影響を及ぼす状況では、輸入に依存しない自給自足能力を高めることが求められています。さらに、持続可能な農業を推進するためには、気候変動への対応も必要です。羊の飼育は、水資源や土地の質に依存するため、環境への負荷を考慮しながら生産効率を向上させる具体的な施策が必要です。
具体的な提言としては、まず技術革新の促進が挙げられます。例えば、効率的な飼料や新しい家畜管理手法を導入することで、より少ない資源で生産を拡大することが可能です。また、地域協力の枠組みを活用して、近隣諸国との技術共有を進めることも有効です。さらに市場の多様化として、現在の国内利用だけでなく、高品質な羊肉を輸出産業として育てる可能性も検討すべきです。そのためには、国際的な規格に対応した品質管理が求められます。
ブルネイは羊肉生産において目覚ましい成長は見せていないものの、持続的な改善が進んでいます。今後、政策的な支援と地政学的リスクへの耐性を高める取り組みを強化することで、自給自足の強化と新たな市場創出の両面で飛躍が期待されます。このようなアプローチを通じて、同国は持続可能な食糧システムのモデルを築く可能性を秘めています。