Skip to main content

ブルネイ ダルサラームのヤギ飼養頭数推移(1961-2022)

ブルネイ ダルサラームのヤギ飼養頭数は、1961年から継続して統計が取られており、長期的な推移を確認することができます。1961年では1,384頭と報告されていますが、その後減少傾向をたどり、1970年代から1980年代にかけて1,000頭前後でほぼ横ばいでした。1980年代後半から増加の兆しを見せ始め、2009年には6,361頭と大幅な伸びを記録しました。その後も上下を繰り返しながら、2016年には過去60年以上で最大となる8,770頭に達しましたが、直近の2022年では4,160頭まで減少しています。この長期的なデータは、ブルネイにおけるヤギ飼養の経済的意義や農業政策の変化、また近年の世界的課題の影響を反映しているものと考えられます。

年度 飼養頭数(頭)
2022年 4,160
2021年 4,169
2020年 6,110
2019年 5,851
2018年 6,162
2017年 7,589
2016年 8,770
2015年 7,283
2014年 6,769
2013年 6,950
2012年 6,850
2011年 6,101
2010年 6,806
2009年 6,361
2008年 3,653
2007年 3,175
2006年 2,646
2005年 2,578
2004年 2,353
2003年 3,088
2002年 2,799
2001年 2,449
2000年 2,844
1999年 3,614
1998年 3,650
1997年 3,302
1996年 3,137
1995年 3,769
1994年 4,110
1993年 4,749
1992年 3,916
1991年 3,245
1990年 2,661
1989年 3,217
1988年 3,313
1987年 3,071
1986年 2,857
1985年 1,000
1984年 1,000
1983年 1,000
1982年 1,000
1981年 1,000
1980年 1,000
1979年 1,000
1978年 1,000
1977年 1,000
1976年 1,000
1975年 1,000
1974年 1,000
1973年 1,000
1972年 1,000
1971年 914
1970年 800
1969年 1,066
1968年 834
1967年 700
1966年 602
1965年 700
1964年 850
1963年 1,200
1962年 1,400
1961年 1,384

ブルネイ ダルサラームにおけるヤギ飼養頭数推移のデータは、農業の発展状況、国内需要、政策変更、さらには国際的な影響を包括的に示す重要な指標といえます。1961年の1,384頭からスタートし、1960年代後半までは徐々に数を減らし、700頭程度に落ち着きました。この減少は、当時のブルネイが特に石油を主体とする経済構造へのシフトを加速させ、農業が相対的に縮小していたことと関係がある可能性があります。

1970年代から1980年代にかけて、飼養頭数は1,000頭前後で安定し、この期間ブルネイの畜産業が限定的な発展に留まっていたことを物語っています。しかし1986年以降、国内で畜産業の復興や食品自給率向上が意識された影響で、ヤギ飼養頭数が徐々に増加しました。特に1990年代には4,000頭近くまで拡大しており、これは地方農業の振興が進んだ結果と考えられます。

21世紀に入ると、2009年には6,361頭、さらに2016年には8,770頭を記録するなど顕著な成長が見られました。この増加は、ヤギ乳製品や肉の国内市場における需要の拡大、および地域的な輸出を視野に入れた生産体制の形成が背景にあると推測できます。しかし、2017年以降、急激な減少傾向が進み、2020年から2022年では4,000頭台にまで減少しました。特に2021年と2022年の4,160頭という低水準の背景には、新型コロナウイルス感染症の世界的流行がもたらした物流の停滞や市場の混乱が深く関係していると考えられます。

ブルネイのヤギ飼養における課題として、まず国全体の土地資源の限界が挙げられます。同国は比較的小さな面積の国土を有しており、農業用地の確保が長年の課題となっています。さらに、主要産業である石油・天然ガスに依存する経済構造も、畜産業の優先順位を下げる要因となり得ます。これに加えて、農業技術やインフラの充実がまだ十分でないとの指摘も根強くあります。

現在の減少傾向を改善するには、いくつかの具体的な対策が求められます。一つは、地方農業インフラの整備と農業者への助成金の提供により、持続可能な生産方式を奨励することです。また、近隣諸国、たとえばインドネシアやマレーシアとの協力による技術の共有や共同プロジェクトの推進も効果的でしょう。さらに、ヤギ乳製品や肉を高品質な付加価値商品として海外マーケットに展開できるよう、ブランド化戦略を実施することも重要です。

地政学的な観点から見ると、ブルネイの畜産業は地域衝突や気候変動の影響を受けやすい状況にあります。気候変動により農地の質が低下するリスクは無視できず、これによって経験される作物および飼料の不足がヤギの飼養頭数減少の一因となりかねません。また、国際貿易の際に地政学的なリスクに直面する場合もあり、ブルネイ国内での供給の安定確保が課題となります。

結論として、ブルネイ ダルサラームのヤギ飼養は、過去60年を超える期間で波動を繰り返しながら発展してきたものの、現在は持続可能性の観点から改善が必要です。同国は、農業と畜産業の将来を見据えた政策を構築し、気候変動への適応戦略や地域協力の強化を通じて、この課題に取り組むべきだと考えられます。国際連合食糧農業機関の継続的なデータ提供と分析が、今後のブルネイ農業政策の方向性を示すうえで重要な役割を果たすでしょう。