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ブルネイ ダルサラームの豚飼育数推移(1961-2022)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が報告したデータによると、ブルネイ ダルサラームの豚飼育数は、1961年に6,758頭から始まり、1980年代半ばに最高水準の32,500頭に達しました。その後、1990年代からは急激な減少傾向に入り、2000年代以降は1,000頭前後で緩やかな増減を繰り返しながら推移しています。2022年現在、豚飼育数は963頭まで減少しています。この変化は、宗教的背景、政策の変化、および経済や社会的要因によるものと考えられます。

年度 飼育数(頭)
2022年 963
2021年 1,048
2020年 1,130
2019年 1,207
2018年 1,258
2017年 1,300
2016年 1,300
2015年 1,284
2014年 1,300
2013年 1,225
2012年 1,100
2011年 1,150
2010年 1,200
2009年 1,250
2008年 1,300
2007年 1,300
2006年 1,300
2005年 1,000
2004年 1,000
2003年 1,200
2002年 1,100
2001年 1,200
2000年 1,200
1999年 1,100
1998年 1,100
1997年 1,200
1996年 800
1995年 900
1994年 2,000
1993年 3,000
1992年 4,410
1991年 9,430
1990年 10,290
1989年 32,500
1988年 27,830
1987年 23,150
1986年 18,470
1985年 20,000
1984年 22,000
1983年 13,000
1982年 12,000
1981年 12,000
1980年 10,500
1979年 12,000
1978年 13,000
1977年 12,000
1976年 9,000
1975年 11,000
1974年 13,500
1973年 13,000
1972年 12,100
1971年 11,189
1970年 12,000
1969年 9,536
1968年 7,193
1967年 6,205
1966年 7,690
1965年 9,455
1964年 6,469
1963年 8,000
1962年 7,500
1961年 6,758

ブルネイ ダルサラームにおける豚飼育の推移を詳しくみると、1960年代から1970年代末にかけては、6,000頭台から13,000頭台という比較的安定した増加傾向が見られました。この時期は農業全般の発展により、家畜業も成長期にあったと考えられます。特に1970年から1974年の間に12,000頭以上を達成し、さらに1975年以降一時的に落ち込むものの、1984年には22,000頭へ急増し、その後1989年には32,500頭という高水準に達しました。

しかし1990年以降、豚の飼育数は急激に減少しています。1990年代には、10,000頭を超えていた飼育数が1994年にはわずか2,000頭まで減少し、1996年には800頭という過去最低値に迫りました。このような急激な減少の背景には、ブルネイのイスラム教人口の増加と豚肉の消費が宗教的に忌避される文化的背景が影響していると考えられます。イスラム教では豚肉を摂取することは禁止されており、豚の飼育は食肉消費の目的から外れるようになったため、営農業としての意義が徐々に失われたと推測されます。同時に、新たな政策による飼育業への規制強化の影響も作用した可能性があります。

さらに2000年代になると、豚の飼育数は1,000頭前後で推移し、緩やかな回復や停滞を示していました。これは、限られた需要に基づき小規模ながら持続的な生産が行われたことを示しています。近年では、2020年以降さらに減少が顕著であり、2022年には963頭という最低値を記録しました。この傾向はブルネイ政府の政策方針や、イスラム教国家としての意識の高まりと一致しています。また、新型コロナウイルス感染症による経済的混乱が、畜産業全体とその物流に低迷の影響を及ぼした可能性も否定できません。

国際的な比較をすると、例えば日本では豚肉は国民の主要な食肉供給源であり、豚飼育数は全国で900万頭以上となっています。一方で、ブルネイのようなイスラム教国家ではそもそも豚飼育および消費が限られており、近隣諸国のマレーシアやインドネシアでも豚肉の消費は限定的です。移民政策が広がる一部の国(例えばアラブ首長国連邦)では輸入による豚肉供給が観察されていますが、消費全体では少数派の需要にとどまっています。

地政学的な背景や課題も考慮しなければなりません。豚飼育の急激な減少は、ブルネイが他国からの輸入依存を高める要因にもなり得ます。農業や畜産業の衰退が続くと、外貨による輸入依存が国の自給自足構造に負荷を与える可能性があります。特に、気候変動もまた畜産物供給に影響を及ぼす可能性があり、持続可能な農業モデルを検討する必要があります。加えて、豚飼育から他分野の家畜業や魚介資源に転換することで、国内の資源バランスを増強することも選択肢として提案できます。

将来的な方向性としては、地域的な文化や宗教的背景を尊重しつつ、地方農業を支援する政策が必要です。具体的には、小規模農家を対象にした技術支援や金融支援、他の家畜や農業形態への転換のための訓練プログラムの導入が挙げられます。また、輸出入のバランスを考慮した経済戦略を策定することで、単一の畜産業への依存を下げ、より多様性のある農業産業体系を確立することが望ましいです。

結論として、ブルネイ ダルサラームにおける豚飼育数の減少は、社会的、文化的、政策的な背景に根ざした現象といえます。この変化に対応するには、地域の特性を反映した総合的な農業方針と、持続可能な生産方法の模索が重要です。また、長期的には地元市場を補完する産業の多角化を進めることで、経済的安定を図るべきです。