国際連合食糧農業機関が発表した2024年最新データによると、バングラデシュのパパイヤ生産量は、歴史的に見ると複雑な推移を示しています。特に2005年には急激な増加が見られたものの、その後大幅な減少に転じました。近年は回復傾向にあり、2023年には145,316トンに達しました。この生産動向は、国内の農業技術革新や経済変動、気候の影響を示唆すると考えられます。
バングラデシュのパパイヤ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 145,316 |
-1.38% ↓
|
2022年 | 147,350 |
17.17% ↑
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2021年 | 125,758 |
-3.77% ↓
|
2020年 | 130,679 |
-3.78% ↓
|
2019年 | 135,809 |
3.2% ↑
|
2018年 | 131,598 |
-2.26% ↓
|
2017年 | 134,647 |
3.28% ↑
|
2016年 | 130,371 |
-2.25% ↓
|
2015年 | 133,370 |
1.81% ↑
|
2014年 | 131,000 |
4.8% ↑
|
2013年 | 125,000 |
4.48% ↑
|
2012年 | 119,645 |
-4.1% ↓
|
2011年 | 124,764 |
10.64% ↑
|
2010年 | 112,770 |
-12.96% ↓
|
2009年 | 129,559 |
25.05% ↑
|
2008年 | 103,609 |
8.17% ↑
|
2007年 | 95,785 |
-8.99% ↓
|
2006年 | 105,245 |
-56.15% ↓
|
2005年 | 240,000 |
374.17% ↑
|
2004年 | 50,615 |
6.55% ↑
|
2003年 | 47,505 |
-1.03% ↓
|
2002年 | 48,000 |
9.09% ↑
|
2001年 | 44,000 |
7.32% ↑
|
2000年 | 41,000 |
2.5% ↑
|
1999年 | 40,000 |
-2.28% ↓
|
1998年 | 40,935 |
5.18% ↑
|
1997年 | 38,920 |
-0.21% ↓
|
1996年 | 39,000 |
2.63% ↑
|
1995年 | 38,000 |
6% ↑
|
1994年 | 35,850 |
2.36% ↑
|
1993年 | 35,025 |
10.58% ↑
|
1992年 | 31,674 |
6.95% ↑
|
1991年 | 29,615 |
3.95% ↑
|
1990年 | 28,490 |
1.59% ↑
|
1989年 | 28,045 |
-29.89% ↓
|
1988年 | 40,000 |
34.88% ↑
|
1987年 | 29,655 |
3.33% ↑
|
1986年 | 28,700 |
1.76% ↑
|
1985年 | 28,205 |
3.38% ↑
|
1984年 | 27,283 |
-0.85% ↓
|
1983年 | 27,517 |
5.16% ↑
|
1982年 | 26,168 |
5.12% ↑
|
1981年 | 24,893 |
20.15% ↑
|
1980年 | 20,719 |
2.01% ↑
|
1979年 | 20,311 |
-0.79% ↓
|
1978年 | 20,472 |
1.32% ↑
|
1977年 | 20,205 |
4.93% ↑
|
1976年 | 19,255 |
0.99% ↑
|
1975年 | 19,066 |
-1.16% ↓
|
1974年 | 19,290 |
1.15% ↑
|
1973年 | 19,071 |
-1.76% ↓
|
1972年 | 19,412 |
-2.72% ↓
|
1971年 | 19,955 |
-10.34% ↓
|
1970年 | 22,256 |
-5.89% ↓
|
1969年 | 23,648 |
3.01% ↑
|
1968年 | 22,958 |
-16.25% ↓
|
1967年 | 27,413 |
42.11% ↑
|
1966年 | 19,290 |
1.53% ↑
|
1965年 | 19,000 |
5.56% ↑
|
1964年 | 18,000 |
5.88% ↑
|
1963年 | 17,000 |
6.25% ↑
|
1962年 | 16,000 |
6.67% ↑
|
1961年 | 15,000 | - |
バングラデシュのパパイヤ生産量の歴史的な推移を見ると、初期の増加期から比較的安定した時期、さらには大きな変動を伴う現代に至るまで、いくつかの特徴的な局面が見受けられます。1961年の15,000トンから徐々に増加し、1980年代には年間20,000トンから30,000トン程度の安定した生産量を維持しました。この安定期には、主に国内市場を中心に需要が賄われていたと考えられます。
2005年には生産量が240,000トンに急増しましたが、この異常な数値は特殊な気候条件や農業政策、技術革新の影響があった可能性があります。しかし、その後の急激な減少により、2006年には105,245トン、2007年には95,785トンと、生産量が一時的に半減しています。このような急激な変動は、気候変動の影響や農業インフラの脆弱性、病害虫の発生など、複数の要因が複合的に絡み合っている可能性があります。また、この時期の世界的な経済状況の変動が、輸出入のバランスや国内農業生産に影響を与えた可能性も否定できません。
2020年代に入ると、バングラデシュのパパイヤ生産は再び回復基調を迎えています。特に2022年と2023年にはそれぞれ147,350トン、145,316トンを記録しており、これらの増加は農業技術の向上や生産効率化が一定の効果を果たしていると考えられます。ただし、この時期には新型コロナウイルス感染症の世界的流行も発生しており、ロックダウンや物流制限が一部の農業生産活動に影響を与えた可能性もあります。また、気候変動による影響も大きく、極端な干ばつや洪水が農産物生産全般にマイナスの影響を及ぼしている点も見逃せません。
地域課題として、バングラデシュでは依然として農業インフラが未成熟であること、気候変動対策が十分でないことが挙げられます。また、パパイヤ市場の需要拡大に向けた輸出基盤の整備は依然として課題となっています。他国と比較してみると、例えばインドでは高度な農業技術や大規模な生産体制の採用により、パパイヤ生産がより安定的に管理されています。このような隣国の成功事例は、バングラデシュへの示唆を与えるものであり、国内農業の近代化を加速させるためのモデルケースとなるでしょう。
未来に向けて、バングラデシュは農業技術のさらなる革新に取り組むべきです。特に気候レジリエントな新品種の開発や、効率的な灌漑システムの整備が重要です。また、スマート農業の導入により生産効率を向上させると同時に、地方農村部における教育や技術訓練の提供を進めることが求められています。さらに、グローバル市場への進出を見据えた輸送網や冷蔵施設の整備も、生産量と品質の安定に寄与するでしょう。
地政学的背景としては、南アジア地域での経済競争や、世界的な食料需給のバランスも考慮する必要があります。例えば、地域間の紛争や水資源の争奪が今後の農業生産に与える影響も懸念されるため、国や国際機関による対話と協力が急務です。また、自然災害の頻発に備えるための国家的な災害対策プログラムも強化する必要があります。
結論として、バングラデシュが持続可能な農業を発展させ、世界市場での競争力を高めるためには、技術革新、インフラ整備、政策支援の三本柱を中心に進めることが鍵となります。国際機関や隣国と連携した政策も、今後の安定した成長において重要な要素を担うでしょう。