Skip to main content

バングラデシュのサトウキビ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、バングラデシュのサトウキビ生産量は1960年代中頃の増加期を経て、1980年代以降は一定の変動を伴いながら、減少傾向に転じています。2023年の生産量は2,982,546トンで、ピーク時の1967年の8,200,000トンに比べて約64%減少しており、特に2008年から2023年にかけて急激な縮小を記録しています。この減少は農業政策、気候変動、社会経済的要因が複合的に影響を与えている結果と考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 2,982,546
-3.4% ↓
2022年 3,087,428
-7.36% ↓
2021年 3,332,546
-9.51% ↓
2020年 3,682,951
17.22% ↑
2019年 3,141,923
-13.65% ↓
2018年 3,638,731
-5.8% ↓
2017年 3,862,775
-8.2% ↓
2016年 4,207,592
-5.11% ↓
2015年 4,434,070
-1.64% ↓
2014年 4,508,000
1.67% ↑
2013年 4,434,000
-3.67% ↓
2012年 4,603,003
-1.46% ↓
2011年 4,671,348
4.02% ↑
2010年 4,490,812
-14.18% ↓
2009年 5,232,649
5% ↑
2008年 4,983,656
-13.63% ↓
2007年 5,769,945
4.7% ↑
2006年 5,510,930
-14.21% ↓
2005年 6,423,380
-0.93% ↓
2004年 6,483,640
-5.19% ↓
2003年 6,838,395
5.17% ↑
2002年 6,502,000
-3.56% ↓
2001年 6,742,000
-2.43% ↓
2000年 6,910,000
-0.59% ↓
1999年 6,950,925
-5.8% ↓
1998年 7,378,710
-1.89% ↓
1997年 7,520,540
4.96% ↑
1996年 7,165,090
-3.77% ↓
1995年 7,445,650
4.71% ↑
1994年 7,110,740
-5.27% ↓
1993年 7,506,525
0.82% ↑
1992年 7,445,615
-3.08% ↓
1991年 7,681,940
3.48% ↑
1990年 7,423,345
10.68% ↑
1989年 6,707,205
-6.94% ↓
1988年 7,207,345
4.52% ↑
1987年 6,895,910
3.85% ↑
1986年 6,640,480
-3.45% ↓
1985年 6,878,040
-4.06% ↓
1984年 7,169,220
-2.57% ↓
1983年 7,358,380
3.12% ↑
1982年 7,135,963
8.14% ↑
1981年 6,598,838
-1.16% ↓
1980年 6,676,010
-3.77% ↓
1979年 6,937,494
2.37% ↑
1978年 6,777,069
4.2% ↑
1977年 6,503,802
8.75% ↑
1976年 5,980,663
-11.28% ↓
1975年 6,741,283
4.62% ↑
1974年 6,443,484
19.24% ↑
1973年 5,403,684
-6.46% ↓
1972年 5,776,860
-25.17% ↓
1971年 7,719,900
2.67% ↑
1970年 7,518,800
1.41% ↑
1969年 7,414,100
-3.85% ↓
1968年 7,710,800
-5.97% ↓
1967年 8,200,000
6.89% ↑
1966年 7,671,200
21.17% ↑
1965年 6,330,696
16.18% ↑
1964年 5,448,808
12.93% ↑
1963年 4,824,984
7.49% ↑
1962年 4,488,688
11.71% ↑
1961年 4,018,280 -

バングラデシュのサトウキビ生産量は、1960年代に急速な成長を成し遂げ、1967年には8,200,000トンというピークに達しました。この時期は、農業技術の導入、農地の拡大、従事者の増加など、国内の農業セクターへの投資と労働集約的な手法が成果を上げた時代を象徴しています。しかし、1970年代に入ると、生産量は減少に転じ、その後の数十年間にわたって長期的な低迷が続いています。2023年には2,982,546トンと、ピーク時の量のおよそ36%にまで縮小しました。

この生産量の減少にはいくつかの要因が挙げられます。第一の要因として、気候変動が重要な背景にあります。バングラデシュは既に洪水や干ばつといった気候災害に脆弱な地域であり、これらの環境的リスクが農業生産に多大な影響を及ぼしています。特にサトウキビは水分量の調整が難しく、降水量の変動や水害に大きく反応します。2020年代に入るまでに、この地域での雨季の集中豪雨の強度や頻度がこれまで以上に増加しており、これが作物の収穫に悪影響を与えていると考えられます。

第二に、人々のライフスタイルや経済的背景も重要な変動要因です。バングラデシュの一人当たりGDP(国内総生産)は増加傾向にあるものの、都市化や労働力の他産業への移動に伴い、農業セクターが相対的に縮小しました。この傾向は、サトウキビのような労働集約型で長い収穫期間を必要とする作物にとって特に不利です。さらに、農地の統合が効率的に行われていないため、分散農場での生産性の低下も持続的な挑戦課題の一つといえます。

加えて、国家の農業政策や国際市場の変化も大きな影響を及ぼしています。サトウキビ生産に対する政策的支援が競合する農産物の影に隠れた結果、生産者の利益が十分確保されておらず、それが生産意欲の低下につながっています。また、サトウキビから砂糖へと加工する国内の産業基盤が脆弱で、市場での競争力が低下したため、多くの農家が小麦や米など他の作物に転作しています。

これらの課題を考慮した上で、将来的にはいくつかの対策が可能です。まず、気候変動への適応策として、耐水性や乾燥耐性に優れたサトウキビ品種の開発や導入が必要です。これには、国際的な農業開発機関や近隣諸国との技術協力が有効な手段となるでしょう。加えて、降雨量や土壌のデータを活用した先進的な農業技術の導入も、効率的な生産を支える鍵となります。

さらに、政府が農業部門に対する補助金政策を強化し、特に小規模農家への支援を積極的に行うことで、生産意欲を刺激することが期待されます。同時に、インフラの整備や、サトウキビから製糖への加工技術の発展を促進する投資を行い、国内市場での砂糖製品の競争力を向上させる努力も不可欠です。

また、地域間の農業協力や国際市場の条件を活用し、サトウキビに適した農地を最適化する取り組みも必要です。例えば、南アジア地域協力連合(SAARC)内での知識共有や農業関連の協定を通じ、他国の成功事例や最適な農業モデルを導入することが考えられます。こうした取り組みにより、持続可能な生産体制を整えることができると見込まれます。

最後に、サトウキビ生産量の減少が示唆するもう一つの深刻な状況は、農業セクター全体の低迷につながる可能性です。これを防ぐためにも、農業教育の充実や若年層への支援、地域共同体を基盤とした農地管理プログラムの開発が不可欠となります。このような取り組みを進めることで、バングラデシュは再びサトウキビ生産国としての地位を強化することができるでしょう。